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もう止められない日本の人口減少。この先、企業・日本が生き残る術とは~田中愼一×星野佳路×森まさこ×高岡美緒

投稿日:2021/07/09

本記事は、G1新世代リーダー・サミット2018「G1-U40へのメッセージ」の内容を書き起こしたものです(全2回 後編)前編はこちら

高岡美緒氏(以下、敬称略):会場の質問に入る前に、私から最後の質問をさせていただければと思います。今から今後、皆様にどういう未来が見えてらっしゃるのか?それは会社の未来なのか、日本の未来なのか、ご自分の未来でも何でも結構です。教えていただければと思います。田中さんからお願いしてもよろしいですか。

田中愼一氏(以下、敬称略):未来というのを見るときには、自分の過去から今日に至るまでのものをどう認識するか、どう捉えるかというのが、次の未来に行く時にはすごく重要です。これから間違いなく、よりしたたかさが問われてくると思うのです。もっと言うなら、したたかな立ち位置を作っていくということが重要です。したたかな立ち位置を作るということは、やはり自分のストーリーをどれだけしっかり持てるかが鍵を握る。ストーリーというのは、実は相手に、周りに聞かせるものではなくて、自分に絶えず語り聞かせる、自分が絶えず元気でいられる。ネガの時は自分が絶えず覚悟できる、往生際の哲学を持つ、そういうところにつながっていくんです。その「ストーリーを持つ」というのはどこから出てくるかというと、当然今から始まり、未来に対して思うのですが、ただ、未来を思っているだけでは駄目です。未来を思うと同事に、自分の過去というものをしっかりとストーリーとして意味付けていくことが重要です。それが自分の今の思いというものをより明確にし、しかも行動として移れる元気をいただける、そういう意味で、自分の過去、歴史をどう意味付けるかがすごく重要だと思います。

歴史の事実、自分の過去の事実は変わらないけれども、その事実の意味付けというのは自由自在に変えられるわけです。だから、自分の過去をどう意味付けるかで、これから未来に向かって行くときに、自分がより強いストーリーを持てるかどうかが決まる。それを持つことによって未来を開拓していくという構図は、間違いなくあると思うんです。自分の今まで生きてきた道というものがどういうものなのか。後悔したもの、やり損ねたものはありますけれども、逆にそうだと思った瞬間に、今の自分が呪縛されるわけですよ。僕の場合はほとんど無駄だったものはない。というか、無駄ではないというふうに解釈しています。自分の今日まで至ってきた道筋をいま一度しっかりと考えることが、より自分が今思っている未来に対して、より具体的なイメージとして湧いてくるんじゃないかと思います。

高岡:ありがとうございます。スティーブ・ジョブズさんも、似たようなことをおっしゃっていましたね。「Connecting the dots」のような。では次に、星野さんお願いできれば。

星野リゾートは「会社をつぶさない」ため、「サステナビリティ」のために、海外展開を行なっている

星野佳路氏(以下、敬称略):私はファミリービジネスでずっとやってきていて、当初から経営の目的は、成長させることよりもつぶれないことでした。いかに会社がつぶれずに、将来にしっかりとサステナビリティを確保するかというのが、私の最大のテーマなんです。つまり、どういうチャンスを掴もうか、という視点よりもどういうピンチに耐えうる会社になろうか、という視点なのです。

そうすると、2025年問題というのは結構大きいと思います。団塊の世代が後期高齢者に入り、旅行市場は必ず縮小すると私は思っています。ですから、インバウンドも一生懸命やっていますし、それから若い人たちにもっと旅行をしてもらおうという活動もしています。ただ、私が星野リゾートのことだけを考えると、やはりグローバルにならざるを得ないと思っていて、グローバル化をしっかりとやろうと向かっていっています。

