キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

異文化が、海外で仕事がうまくいかないことの〈言い訳〉に使われていないか?―イラン駐在での気づき

投稿日:2021/04/02更新日:2021/04/13

今年3月発売の『海外で結果を出す人は「異文化」を言い訳にしない』から「イランで気づかされたこと」の一部を紹介します。

グローバル化が進む昨今、市場としてあるいは業務の委託先等として海外企業との接点はますます広がりつつあります。ただし、海外企業や海外のビジネスパーソンと極めて順調に関係を構築できていると自信を持って言える企業は少ないでしょう。むしろ、特に初めて進出する国については、その勝手の違いに戸惑うケースも多いはずです。ここでよくある失敗は、「うまくいかないのは文化が違うせいだ」と安易に考えてしまうことです。人間は何かうまくいかないと「言い訳」を考える習慣があります。

それがないと、自分がパフォーマンスを出せない理由を合理化できないからです。「異文化」というのは、実は海外で仕事がうまくいかないときに、最も安易に言い訳にしやすい逃げ道なのです。確かに異文化は1つの壁ではありますが、必ずしも本質的な原因であるとは限りません。真にビジネスがうまくいかない理由を考え抜き、それを突破できる人間だけが、グローバルで活躍できるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、英治出版のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

こうしてイランの文化や慣習をどれほど勉強し、研究しても、結果に結びつかないように感じていた。むしろ相手に、好きなように振り回されているとさえ思えてきた。もちろん、初めての海外駐在である。最初から、すべてがうまくいくとは思っていなかったし、学ぶべきことは、まだまだ山のようにあったのは事実だ。ただ次第に、このままでいいのだろうかと疑問を持つようになった。

たとえば、「イランでは、真の情報は簡単には手に入らない」と先輩は言う。確かに一面ではそうかもしれない。だが実際のところ、単に適切なキーパーソンに会えていないだけではないか、という疑問が芽生えてきた。「真の情報が手に入らない」のではなく、「真の情報を持っている人に会っていないだけではないか?」と。

日本で仕事をしていても、適切な人に会っていなければ、求めている重要な情報や正しい情報を得ることはできない。もちろん、異国でキーパーソンを特定して、面会にまで漕ぎつけるのは容易ではない。そもそも、いったい誰がキーパーソンなのかさえ見当がつかない。しかし、その困難に真っ向からぶつからないまま、「イランでは、真の情報は簡単には手に入らないから」と、自分で勝手に見切りをつけているのではないか?

同様に、「イランでは、相手の言うことを信用してはいけない」という教訓にも疑問を抱くようになった。そもそも、一介の外国人に、最初から信頼を寄せて情報を開示し、仕事を任せるものだろうか? その考え自体が甘いのではないか?

逆の立場で考えてみれば分かるだろう。日本人だって、見知らぬ外国人がいきなりやってきて、「いっしょに仕事をさせてくれ。いっしょに仕事をしたいから情報がほしい」と言われたらどうするか? 適当にあしらって終わりにするのが落ちだろう。一見さんの外国人を信頼して、最初から確かな情報を渡すことなどあり得ない。

そう考えるなら、「イランでは、人の言うことを信用してはならない」と嘆く前に、まずやるべきことは、徹底的に信頼関係を構築することのはずだ。そういった当たり前の努力が徹底されていないのではないか?

先輩社員の言う「イランに関する教え」は、なにもイスラム色の強いイランだから特別に起こっている困難ではなく、どの国でも起こりうる、ふつうのビジネス上の課題と捉えるべきではないか? そのほうが、むしろ自然なのではないか? 私は次第にそう考えるようになった。つまり、

「異文化が、海外で仕事がうまくいかないことの〈言い訳〉に使われていないか?」

という疑問を持つようになったのだ。

当時の私は、この疑問をうまく言語化できていなかった。しかし、その後ヨーロッパやアフリカでのビジネスに携わり、さらにグロービスで、海外で活躍するビジネスパーソンたちと交流するなかで、1つの持論に至った。

海外ビジネスの真の難所は、異文化に囚われすぎて、問題の本質を見失ってしまうことだ。

つまり、「海外での仕事は、通常とは違う何か特別なものである。その特殊性は、異なる文化的背景から来ている」という思い込みによって、日本にいたら自然に受け入れられる問題や状況に惑わされてしまう。特に、日本と文化が大きく違う国であるほど、すべての困難が、その文化が持つ特殊性からもたらされると錯覚してしまう。その結果、本質的な問題に向き合えずに、成果に直結するアクションが取れなくなるというわけだ。

 

グロービス経営大学院では、世界で通用するリーダーに必要な「国際的視野」を習得するための「グローバル・パースペクティブ」の授業を行っています。

  • 嶋田 毅

    グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

    東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
    グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

サブスクリプション

学ぶ習慣が、
あなたを強くする

スキマ時間を使った動画学習で、効率的に仕事スキルをアップデート。

17,800本以上の
ビジネス動画が見放題

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

利用者の97%以上から
好評価をいただきました

スマホを眺める5分
学びの時間に。

まずは7日間無料
体験してみよう!!

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

新着記事

新着動画コース

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース