「足で稼ぐ」より「IT化」?営業の世界に押し寄せる変化
新型コロナウィルスの流行による外出自粛、テレワーク推進の流れを受けて、これまでの仕事の進め方に抜本的な変化が生じている方も多いことでしょう。中でも、テレワーク化の影響が大きい業務の一つが、「営業」です。営業は「足で稼ぐ」という言い回しがあるように、顧客を何度も往訪し、フェーストゥフェースの対話を重ね、時には接待などによって親密な関係を築き、そして成果に繋げてきました。それがテレワークの時代では、こうしたやり方の大部分が採用できなくなるわけですから、影響の大きさは明らかです。
もっとも、今回の新型コロナ感染拡大が起こる前から、営業の世界にもテクノロジーの進化による変化の波は押し寄せてきていました。その代表格がSFA(Sales Force Automation)です。
SFAは、日本語では営業支援システムなどと訳され、ITによって企業の営業活動におけるさまざまな課題を解決する情報システムやソフトウェア等を指します。一口に営業活動といっても、具体的にどんな情報や機能を支援するのかは多岐にわたり、多くのベンダーがそれぞれユニークなサービスを提供しています。
典型的な機能としては、
・顧客情報管理…接触履歴、取引履歴、担当者情報、与信情報等
・案件の進捗状況管理…リードから受注、アフターサービスまでの予定や期日、商談内容の経緯や成約確度等
・営業担当者の活動管理…週報、日報等の機能、アポイント実績・訪問実績等
・予算・実績管理…部署単位での売上や費用の分析・予測等
・文書作成・管理…見積書、請求書、契約書等の作成
などがあります。
SFAのメリットとしては、それまで属人的になりがちであった営業の仕事の進め方やノウハウを、情報ツールの導入によって標準化し、営業チーム全体としての効率化を図れることがありました。近年ではこれに加えて、クラウドとモバイル端末の普及によって、営業担当者がどこにいてもデータベースにアクセスでき、たとえば客先からわざわざオフィスに戻ってデスクのPCで報告書を入力する時間などが効率化できるようになっていました。
withコロナ時代の営業はどう変わるのか
このようにかなりの程度、ITによる効率化が進行していたところへ、冒頭の新型コロナを契機としたテレワーク化の流れが一気に来ている状況です。今後の動向はどのように変化していくでしょうか。
まず既に多くの方が実感されているのが、対面の商談からWeb会議システムへの移行でしょう。とはいえ、営業活動は映像と音声を交わせれば十分ということはなく、資料の提示が欠かせませんので、早晩、Web会議システムとSFAとの連携、統合が進んでいくと想像できます。
また、対顧客の活動だけでなく、社内(営業担当部署内)の上司部下の関係やフロントとバックオフィスとの関係もテレワーク化していきますので、打合せの代替となるチャット機能、請求書や契約書等物理的な紙のやり取りの代替となる電子契約の機能も重要性が増してくることでしょう。
そして営業担当者個人のスキルという面でも、問題解決や相手のニーズを探る質問力といった基本的な部分はこれからも必要とされる一方で、たとえば口頭でのコミュニケーションに代わり文章によるコミュニケーションの比重が増してくると考えられます。
自粛要請等によって面談の機会が激減してしまうのは確かに深刻な変化ではありますが、「ピンチをチャンスに」変えるべく柔軟に対応していきたいものです。
【参考図書】
『テクノベートMBA 基本キーワード70』
グロービス、嶋田 毅 (著)、PHP研究所
1650円