堀(義人)さんなどは日本に対して非常に楽観的だし、日本を強くするんだということに本当にエネルギーを使っていらっしゃって、それはそれで素晴らしいんですが、私個人的にはそこまで楽観的になれない部分があります。自分の会社を守る、つぶれないようにしようと。ちょうど今104年経ちましたが、100年後につぶれない会社でいるにはどうしたらいいだろうかと考えると、いい時期にグローバルに展開できる力を持ちたいと思っています。

先ほど、「周りが決める自分の立ち位置」とありましたが、ホテル業界も全く同じで、いまさら日本の運営会社が海外へ出て行くというのは、実は後発なのです。後発で力がなくて、私たちは当面10年ぐらいを考えると国内だけでいたほうがいいのですが、海外へ出て行くシナリオとしては、私は日本旅館しかないと思っています。日本の温泉旅館、日本旅館です。なので、日本旅館をそのまま海外に持って行くということをまずやりたいということです。なんでこんな大変なことをやるかというと、世界に展開するんだとか、もっと成長するんだというマインドよりも、日本の人口が減少する2025年以降の旅行市場の減少の時にも耐えうる会社になるためのチャンスをつかみたい。そのためには海外に出ていくしかないですし、海外に出ていくには、いまさら後発の運営会社としては、日本という文化を背負って海外で通用するホテルをつくる以外にない。非常にナローパスだとは思っているのですが、そこをなんとかやり切りたいと思っています。ですから、日本の将来に対してどのくらい楽観的になれるか、または課題があったとしても自分の企業にとって生き残る道を探せるかというのは、未来の発想ではすごく大事なんじゃないかと思っています。

高岡:ありがとうございます。つぶさないというか、責任感で海外展開されている、ということでしょうか。

星野:ここまでもそうなんです。つぶさないためにはどうしたらいいかということをやり続けた結果が、今の形になっていると思っています。やはりスケールが必要だという時代もあったので、どうしても展開が必要だったということです。成長のための展開よりも、競争力、サステナビリティを確保するための展開という視点です。今後も日本は大きな変化があります。日本をどうするかというのは、政治がすごく大事ですが、企業家としては自分の企業が、どんなふうに日本がなっても企業として生き残れるかということが大事だと思っています。

高岡:ありがとうございます。外部環境のせいにせず、どのように持続性を確保するか、すごく共感します。では森さん。

残念ながら、日本の人口減少はもう止まらない それを受け入れて、どうやって生きていくべきなのか。


森まさこ氏(以下、敬称略):
日本の未来は人口減少です。私は全ての国の課題が、人口減少と、防衛、経済、社会保障へ直結していると思っています。この少子化という問題にどうしてこんなに正面から向き合ってこなかったんだろうということで、怒っていますが。国連の女性会議の代表になったのが、19年前。その時からずっと言っているのに、全く日本の政府がやってこなかった。やってきた国もあるんです。結果を出している国もあるんです。ところが日本の場合は、私が17代少子化大臣でしたが、過去16人の少子化大臣で使った予算は「ゼロ円」、予算を使っていないのです。大臣手当だけ出して、看板だけの口だけ番長で、国民に対する詐欺ですね。その結果、人口減少はもう止まらないところに来てしまった。残念ながら、もう止まらないです。2年後には私と同じ50代の女性が半分です。女性のうち、半分が女性(50代以上)。あと数年したら、4人のうち1人が高齢者の女性の独り暮らしというふうになってしまう。

では子どもを産める女性はどこに行ってしまうのか。25歳から39歳までの適齢期の女性は、40年後には半数になります。今は1.4の出生率ですけれども、産めない方もいるから、高齢の方もいるから。2人産んでいる女性が、40年後は4人産まないと人口が維持できないんです。4人産めるわけがないじゃないですか。もう絶対に下がっていくんです。下がっていくことを、もう認めなさいと。出生率が上がったとか下がったとかマスコミが言っているけれども、出生率というのはマジックもあるので、出生率を考えるよりも、もう下がっていく人口減少のこの国で、どうやって生きていくかです。海外展開、それから外国人を入れる、そういうことを前提に考えていかないと、ということです。50年後には1億2,000万人が8,000万人になりますから、やはりそれに対応した国の形、市町村の数からして、行政の在り方、国会議員の数も、全部それを見直していかないと、いきなりの破綻が来るというふうに思っています。

