ダボス会議2日目。朝7時半からエデルマン主催のプライベートセッションに登壇するために、暗い中徒歩で移動。会場に着くと立ったまま軽く朝食をとり、登壇者と挨拶をしてセッション開始となった。僕は、この「信頼指数」調査がとても重要だと思っている。ダボス会議の朝食イベントとして必ず欠かさず参加してきた。
リチャード・エデルマン氏の基調講演の後に、パネル開始。マイクロソフト社長、デンマーク元首相、Wikipedia創設者等とWSJ編集長のモデレートで進行。世界全体で、資本主義と民主主義のあり方が問われ、民主主義主要国の根幹が揺らいでいる気がする。双方の課題については、日本やG1が模範を示せると思う。
<僕の発言趣旨>
・株主資本主義から日本的な従業員・顧客・社会を優先する資本主義へ
・技術革新やAIは日本では人間を豊かにする方向に使われるので、歓迎されるであろう
・民主主義の根幹は、リーダーを含む全員が発言し、公正な議論し、選挙で決めること。BREXITをみていると英国リーダーは何をしてきたのかと思う
コングレスセンターに移動しメイン会場に滑り込む。トランプ大統領が直後に登壇するので、長蛇の列ができている。開始25分前に会場が満杯となり、入場が締め切られる異例の事態となった。
50回目のダボス会議の歓迎スピーチが始まった。壇上にはクラウス・シュワブ氏。座席に座っている赤い服を着た方がスイス大統領だ。今回は、気候変動問題について言及する方がとても多い。シュワブ氏の後に登壇したスイス大統領は、アマゾンと豪州の火災を例に挙げ、強い警鐘を鳴らした。
トランプ大統領のスピーチが始まった。まずは延々と実績の強調から。貿易交渉成功、経済上昇、雇用増、賃金上昇、工場増、規制緩和など。一方、会場では「トランプ大統領は経済的に良かった?事実は」という批判する紙が配られていた。恐らく不許可で実施したのではないかと推察している。ダボスではとても珍しい。米国の分裂を端的に示している。
大統領選挙を意識してか、実績の自慢が続く。「米中関係はとても良い。第一段階の合意を達成。米中の関税は残り続ける」と、米中貿易協定にも言及。
「NAFTAを廃止して、USMCAを締結し雇用を取り戻す。日本と韓国とも交渉し、次は英国だ。米国の空気や水は最も綺麗だ。米国は本日1兆本の植林プロジェクトに加わる」と実績の強調を続けた。だが、黙って席を立つ人が増えてきた。さあてこれから国際情勢へ言及するかと思ったら、急にスピーチが終わってしまった。え?しかも質疑応答も対談もない。
イランや欧州等の国際情勢に関する言及なし。気候変動問題も完全にスルーだ。スピーチが終わったあとの拍手もパラパラだ。完全に国内への宣伝目的として、記念すべき第50回目のダボス会議のスピーチが使われた印象だ。これはネガティブな印象を残すだろう。
また会場を出るのにも一苦労だ。15分ほどかけて脱出して、SANADAという会場に向かった。ダボス会議の各会場は、都市名等によってネーミングされていた。ダボスは真田町(現上田市に合併)と姉妹都市を結んでいるから、SANADAという会場がある。世界のリーダーがSANADAという名前を覚えることになる。
このSANADAにも長蛇の列ができていた。理由は、「気候アポカリプスを避ける」という刺激的なタイトルのセッションが開かれ、冒頭にグレタ・トゥーンベリさんが登壇するからだ。事前登録が必要なので、秘書に頼み真っ先に申し込んでもらった。外は事前登録できなかった方々の長蛇の列だ。一方SANADAの中では、グレタさんが目の前で待機している。
定刻となりグレタさん登壇。10代の女性が強い口調で、大人のグローバルリーダーを叱りつけている構図だ。「今すぐ全ての化石燃料の使用をやめよ!虚しい議論は結果が出ないと意味がない。今すぐCO2の排出をなくせ。ZERO排出はあたりまえだ。むしろ今まで排出したCO2を回収せよ。私の世代は諦めることはない」。
グレタさんの登壇は対談も質疑応答もなく終わった。そして、叱りつけられた格好の大人達のパネル討論へ。だが、正直言ってがっかりした。大体以下の構図に分かれていると分析した。
・警鐘を鳴らし、何もしないことを叱りつける役割の人(ただし解決策を出さない)
・他に責任転嫁して(アメリカがやっていない等)、やらない理由を列挙する人
・ビジネスパーソンとしてやれることだけ最低限行い、満足している人
・自らは実行しないけど、最もらしく再生エネなどの解決策を提示する財団の人
ただ、最も憤りを感じるのは、原発の議論が出てこないことだ。CO2が問題ならば、CO2削減の最も現実的な解決策である原発を強く提唱すべきだ。僕は、オンラインで質問をした(発言形式でなかったので)。だが「技術のことがわからない」と逃げられ、論点をすり換えられ、「核のゴミの問題があるから」と言われた。地球環境の敵であるCO2を本気で解決する気があるのか、と強い憤りを感じた。
気を取り直して、「ステークホルダー資本主義:長期的経営のために」というセッションに参加した。GPIFの水野弘道CIOが登壇している。他には、AIGのCEO、コロンビアロースクールの教授。モデレータは、Financial Timesのジリアン・テット氏。昨年、米国経営者が「ステークホルダー資本主義」を提唱し始めたことにより、注目を浴びている。
この「ステークホルダー資本主義」は、クラウス・シュワブ氏が25年前に日本でインスパイアされてつくられたコンセプトであるとも言われている。つまり、日本では「三方よし」の思想で経営されてきたから、何ら新しいコンセプトではない。しかし、水野さんは英語が流暢だしロジカルなのが素晴らしい。
ダボスは夜になった。ダボスの夜はエネルギーに溢れ、熱い。ダボス2日目の夜は、ハーバードナイトから始めることにした。エチオピアの友人と会ったので、とりあえずパチリ(それ以降はプライベートなので写真は自粛)。その次に向かったのが、バーレーンの皇太子が主催する夕食会。世界各国のロイヤルファミリーが集結している感じだ。
3軒目がワインフォーラム。ホテルヨーロッパの2階でくり広げられるワインを媒介にしたパーティは、熱気に溢れている。
そして最後に向かったのがホテルベルベドールで開催されたフォーブズナイトだ。スティーブ・フォーブズ氏自らが最初から最後まで入り口に立ち続け、来客者一人ひとりと握手で挨拶する姿はとても印象的だ。
ダボスの夜で、ネットワーキングして意見交換する。ここで世界の政治や経済が動くこともあると思う。いつも残念に思うのが、この夜のネットワーキングでは日本人とは、ほとんど会わないことだ。世界の最先端の場に飛び込まないとね。
そして、疲れ切って部屋に戻り、服&ブーツを脱ぎ、シャワーを浴びる至福の時を迎える。ダボスに着いてからまだ1泊しか経っていないのが信じられないほど、充実した時間を過ごしている。
明日も登壇がある。中東&米国外交等に関するセッションもある。ゴーン事件についての世界的世論を変えるためにキーパーソンにアポ入れした。夜にジャパンナイトもある。
明日に控えて、充電することにしよう。
2020年1月21日
ダボスにて
堀義人
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※サムネイル写真の出典:World Economic Forum