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【U–40世代へのメッセージ】 リーダーは明るく、幸せを感じさせられる人でなければいけない〜髙橋政代×平将明×青井浩×小泉文明

投稿日:2020/12/23更新日:2023/07/18

本記事は、2020年6月27日に開催されたG1-U40 2020「先輩セッション/U-40世代へのメッセージ」の内容を書き起こしたものです(全2回 後編) 前編はこちら>> 小泉文明氏(以下、敬称略):コロナの話題も含めて今後の話も少し伺いたいと思います。まず平先生には、日本の社会が今後どのように変わっていくか、それを政治としてどのように捉えていこうとしていらっしゃるかを含めて伺いたいと思います。

今こそ「デジタル・ガバメント」へ移行すべき

平将明氏(以下、敬称略):ウィズコロナ、ポストコロナということで、私もG1でずっと言い続けている通り、まずはデジタル化をしましょうという話があります。温故知新ではありませんが、日本には天然痘等の流行病に苦しめられてきた歴史があります。そこで当時の政治指導者が何をしてきたか。3つのことをしていました。「元号を変える」か、「大仏をつくる」か、「都を移す」。このうち、元号は変わったばかりですし、我々がどうこう言える話ではありません。大仏をつくるのも我々の仕事ではない。ということで、私は遷都をすべきだと思っています。 では、今の時代に合った遷都は何か。パンデミックですから、どこかに行けばコロナから免れることができるとも考えにくい。ですから、やはりデジタル・ガバメントですね。クラウドですとか、デジタル上に遷都をすべきだと考えています。首都直下型地震や南海トラフ地震も想定されているなかでは、そのほうがセキュアだし、サステナブルだと思っています。知っている人は知っていると思いますが、エストニアがデジタル・ガバメントにしたのは、おそらくロシアの脅威があったから。ロシアに領土を占領されても政府がデジガバで国民がそこにつながっていれば、エストニアという国は続きます。そうした意味でも今後の危機を考えれば私はデジタル遷都をすべきだと考えています。 デジタル遷都をすると何がいいのか。分散化を図ることができます。地方創生といっても、霞が関と永田町があるからなかなかうまくいかない。けれども、都をサイバー空間に移すと地方創生等も劇的に進むと思うんです。これ、政治的な文脈でお話ししますと、私は石破茂さんや小泉進次郎さんと地方創生を4~5年やっていましたが、それが今は少ししぼんでしまったので、「地方創生2.0」という言い方はあるかもしれません。あるいは、かつて大平総理が言っていた「田園都市国家構想」にならって「デジタル田園都市国家構想」というような形になっていくだろう、と。 あと、今回のコロナで貧富の格差がさらに拡大していきました。それでデジタルの先駆者たちはもっともっと儲かっています。これに対し、セブン・シスターズのような存在、あるいはGAFAのようなプラットフォーマーは、「日本で生まれそうもないよね」という話になっているわけですね。でも、私としては、アバターはいけると思っています。先日はアバターインという会社がANAからスピンアウトしたのかな?そこの会社のアバターを、日本橋の複合ビルで100体投入するという話がありました。それで、世界のあちこちに設置されたアバターから接続して動けるということで、「これは面白いな」と思いました。 ですから、羽田空港跡地もアバター特区にしようかなと思っています。アバター優先。アバターが動けるということですね。現在のアバターは、本会場のようなフロアでは自由に動けます。でも、ご承知の通り、道路に一歩出た途端、横断歩道を渡れないとか、歩道を動けないといった話になります。ですから、物理的にもアバター優先にして、プラットフォーマーをつくる特区を設けようかなと思っています。この動きは今、コロナによって完全にフェーズが変わりました。世界中から就職希望が殺到しています。それこそセブン・シスターズからも「入りたい」という人がたくさん来ているということで、このアバターはちょっとこれから注目だなと思っています。 小泉:青井さんはいかがですか?消費という意味ではコロナの影響をど真ん中で受けていると思いますが、消費や店舗のビジネスはどのように変わるのでしょうか。丸井は以前から店舗ビジネスのコンセプトを変えようとしている印象もあります。