高岡:ちょっと移民の話をしてもよろしいですか。私はアメリカ育ちなので、移民大国アメリカで、それこそ多分半数以上がどこかの国から移住してきたというような小学校のクラスで育ったんですけれども。日本での人口減少を止めるとか、日本の成長とかを考えると、移民はものすごく有効な一つの手段じゃないですか。でも私がそういう話を議員さんにすると、「そこは行かないでくれ」というふうに、よく言われるんです。それはなぜなのでしょうか。

森:移民を大量に、今すぐ受け入れるということはノーだと思います。それは日本の国家制度としてまだ出来上がっていないので。私は弁護士ですけれども、外国人が来ただけで、移民ではなくてもこちらに入国してきて働いているだけで、さまざまな問題があります。労働問題もあれば結婚問題もあれば、犯罪も。犯罪率もやはり高いんです。やはり自分の国と違うところに来て法律も違いますから。私も当番弁護士でいつも行きますけれども、外国人ばかりです。当番弁護士も、今の弁護士はやらないんですね。お金を払えば免除できるので。ここも問題だなと思いますけれども。そういうことで、少しずつということで、今お試しでやっておりますので、それに合わせてやはり犯罪が起きないように。

それから結婚して子どもが生まれて、一番子どもが被害を受けますので、そういったトラブルをどうしていくか。国の形というものの中にそれも一つ入るんですけれども、それを考えながら。一遍に大量になると、逆にそれは混乱を招いてしまう。その議員さんは、そういう意味で言っているのではないでしょうか。誰かは分からないけれども、かばっておきます。

高岡:ありがとうございます。今回は多めに質問タイムを取りたいなと思います。

国の迫力を作るには、「一人一人の質を高める=エリートを作ること」が必要

質問者A:非常にためになって、ありがとうございました。国の迫力というものを作っていきたいなと思ってまして。いろいろお話をされた中で、森さんの人口減少が間違いない中で、これからこの国の迫力を作るために何ができるのかという話を、ぜひ僕らにメッセージをいただけると嬉しいです。

高岡:では森先生、日本の迫力とのことでお願いします。

森:国の迫力ですね。私は個人、一人一人が質を上げることだと思っています。誤解を恐れず言えば、エリートをつくるということです。エリートといっても、いけ好かないエリートではなく、弱者を守る、力のある本物のエリートです。私は自分が力をつけたいとずっと思ってきました。弱いままでやられっ放しで、不条理なことに屈していたので、それを跳ね返すだけの力が欲しい。つまり法律の知識。それから政治家になって、行政でも官僚の知識、そういうものを身につけたい。それによって、当時の私、小学6年生の時と同じ年の子どもが泣いていたら、それを今度は私が助けてあげる人になりたいと思っていたので。そういう人を育てていくべきじゃないかなと思ったのです。

それが高じて、今は0歳児の研究をしています。ハーバード大学やスタンフォード大学で今、0歳児研究が花盛りです。ハーバード大学の教育大学院に行って講義を受けてきましたが、ゼロプロジェクトといって教授がやっていますけれども。0歳児の脳を全部撮影して、その後ずっと追いかけていく、恐ろしい研究をしています。生涯所得とか、生活保護がどうなっているかとか、犯罪率がどうなっているとかを調べるんです。要するに、0歳児の時からものすごく愛するということで、人間の脳の中の神経回路がつながっていくんです。愛された瞬間につながっていくんです。それが3歳までの間につながっていって、3歳を超えると神経回路のつながりは残念ながらなくなってしまうんですが、その後はまたその後のやり方があるんですけれども、やはり0歳児の時に日本全国で、日本に生まれた赤ちゃんは愛していこうよということをやって、一人一人の質を上げていく。

