管理会計上の費用の区分方法に変動費と固定費があります。変動費と固定費はどう区分するのでしょうか?また、そもそも、何故両者を区分する必要があるのでしょうか?今回は、変動費と固定費の違いと区分する理由について説明します。
管理会計で重視される費用
「管理会計」は、経営者の意思決定をサポートする会計情報です。具体的には、損益分岐点分析、CVP分析、原価計算、ABC(活動基準原価計算)、差額原価収益分析などがあります。管理会計は会計情報ですが、数値の単位は必ずしも通貨とは限りません。回数、時間、長さなど様々です。「財務会計」のように会計ルールなどの規制が無い分、設計や運用に自由度が高いことも特徴です。しかし、自由度が高いため、目的を明確にして主体的に運用することが管理会計の効果を発揮するためには重要なポイントになります。
さて、管理会計では、従来費用を題材にした手法が多く見られます。上述の具体例では、損益分岐点分析や原価計算などが該当します。これは、それだけ経営意思決定における費用の重要性が高いことを表しているといえます。
管理会計で費用を重視する理由は次の通りです。
会社の目的は利益を継続的に創出することですが、以下の通り、利益は収益から費用を差し引いた差額です。
利益=収益―費用
収益は景気変動などの外部要因の影響を受けやすいため、
その際、
変動費と固定費の性質とは
代表的な費用の区分方法が変動費と固定費です。変動費と固定費は、基本的に売上や操業度に比例して自動的に費用が増減するかどうかで区分します。売上等に比例して自動的に増減する費用が変動費、それ以外は固定費となります。
具体例で考えてみましょう。
典型的な変動費と固定費は、原材料費と減価償却費です。原材料は、製造に応じて消費されるため操業度に比例すると考えられます。また、減価償却費は期間に応じて発生、つまり操業度に関わらず発生する費用です。ただし、減価償却方法によって毎期発生する金額は変動することがあります。しかし、費用の変動要因が売上や操業度でない場合は固定費に区分されるため注意が必要です。
変動費か固定費かをケースバイケースで判定する費用もあります。2例紹介します。1つ目は、研究開発費です。研究開発費は、一般的には固定費となる場合が多いでしょう。研究開発費は毎期変動し得ますが、必ずしも売上高と連動するとは限りません。売上が減少しても“経営判断により”研究開発費は増加する場合もあるでしょう。しかし、毎期売上高の10%を研究開発費に充てるなどの方針を掲げている場合は、変動費的な取り扱いをすることがあります。また、人件費や水道光熱費などは固定費部分(固定給)と変動費部分(残業代)で構成される費用もあります。このような費用については、以下のように取り扱われます。
勘定科目法:勘定科目によって全体を変動費または固定費に区分します。
高低点法:一定期間に発生した費用と売上のデータを採取し、最高点と最低点の2点を結ぶ総費用曲線(Y=aX+b)を導きます。Yは売上高、Xは人件費の費用額、aはXのYに対する比例係数、bは切片です。つまり、費用額を、変動費部分(aX)と固定費部分(b)に区分把握します。
回帰分析法:一定期間に発生した費用と売上のデータを採取し、統計的手法により総費用曲線(Y=aX+b)を導きます。その後は、高低点法と同じです。
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