これからの店舗は「体験を提供する場」へ

青井浩氏(以下、敬称略):ウィズコロナで少し分からなくなった部分も出てきています。消費の長期トレンドというのは、基本的には「コモディティ」「グッズ」「サービス」「エクスペリエンス」という風に変化すると言われています。で、日本は今、それがサービスからエクスペリエンスのほうに移ってきているぐらいの時期なのかな、と。一方、モノを売るための店舗は、長期的にはどんどんEコマースにシフトしていきますし、今回もそれはだいぶ進んだと思います。たとえばアメリカでは、これまでEコマース化が10%進むのに10年かかっていたのに、この2ヶ月でさらに10%進んだと言われています。間違いなく、コロナによってそういったことはさらに加速していきます。 そこで私たちの基本的な考え方がどうなるかというと、「店舗は体験を提供する場なんだ」ということ。モノを扱っていても、サービスを扱っていても、飲食でも、大事なのはモノやサービス自体でなく、それに関わる体験である、と。世界観や考え方、あるいはコミュニティといったものを提供することが大事になるので、それを提供できる場所に店舗を転換していきましょうというのが私たちの考え方になります。 ただ、ウィズコロナで少し思ったことがあります。たとえば、ファッションやアパレルであれば、「試着って、大事だよね」という話がありました。それで、「試着というのはリアルなお店でないとできませんよね」と、割とリアルの優位性がナイーブに信じられていたんです。でも、今回起きたのはオンライン接客というものでした。ご自宅にいる人に対して、Zoom等で「ワードローブのなかに何がありますか?」「ジーンズはどんなものを履いていますか?」「トップスはどんな感じですか」という風に聞いたうえで、それに合わせてオンラインでご案内をしていく。 そうすると、売りたいモノを売るというよりは、パーソナルスタイリストみたいな接客ができるわけです。それで、お客さまとしても満足度はすごく高まるし、販売しているほうも客単価が上がったりする。ですから、「もうリアルで接客したくない。コロナが終わっても、ずっとオンラインで接客したいです」なんていうスタッフの方も現れています。 そんな風に、コロナになる前に私たちが信じていたような、「これがリアルの強みだよね」といった話は、コロナで1度洗い替えられるように思います。ですから、さらに突き詰めて考えないといけない。ナイーブに「これはリアルの領域だ」なんて言っていても通用しなくなるのかな、と。そのあたり、リアルまたはアナログでしかできないことの本質とは何かをピタリと言い表せる人はあまりいないかなと思っていますが、いずれにしても、私たちはその辺を今考えているところです。それが明確に結晶化できて掴めてくると、次のビジネスに進んでいけるという気がしています。 小泉:青井さんのところは現在、ベンチャー投資というか、ベンチャー企業とのコラボレーションもすごく多いですよね。会場にいるメンバーともいくつかコラボをなさっていると思いますが、その辺はどのような仮説で進めていらっしゃるのですか? 青井:結局、イノベーションを起こさないと10年前の当社のように潰れそうになってしまうということで、「では、どうしたらイノベーションが起こせるか」と。そんなことを考えながら、たとえば「企業文化を変えていったらいいのでは?」と、こちらも10年ほどかけて対話型・自律型の企業文化をつくったりしてきました。ただ、大企業に入る人というのは、良いか悪いかは別の話として、やはり安定志向の人がすごく多いんですね。そのうえで、やりがいのある仕事がしたいと考えています。 けれども、イノベーションや新しいビジネスを起こすのは、やりがいはもちろん、安定よりはむしろ好んでリスクを取りたがる人というか、危機のときに燃えるような人なのですよね。会場の皆さんもそうだと思うのですが、そういう人でないとなかなか価値をつくりだせないと感じます。で、それならスタートアップ、ベンチャーの方々と協業していくことが、イノベーションを起こしていくうえで1番良いのではないかなと考えました。そういう意味で、今は協業のために投資をさせていただいている状態です。 小泉:比較的足の長い研究開発等をやっていらっしゃる髙橋先生はいかがでしょうか。昨今はワクチンの研究も話題になっていますが、コロナ時代における研究開発、あるいは創薬のプロセスに、今後どのような変化が起きていくとお考えですか?