今私は、UAEの女性大臣と友達に「UAEはもうすぐ石油が枯渇するので、何か日本のいいものを持って来てよ」なんて言われているので、ベビーシッターを持って行きます。日本のベビーシッターというのはものすごく海外にとっては売りなんですよ。いま世界中のベビーシッターは、私の子どももお世話になったんですけれども、フィリピーナとかベトナムの方なんかが、すごくお世話が上手です。けれども、そこのベビーシッターは、言ってみれば子どもの召使いになっている。子どもが例えばゴミをポイと捨てたら、フィリピンのベビーシッターは、拾ってゴミ箱に捨ててくれるんです。日本のベビーシッターはそうではなく、子どもがポイとゴミを捨てたら、「駄目よ。ゴミ、拾ってきなさい」という。ママがしつけをするのと同じことができる、これが本当のベビーシッターというか、エリート教育ができるんじゃないかと、ドバイの大臣も言っています。こういった日本のいいところをどんどん世界に持っていけるというふうに思っています。

質問者B:星野さんに質問なんですが、私も事業承継している立場でして、「余白のある経営」だと確かに思うんですけれども、今後伸ばしていくといったときに、規模はすごく大事だと私は今思っています。そのときに10%成長ぐらいだと、どうやっても追いつかないと。売り上げを倍々にしていくぐらいでないと、最後世界で勝つというのはなかなか難しいと思う中で、事業承継すると既存の社員がいるので、一気に変化するとかなり困ることがいろいろと起きると思うんです。モチベーションも違うし。その時にどうギアドライブを変えて、どう組織を変えてやっていくと、違う景色に一気に変わるのかなというのを、ぜひ質問したいです。よろしくお願いします。

高岡:ありがとうございます。では星野さんお願いします。

ファミリービジネス大国の日本にこそ、ファミリービジネスの学びを提供する場が必要

星野:ご質問の情報の中だけだと分からない部分があるのですが。私は、経営はバランスだと思っています。バランスというのは、目標だけでもいけないし、お客さまにとっての企業の価値というのがすごく重要です。数値目標だけ期間で設定して、何でもいいからそれを達成するというのは、本質的な成長にはつながらないと思います。先ほど質問者の方は10%で成長しても間に合わないと言いましたけれども、何に対して間に合わないのか。どこかに追いつこうということを考える必要があるのだろうかと、時々思います。極端に何かを重視するとか、こうすれば必ずこうなるみたいなものはなくて、意外に全体のバランスが大事なんだと思います。バランスを取るために、意外に大胆な行動も必要です。バランスが欠けている場合には、そのバランスを戻すためには何かを重視して一気にやらないといけない時もある。ですから、かなりケースバイケースで違っているのではないかと、私は思っています。

ただやはり重要なのは、「なぜ自分は経営者になりたいのか」という部分は、私はすごく大事だと思っています。金持ちになりたいからなりたいのか、それとも違った理由があって経営者になりたいのか。それを社員はみんな見ています。経営者ほど見られている存在は、ないです。「今日あの人、高いスーツ買ったな」とか、「いい車に乗っているな」とか。それから、「ボールペンが高級だな」とか、「時計がすごいな」とか、社員は経営者のそういう細かいところを全部見ているのです。「社員から見て自分がどう見えるか」ということも、実は組織全体の自分の信頼感やモチベーションにもつながっているので、私はいつも大事にしています。それは先ほど少しお話ししましたが、自分は何のために経営しているのかということとすごく密接に関係しているので、経営者というのは、そういう基本軸のようなものが、最終的には企業の業績に結びつくんじゃないかと思っています。

