芸能界でスキャンダルがあると、CM降板による違約金やテレビ局からの損害賠償請求などが話題になります。今回は違約金の会計処理について説明します。
違約金の会計処理
違約金の会計処理は一律とは限りません。違約金の発生頻度、要因、金額等により会計処理は異なります。一般の事業会社の場合、契約不履行等による違約金を支払うことは通常では考えにくいでしょう。会社にとって、違約金の発生原因がかつて経験したことがないほどに特殊、あるいは発生自体が稀であり、違約金の金額が会社の利益水準等に照らして重要性が高いと判断される場合には、「特別損失」として計上されます。
なお、違約金の金額が会社の利益水準等に照らして重要ではないと判断される場合には、実務上、「営業外費用」として計上されることもあります。また、事業内容によっては違約金が比較的頻繁に発生することもあります。例えば、多店舗を運営する会社が契約期間中に店舗の賃貸契約を解約する場合です。賃貸契約を継続するよりも違約金を払って早期解約した方がビジネス上有利と判断される等、ビジネスの一環として解約金が継続反復的に発生する場合は「販売費及び一般管理費」として計上されます。
違約金が確定しない場合
また、すんなりと違約金の支払義務や金額が確定しないケースも考えられます。例えば、当事者同士が違約金や損害賠償請求を巡って交渉、訴訟になるケースです。係争中においては違約金を支払うかどうか、また金額が確定していないので違約金を費用として計上することが出来ません。このような状況では、違約金を「偶発債務」として財務諸表に注記することになります。
偶発債務は、債務の発生する可能性が不確実な状況が決算日現在既に存在しており、将来事象が発生する、または発生しないことによってその不確実性が最終的に解消されるものを言います。簡単に言うと、将来債務が発生するかどうか現時点でははっきりしないけれども、将来債務が発生しそうな可能性が現時点で認められる状況を指します(詳しくは「偶発債務って何?」を参照ください)。
したがって、交渉や訴訟の状況によっては、「決算日現在において将来違約金の支払いが発生する可能性がある程度予想される」等の財務諸表注記を記載することになります。
その後、判決が確定する等して違約金の支払義務及び金額が確定した時点で、違約金をP/Lに費用計上することになります。