コロナ禍は医療分野にとってもチャンス

髙橋政代氏(以下、敬称略):私はそこもチャンスだと思っています。私が会社をつくった1つの理由がそれなんですね。今までの治療のつくり方は、もうマネーゲームになってしまっているので。治療費はどんどん上がっていく一方で、医療現場は疲弊して貧乏になって、「ちょっとおかしいぞ」と。しかも、それが患者さんにとって良い方向なのかというと、なかなか治療はできないし、高いし。ですから「治療のつくり方を変えたい」と考えて会社をつくりました。その意味ではチャンスだと思っています。今は皆さんが医療にすごく興味を持って、「知りたい」と思っているし、「ワクチン完成に5年もかかるというのはおかしいぞ?」ということも分かってきているので。 私はいろいろな委員会にも入れていただいて、平さんのように、上のほうには「本当に変えなあかん」という危機感がすごくあることを知っています。ただ、日本ではそれがなかなか変わらないということで、すごくイライラしているというか。生産性が高まらずに、無駄もたくさんある状態が続いています。で、それを変えるため、何かの委員会等で「こうしたほうがいいです」と言っても、「いや、それは明治維新か終戦かというぐらいの号令をかけないと、日本では絶対に無理ですよ」と言われていた。ところが、その号令が思いもかけず、こんな形でやって来たわけです。それで私は今、申し訳ないけれどもワクワクしているようなところがあります。 そのうえで、治療づくりでも同じことが言えますけれども、どこまでリスクをケアしなければいけないのかということで、必要なものと必要でないものが今は見えてきたと感じています。また、先ほど申し上げた通り、何をするかというゴールさえ決まっていれば、その手段が変わるだけだと思うのですね。先ほどのお洋服の話でもそうです。人をキレイにするというゴールを、お店で待っているという手段ではない方法で実現するということなので。その意味ではどこにでもチャンスはあると思いますし、すごく楽しみです。それによって医療のつくり方も変えたいと思っています。 小泉:現在のような変化のなかで求められるリーダー像につても伺いたいと思います。たとえばU–40のメンバーに対して、「これは確実にやっていったほうが良いよ」といったアドバイス等が何かあれば。

物事を解決するときは「生態系全体」を見たうえで進めなければいけない

平:政治をやっている我々としては、政策やビジョンが必要であるとともに、何かを変えるためには、まずは自民党を通さなければいけないという話があります。自民の政務調査会と総務会を通さないとダメ。で、そのあと国会で議論して多数決をとるわけですが、そこは結構オートマティックにいきます。ですから、何かの問題に対して、それを解決する政策をつくること自体は、それほど難しくありません。ただ、物事を解決するときは生態系全体を見たうえで進めなければいけない。あるところ1箇所だけを見て「正しいから」とグイグイ行ってみても、全体が回らなければ絶対に成果は出ません。少し俯瞰して見ていくということをやらないと、格好良いことは言っても成果は得られないので、そういう見方ができたらいいなと思います。 青井:生態系という言葉を聞いて、「我が意を得たり」という感じがしています。コロナになってから、私もエコシステムを強く意識するようになりました。たとえば、去年は「ステークホルダー」ということがダボス会議等でもかなり言われるようになっていましたよね。サステナビリティおよび気候危機、そして「ステークホルダー資本主義」の2つが、大きなグローバルテーマである、と。そのうえで、これまで当たり前であったことが危機によって当たり前でなくなってしまったときにどうするのか。ボリス・ジョンソンは「コロナ禍で分ったことがある。それは『社会というものがある』ということだ。」と言いました。いろいろな人たちの善意やボランティアの方々に支えられて、実は安全や安心が成り立っていたことが見えるようになったわけです。そうしたつながりのようなものが広がっていくと、それがだんだんエコシステムになっていくのだと思います。 ですから、そこでは「自分たちさえ良ければいい」といった組織論でなく、ステークホルダーについて考え、さらには社会に広がっていくエコシステムのようなものまで考えていく。そのうえで、できることは限られているけれども、「では、このなかで私たちにできることはなんだっけ?」と。そんな考え方や働きかけ方が大事になっていくと思います。

「健康診断」をやめて「幸福診断」だけをやったほうがいい

髙橋:平さんがおっしゃったように、広い視野を持って俯瞰できる人になることが大切なのだと思います。先ほど「別の正義」と言いましたが、つまりは「小さい視野で見ると正義かもしれないけれども、枠をもう1つ広げると正義ではない」という、そういうことを分かる人が必要だと思っています。狭い視野で正義を言ってしまうことが1番の問題というか、邪魔であったという、そういう感じですね。 それともう1つは、幸せを感じさせてくれる人になること。私、日本に足りないのはそこだと思っています。医者をやっていて思うのですが、日本では、健康幻想というか、健康あるいは正常でないといけないという幻想・強迫観念が人をすごく不幸にしていると感じます。ですから、もう健康診断をやめて幸福診断だけをやったほうがいいかもしれないですね。そのうえで、リーダーは明るく、幸せを感じさせられる人でなければいけない。そういう意味では、「お笑い」ですね(会場笑)。私は関西人だから思うのですけれども、東京で政治をやっているからダメなんじゃないかって(笑)。 小泉:デジタル遷都でなくて大阪遷都ですかね(笑)。では、ここから会場からの質問に答えたいと思います。