質問者C:貴重なお話をありがとうございました。星野さんと森さんにお聞きしたいんですけれども、ファミリービジネスと上場企業のエコノミーというところで、大体1対1だというのがある中で、ファミリービジネスのエコノミーをよりグロースさせるとか、効率化する、改善するということは、おっしゃるとおり、ある種1対1のケースで見れば簡単に思えます。1対1のケースではなく、数百万社という規模で日本にファミリービジネスというものがある中で、それをどうしたら一律で合理化して、日本全体の経済をよりグロースさせるとかスケールアップするとか、そういうことができるのかというところがすごく疑問です。僕自身も親が両方、経営者です。僕自身は継ぐという選択をせずに、自分で価値を創造する、起業するという方向に行きましたが、継ぐという選択を考えると、合理性を企業にインストールしていくだけでもすごく大変だったりするのかなと思っています。それをどうやったら横一律で大きく展開できるのか、アイデアやお考えがあれば、ぜひお二人にお聞きしたいと思っています。

質問者D:私も星野さんにご質問させていただければと思います。冒頭で星野さんが、4代目としての少しの後ろめたさと誇りがあるというお話をされていまして、私自身ファミリービジネスの3代目として非常に共感する部分がありました。一方でお伺いできればと思う点は、5代目後継者の育成や選定というのは、星野さんはどのようにお考えなのかというところです。特に、もしご自身を選ばれた場合に、社員からしますと、トップになるというキャリアパスが一つ失われる部分もあります。分かりやすさと社員のデモチベーション、そのあたりのバランスを含め、後継者の育成、選定ということのお考えを、ぜひお聞かせ願えればと思います。

星野:ファミリー一律というのはなかなか全体で難しいのですが、70年代80年代、私たちがアメリカの大学院、ビジネススクールに行き始めた頃とか、ビジネススクールというのは、流行ってきた時期というのがあると思います。ところがファミリービジネスを教えている学校というのは非常に少ないのです。もう少し普通のビジネススクールとは違った要素が、ファミリーには非常に必要です。そういったところを教える所があってもいいと思っています。最大の問題点というのは、親から子への継承ですが、継承のメソッドも世界ではどんどん研究されていっています。ですから、そういうところも教えられるようなメソッドを作っていけばいいと思います。

先ほどベンチャーを自分で立ち上げたとおっしゃっていましたが、自分で立ち上げる時には合理性が一気に入るじゃないですか。けれども、新しいベンチャーの大半が3年以内につぶれていくわけです。ところがファミリービジネスというのは非常に合理性もなく、なぜか非常に成長もなく、つぶれずにずっと続いている。最初の3年間の倒産リスクというのは、おそらくファミリービジネスはないと思うのです。ですから「ベンチャーだと思ってファミリーを継いでもらいたい」というのが、私の一つの発想です。

今アメリカと日本の教授で、一つ面白い研究があります。娘に継がせたケース、息子に継がせたケース、そして娘婿に継がせたケース、3つのグループに企業を分けて、10年間どのケースの成長率が一番高いかということを調査した研究です。息子だという人、手を上げてください。娘だったという人。娘婿だったという人。実は、娘婿なのです。

ここからは今、この研究の世界では、なぜ娘婿に継がせた時に成長が高かったのか、その要素から、娘が継ぐケース、息子が継ぐケースでも学べることがあるじゃないか、こういう研究をするところを増やすと。日本はファミリービジネス大国です。こういう研究こそ日本の地方の大学でぜひやってほしい。今、一生懸命、観光学部やビジネススクールをつくっていますが、日本こそ、ファミリービジネスの学部をつくったらどうかということで、森さんその点をコメントいただきたいなと。

森:ぜひG1で、イニシアチブを作っていただいて、星野さんを中心に、ファミリービジネス大国の発展をやっていただければと思います。私の弁護士時代は、父ちゃん母ちゃんの企業顧問が多かったです。もちろんファミリービジネスの中で大きい会社もありますが、零細企業が多いと思います。そういうところはおっしゃるとおり、ずっと生き残っているんです。私たちの会計学の世界で「のれん」というのがあって、やはりその「のれん」というのが地域の結びつきであったり、合理性の中では換算しにくいものがあるんですが、そこがやはりしっかりしているということで生き残っていくということなんだと思います。

