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M&Aにおける焦土作戦って何?

投稿日:2020/04/01更新日:2020/04/02

焦土作戦とは、戦争等において、防御側が攻撃側に奪われる地域の利用価値のある施設や食料を焼き払い、生活に不可欠なインフラストラクチャーの利用価値をなくして攻撃側に利便性を残さない戦術及び戦略の一種を言います。焦土作戦は、実はビジネスにおいても活用されています。今回は、企業買収(M&A)における焦土作戦について説明します。

焦土作戦とは

買収者の買収提案に対して被買収会社の経営者が好意的に捉えない、いわゆる敵対的買収における買収防衛策として焦土作戦が用いられることがあります。買収者の買収目的が被買収会社の特定の資産、技術、事業、あるいはそれらを保有する子会社である場合、それらを第三者等へ売却等することによって被買収会社の企業価値を意図的に棄損させ、買収者の買収意欲を失わせる作戦を焦土作戦と言います。

焦土作戦は、被買収会社を王冠(クラウン)、そして被買収会社が保有する特定の資産等を宝石(ジュエル)に見立てて、クラウンジュエルと呼ばれることもあります。

焦土作戦の留意点

焦土作戦は、買収者の買収目的を削ぐ有効な買収防衛策に思えますが、その実施においてはいくつか留意点があります。例えば、会社が重要な事業を第三者へ譲渡する場合、株主総会の決議が必要になります。つまり、経営者のみが買収提案に反対するだけではなく、経営者は株主の同意を得る必要があります。また、財産の処分は取締役会の決議のみで可能ですが、財産の処分が適切でないと判断される場合には、意思決定をした取締役は、取締役としての善管注意義務、忠実義務違反を問われる可能性があります。

買収者にとって魅力的な資産等は、被買収会社にとっても重要であることが多いため、買収は回避できたとしても売却後の企業価値は大きく損なわれる可能性があります。焦土作戦はもろ刃の剣でもあり、株主の同意を得ることは容易ではありません。

焦土作戦の事例

国内での焦土作戦の有名な事例は、ライブドアによるニッポン放送の買収の事例です。ライブドアは、ニッポン放送の買収を通じて同社の子会社であるフジテレビの経営権を握ることが目的でした。これに対してニッポン放送は、保有するフジテレビ等の株式の売却をほのめかしました。

最近の事例では、前田建設の買収提案に対する前田道路の買収防衛策が焦土作戦に当たるのではないかと言われています。前田建設の買収の狙いは前田道路の豊富な資金とも言われています。前田道路は、前田建設の買収に対抗するためにクラウンジュエルである現金等の有価物(連結ベース)約850億円のうち60%超に当たる約535億円を特別配当金として社外へ流出すると発表しました。

この対応は果たして吉と出るのか、意識してニュースを見てみてはいかがでしょうか。

  • 溝口 聖規

    グロービス経営大学院 教員

    京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。 (資格) 公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)

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