Q1、有形資産である小売から無形資産であるフィンテックやベンチャー投資への移行というのは、丸井にとって大変なシフトだと感じます。そのプロセスについて具体的に教えていただきたいと思います。

青井:当社の祖業は月賦販売です。当時、家具は高価で長く使うものだったため、その代金を用立てしたうえで、月賦払いにて返済していただく形にしたのがはじまりでした。ただ、それが高度成長で一巡すると、耐久消費財や金融に対するニーズもだんだん減ってきて、今度は消費財へのニーズに変わっていきます。そのとき、若い人向けのファッションでクレジットという風に、少しマーケティングの方向やターゲットを変えて、それで第2期というか、次の成長に入ったという流れですね。ところが、バブル以降は若い人々の非正規雇用増加、あるいは人口減少によって打撃を被ったり、さらにはファッションのコモディティ化によって単価がどんどん下がったりして、このままでは大変厳しいことになると分かっていた。そこで、一方の要素だった金融で稼げるようにしたいということで、小売から金融へ転換していきました。 では、そこから先はどのように成長していくのかということで、「無形投資だろう」と。たとえば、つい先日はGAFA+マイクロソフトの時価総額が日本のGDPを超えたというニュースがありました。世界では、アメリカとイギリス、そしてスウェーデン等北欧の数カ国で、無形投資が有形投資を上回っています。一方で、日本では有形投資に対する無形投資の割合が0.5。まだ半分しかありません。長期で見てみると、日本経済の失われた30年というのは、この辺が理由ではないかなと私は思っています。その意味で、ITやデータ等、いろいろと言い方はありますが、長期に、グローバルに見たときは、有形資産から無形資産に投資できる会社にしていくことが大事ではないかと考えています。それで、ベンチャー、スタートアップの方々と協業して、そういう会社に未来を託しているという状態になります。

Q2、英Apoliticalが発表した『デジタル・ガバメントを推進する世界で最も影響力のある100人』では、台湾や韓国から選出があったものの、日本からは1人も選出されませんでした。日本は遅れているのでしょか?

平:今回のコロナで「日本はIT化が遅れている」という話が出てきましたけれども、これはどちらかというとテクノロジーよりも縦割り横割りの構造的な問題です。ですから、それをクラウドに持っていったうえで強力な執行体制をつくらないといけない。これは、なんというか、ITに詳しい人にはできません。政治家にしかできない。大事なのはそこにCIOを持ってくることでしょうね。政府のチーフ・インフォーメーション・オフィサーのところに強烈な人を持ってくる。

Q3、何か1つの分野でリーダーシップを発揮している人が、他の分野のリーダー(とりわけ海外の異なる分野のリーダー)とどのように接したら良いとお考えでしょうか。

髙橋:私も最初は、特に留学するまでは海外の人と接するのがすごく怖いと感じていました。その意味でも、留学してみるのは、あるいは海外で少し暮らしてみるのはお勧めです。そうすれば、「英語はすごいけれども、言っていること自体はたいしたことない」みたいな人が結構いるのも分かるし(笑)、恐怖感もなくなってくるので。そのうえで、同じ理念を伝え続けていれば、やはり共感はしてもらえるなということは感じています。 小泉:そのあたり、堀さんはG1グローバルはじめ、海外のトップの方ともコミュニケーションが多いと思いますが、いかがですか? 堀義人:自分と付き合うことに価値があると、あちらの方に認めてもらわないと付き合ってもらえないように思うので、自分の価値をどうやって伝えるかが大事になるのかな、と。あとは、髙橋先生がおっしゃる通り、ぶつかっていけばいいと感じます。常に、積極的に、発言する。海外では、たとえば会議の場で発言をすれば必ずアテンションが集まるので、そのうえで、あとで話をしに行ったりすればいいと思います。ですから基本的には日本と一緒なんですよね。そうして関係性を持って、そのときに「自分はこれがしたいんだ」という思いを伝えていく。実際、髙橋先生がおっしゃるように、僕もハーバードに行って「たいしたことないな」と思ったことがあるし(会場笑)、ダボス会議でもすごく面白いのは一部の人ですよね。日本でもそうだと思います。そこで面白い人と関係性をつくれば、世界の面白い人ともつながっていくと思います。 小泉:では、時間になりましたので終了したいと思います。皆さん今日はありがとうございました(会場拍手)。 執筆:山本 兼司

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