今、自民党では後継者を育成するために、承継税制というのをやっています。5回ぐらい改正して、今回の改正が一番、評判がいいんですが、手足を全部なくして、期間も長くして、金額も上げました。承継税制の「税」の部分以外もいくつかやっています。ただ手をつけていないのが相続税の部分です。私は勉強会をやっていまして、ファミリービジネスの一番痛いところ、相続税のところを変えたらと思っていますが、財務省軍団というすごい壁があるので、とても大変なんですけれども。ぜひG1でイニシアチブを作って、ファミリービジネスの発展をやりたいと思います。

質問者E:お話本当にありがとうございました。大変学びが多かったです。田中さんに質問ですが、危機があった時に被害者ではなく当事者になるという、覚悟を決める必要があるんですけれども、なかなかそうなれないときに、何か助けになることとか、こういうのをやったらよかったとか、もしあればお教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

もうこれからは「ピンチ」しか来ない 常に自分と対話し、覚悟を持っておくことが重要


田中:
そうですね、もうクライシスが出た段階で、トップを被害者意識から当事者意識にするかというのは、ある意味もう、その人の器次第です。日頃から自分との対話をやって、往生際の哲学を持っている方は、すぐ当事者意識にギアチェンジができるんですけども、実際はそういう方は少ないです。特にトップの場合は、ほとんどの情報は間接情報。だから、「報告を聞いている」とか、そういうことでしかないんです。もし事故や事象が起きた現場が、特に被害者が明確に見えるとき、そういう時に、その現場に行ってもらう。そうすると、単に左脳で理解しているだけではなく、右脳でも入っていくわけです。そうすると、ある程度「やってしまった」という、受け入れるという気持ちが少しできてくる。徹底的に覚悟を決めていただくということはやります。

でもやはり重要なのは、クライシスの起こる前。これからはもうピンチしか来ないんですよ。ピンチをどうチャンスに変えるかというのは、いざそういうことに直面したとき、ちゃんと覚悟できるかどうかというところを押さえないといけない。これからは、、覚悟することをしっかりと強く培っていく。覚悟するときの方法論としては、自分との対話を日々やっていくということが重要なんですが、ただ自分との対話というのは、左脳的な対話は何の意味もないんです。やはり右脳でしっかりと腹落ちするということがすごく重要です。そうなると、単に自分の頭の中で左脳的に自分と対話しても意味がなく、やはりそれはいかに右脳的に落とし込むかというところがポイントです。

いろいろなリーダーの方々ですごいなと思う人たちは、日々左脳だけではなく、右脳に落とし込むという儀式を持っています。言い方を換えると、体を動かして考える、発想するということです。例えば、人によってはお経を唱えるとか、座禅するというのもあると思いますし、あるいは、自分の顔を洗ってシャワーを浴びて出るまでの間のプロセスを全部決めておいてやっていくと。最近重要なのは、起きたばかりの時に何も考えるなと言う人のが、結構多い。人間というのは寝ている間に無意識との対話をやっているんです。無意識は、実は考えてくれているんですよ。朝起きた時に、無意識との対話の結果が表にふわっと出てくるんです。朝の2時間ぐらいかな。その時に、朝起きてテレビをつけて番組なんかを見てしまうと、左脳情報が入ってきてしまうので、そこでプツッと切れてしまうんです。だから、結構みんなやっている儀式というのは、起きた瞬間に何かを体でやる。そうすると左脳が入ってこないので、右脳で体を動かしているとだんだんいろんな気づきというものが沸々と湧いてくる。だから、僕がやっているんですけれども、気づきをどんどん書いていく。そうすると、今の僕の場合は毎朝の1時間半で25~30の気づきが出てくるんですよ。気づきというのはすごく重要です。要は、左脳でいくら追求しても出てこない。スパッと落ちてくるというか、下りてくる、浮き上がってくる感じなんです。それをノートで文章化するだけでも、自分との対話というのは促進されます。今まで目の前に起こっている可視化された事象について、1つの見方をしていたけれども、気づきというのを自分でやっていくうちにどんどん違った風景が背後に見えてくる。

