堀義人のダボス会議2020速報(4)人類滅亡の危機を救う方法

ダボス会議4日目。朝5時半からBリーグ理事会が開催された。僕は、ダボスのホテルの部屋からスカイプ参加だ。Bリーグと言えば、茨城ロボッツだ。36チームで売り上げ、観客動員数とも伸び率がNo.1だ。朝からロボッツのロゴマークを胸にダボスから参加している。Go! Go! Robots!

2時間という長時間のBリーグ理事会を終えて、コングレスセンターへ。今日も快晴!

「How to tax the digital economy」に参加中。このセッションはフランス24というテレビ局によって制作され、後日放送へ。登壇者は、フランスのブルーノ・ルメール経済財務大臣、グリアOECD事務総長、コロンビアロースクールの教授、国際NGO代表。モデレータは、テレビ局の報道トップだ。GAFAMの台頭にどう国家は対応すべきか?

GAFAM5社の時価総額は、既に5.2兆ドル。5社で日本の時価総額に匹敵する規模だ。彼らは、海外でほとんど税金を払っていない。フランスがデジタル税を導入すべく動いたが、トランプが強く抵抗。ペンディングになっているのが現状だ。

フランスの主張は「世界全体で取り組むためにOECD等と組んでいる」

「バラバラなデジタル税を各国で作るよりも、統一的な国際デジタル税を作る方が良い。世界で最も利益を上げている会社がほとんど税金を払っていない。売り上げに対して0.02%しか税金を払っていない」

明らかにダボス会議は、GAFAMに対して厳しい視線を向けている。テクノロジーの負の側面のみが議論されている。デジタル税については、グリア事務総長は「今年中に必ず導入する」と宣言して、隣に座っていたルメール経済財務大臣と握手していたのが印象的だった。

そして僕が最も楽しみにしていたのが、『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』を執筆したユヴァル・ノア・ハラリ氏が登壇した「21世紀を存続する方法」と題したセッションだ。

冒頭20分ほど静かな口調でスピーチされたが、歴史家の視点から未来を想像し、人類に論理的に警鐘を鳴らす手法に聞き入った。

上記写真に掲載された数式には、震撼した。「生物学的な知見とコンピューティングパワーに、データが加わると、人類をハックする能力が身につく」と言うのだ。つまり、国民のデータを集めることにより、国民を操ることが可能になり、デジタル独裁国家が作ることができると言うのだ。

今集めているデータはまだ体外のもののみだ。顔認識、クリックすることによる嗜好性の判断、GPSによる位置情報、財務状況などだ。今後は、内にあるデータがウェアラブル等によって収集されることになる。そうなると感情、体調、性的指向、性格なども判明することになる。そうなると「自分よりもAIの方が自分のことをよく知っている状況」が生じる。

この状態では、権威は人類からアルゴリズム(AI)に移転する。現時点では、人類は何を食べるか、どこで働くか、誰と結婚するかは自分の意思で決めている。ところが、全てのデータ(生体や能力を含む)が集まるとAIの方が自らのことをよく知っているので、AI が決めた方が正しい結果を導くことになり、人類は意思決定をAIに委ねるというのだ。

この状況がデジタル独裁国家である。

今後人類を絶滅に追いやる可能性があるのは、次の3つだ。
・核戦争
・気候変動
・テクノロジー・ディスラプション

この3つともグローバルな問題なので、国単位ではなくグローバル次元での課題解決が必要になる。核戦争と気候変動は、人類共通で問題と認識できるので、グローバルで取り組みやすい(事実国際的な枠組みが既にある)。

一方、テクノロジーについては、各国が我先にと開発し競争することになる。なぜならば、今後格差は階級ごとだけではなくて、国家間でも大きく生じるからだ。AIに進化した国はデータやパワーを持ち、一方AIの進化に遅れた国はデータ植民地化するからだ。

世界的な規制が行われなければ、バラバラに中国や米国などがロボット兵器やサイバー攻撃、サーバイランス(調査監視)技術等を開発して、優位な立場を築くことになる。そうなるとテクノロジーが暴走して、人類の脅威となり得るのだ。

第二次世界大戦後、初めて人類は平和を獲得した。それ以前は平和とは「戦争と戦争の合間の状況」だったのだ。今やっと「ルールに基づく自由世界秩序」を構築することにより、戦争が起こりえない平和な状況が先進国において作られることになった。

だが、今後は再度「平和な時代」から人類が今まで生きてきた「ジャングル型の競争時代」に逆戻りするかもしれない。アメリカファースト等と叫ぶリーダーが出てくると、強い危機意識を持つ。それぞれの国が独自にテクノロジーを無秩序で進化させると国家間の紛争・格差を生み、人類の脅威となるテクノロジーの暴走が生じる。

そして、人類滅亡の危機が来るかもしれない。そうなると結果的に地球に生き残るのは、ネズミとなるかもしれない(恐竜が滅亡した後も存続したのがネズミ等の哺乳類で、そのネズミが進化して地球を支配したのが人類である。人類が滅びてまた新たに違う生物が進化して、同様の歴史を辿ることになるかもしれない)。そうならないためには、このダボス会議にいる優秀なリーダー達が、世界的次元な課題解決に向けて行動することを期待したい。

とハラリ氏は、締め括った。その後パネル討議に入った。

このセッションを聞いたあとに、数多くのことを考え始めた。国単位のテクノロジーの暴走を止める方法とは、どういうグローバルな枠組みで規制すべきなのだろうか、テクノロジーの進化が人類の繁栄のために使われる方法とは、Useless Class(役立たずの階級)やデータ植民地を生み出さない方法とは、今後の教育のあり方とは?????

そして、今年最後のダボスの夜を迎えた。いつものようにホテルを出て、歩いて目的地に向かう。写真の場所(チョコレート屋さん)で、グロービスナイトを2012-2014年まで3年連続で開催した。今は、ロシアのロスコングレスという政府系の会議を主催する財団が、占拠していた。帽子は、茨城ロボッツ。ポーズはGo! Go! Robots!

そしてステーキハウスで、「G1ディナー@ダボス」を開催した。親しいG1仲間とダボス会議での学びを共有する貴重な機会だ。それぞれ違う立場で見てきた風景、面白かったこと等を共有し、議論する。4日間続けて、英語でガンガンに発信してきたので、最後の夕食だけは日本語で情報交換。実はこの「セッション」がダボスで学びが最も大きいと思っている。

食後にホテルに戻る途中で2軒梯子した。1軒目がインド商工会議所(CII)主催のバリウッドナイト。もう1つがForbesとEY主催の「Most Powerful Women Reception」だ。

昨晩から比較してイベントの数が減り、道路の渋滞も解消した。多くの人が既に帰路についているようだった。明日いよいよ記念すべき第50回目となるダボス会議は最終日を迎えることになる。

2020年1月23日
ダボスにて
堀義人

 

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※サムネイル写真の出典:World Economic Forum

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