そういうことを日頃からやっていることによって「いざ鎌倉」でクライシスが起きた時に、そこに対して覚悟を決めるという土壌が出来上がっている。そういうところから出発しないとなかなか、「クライシスが起きました。じゃあちゃんと当事者意識持ってください」と言っても、左脳では分かっても、右脳が絶対に動きません。そういう意味では、特に仏教なんかというのは、僕はすごくしたたかな教えだなと思います。四苦八苦をどうレバレッジするかという教えですから。そういう意味で仏教なんかにはいろいろなことをやられる方も多いですね。

高岡:クライシスに立ち向かうために、その人の器が決め手となる、そのために左脳だけでなく、右脳も動かせるようにしていないといけないんですね。ありがとうございます。残り3分なので最後の質問に入りたいと思います。

質問者F:ありがとうございます。星野さんに質問です。先ほど海外展開をやっていくとおっしゃっていました。私は昨年、「星のやバリ」に行かせていただいて。あそこはあまり日本旅館という感じがしなくて、ゴンドラでスパのところまで行ったり、ヴィラがあったり、そういう意味で海外展開をこれからバリバリ行かれる時に、どういうような判断基準で「ここは日本の基準でいく」とか「ここはロシアの基準でいく」というのがあるのか。あと日本の今の民泊問題、Airbnb問題について一言、言及いただければ幸いです。

星野:「星のやバリ」については、私たちは運営会社なので、現地にオーナーはインドネシアの方で別にいるんです。バリで集客できる内容を私たちは考えて、あの内容しかないなと思ってあれにしました。実はホテル運営会社の戦いは、現地でどんな商品やどんなサービスを提供するかという以上に、ネット上の戦いが強くなってきている。その要素が大きくなってきています。スマートフォンで予約をする人が今、全体の6割ですから、Googleやトリップアドバイザーなどが入ってきて、そこからいかに自社のホームページに誘導し、そこで予約させるかという、この戦いなのです。つまり、ものすごくスケールが物を言うのです。イコールシステムの投資額につながります。システムの投資額を獲得できると、ネット上の予約獲得争いに有利に展開できるのです。

いろいろな案件がありますけれども、私の基準は今、ブランドに忠実になるということ以上に、とにかくいろいろなオーナーさんに案件を依頼されるときには前向きに検討していこうと。スケールを取ってシステム投資して、集客できるという良いパターンを作っていこうと、そんなことを考えています。

質問者G:不条理から行動、行動から結果にきちんと結びつくように、特に法改正とか制度改正を伴うときにアドバイスがあれば。よろしくお願いします。

不条理を解決するものは「志」と「仲間」 助け合いで物事は実現する

森:不条理の解決方法、「志」と「仲間」ですね。やっぱり不条理を正したいという強い意志をずっと持ち続けるということと、それを一人では全然実現できないので、信頼できる仲間と一緒にやる。私は駒崎さん(駒崎弘樹氏、認定NPO法人フローレンス 代表理事)がここにいて思い出したんだけれど、前に大臣をやっている時に、出生率の目標数を出すとか、20代で子どもを産んで、今になってから、うちに子どもが欲しかったなと思うんですけれども、「若いうちに子どもを産んでおかないと、卵子が老化してしまっていて、子どもが持てないんですよ」という情報が高校生ぐらいの時にもらえていたら、全然自分のキャリアデザインが違っていたというのがあって、それをやろうとしたんです。そしたら、マスコミの嘘情報というか、嘘ギリギリの不正確情報がわっと流されて、つまらないことで叩いてきて、女性手帳をやろうとして「国民に子どもを産ませて、いざ戦争」みたいなことも言われて大変だったんです。それを駒崎さんが、なんとマスコミの発信と同じぐらいの量で、自分のツイッターで、早打ちガンマンで審議会でやっていることを全部出してくれたんです。審議会の情報はインターネットに出ていますけれども、誰も見ていない。しかし駒崎さんのツイッターは読んでいるんです。ということで、逆転したんですよ。だからやはり仲間の助け合いで、物事は実現するなと思うので。皆さん、我々も絶対に応援しますので、頑張ってください。

高岡:ありがとうございました。聞き足りないことだらけで物足りなさが残ってしまうのですが、時間が来たのでここで終わりにしたいと思います。大変示唆深い話ばかり、非常に参考になりました、改めて登壇者のご三方に拍手をお願いします。(会場拍手)

  • 田中 愼一

    フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 取締役会長/グロービス経営大学院 教員

    本田技研工業株式会社ワシントン事務所にて米国における政府議会・マスコミ対策を担当した後、1985年日米自動車貿易摩擦が大きな問題となる中、初代デトロイト事務所長として北米地域における同社の広報戦略立案・展開の責任者となる。1994年セガエンタープライゼス株式会社に転じ、海外オペレーション部長等を歴任する。1997年世界最大級のコミュニケーション・コンサルティング・ファームであるフライシュマン・ヒラード(本社:米国セントルイス)に参画、日本法人を立上げ、現在に至る。企業や組織の事業戦略実現を支える戦略コミュニケーション分野の第一人者として、多様化するビジネス課題に直面する数多くの日系外資系企業/組織にコンサルティング・サービスを提供している。著書に、『オバマ現象のカラクリ-共感の戦略コミュニケーション』、『破壊者の流儀―不確かな社会を生き抜く“したたかさ”を学ぶ』(アスキー新書)がある。

  • 星野 佳路

    星野リゾート 代表

    1960年、長野県軽井沢町生まれ。1983年、慶應義塾大学経済学部卒業後、 米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。 1991年、星野温泉(現在の星野リゾート)社長(現在の代表)に就任。 所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、 運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。 独創的なテーマが紡ぐ圧倒的な非日常を演出するブランド「星のや」、地域の魅力を再発見する上質な温泉旅館「界」、自然を体験するアクティビティを備えたリゾート「リゾナーレ」、都市ホテル「OMO(おも)」、若年層向けカフェホテル「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に、国内外で59施設(22年8月時点)を展開している。2013年には、日本で初めて観光に特化した 不動産投資信託(リート)を立ち上げ、星野リゾート・リートとして東京証券取引所に上場させた。 2022年、星野リゾートは創業108周年を迎え、「OMO7大阪 by 星野リゾート」「OMO5金沢片町 by 星野リゾート」「界 由布院」などを新たに開業する。
  • 森 まさこ

    参議院議員 内閣総理大臣補佐官

    前内閣総理大臣補佐官、元法務大臣、元国務大臣、弁護士、金融庁出身、G1サミットメンバー
    東北大学法学部、ニューヨーク大学ロースクール
    平成7年 司法試験合格
    平成9年 弁護士登録
    平成10年 第1子出産
    平成11年 ニューヨーク留学
    平成14年 第2子出産、ワシントンDC留学
    平成17年 金融庁入庁
    平成19年 参議院選挙当選(福島選挙区)
    平成24年  安倍内閣で初入閣(女性活力・少子化担当大臣)
    平成25年 参議院選挙当選(2期目)
    平成29年 世界女性サミット実行副委員長
          参議院(財政金融委員、東日本大震災特別委員会理事、行政監視委員長、環境委員長、環境委員会理事)
          自民党(法務部会長、副幹事長、環境部会長、女性活躍推進本部長、治安・テロ対策 調査会長、教育再生実行本部長代理、サイバーセキュリティ対策副本部長)
    令和元年 参議院議員当選(3期目)党女性活躍推進特別委員長

    著書『あきらめずまっすぐに』(グラフ社)、『取り立てに怯えた少女が大臣になった』(海竜社)、『消費者庁設置関連三法』(第一法規)、『国民の生活を守る!』(PHP)、『こども大国ニッポンのつくりかた』(木楽舎)、『なぜ、あの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか?』(プレジデント社)

モデレーター

  • 高岡 美緒

    株式会社セプテーニ・ホールディングス、hennge株式会社、株式会社カヤック 社外取締役

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