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ミクシィCFOからメルカリ社長へ!小泉文明氏が語る「メルカリ経営哲学」とは?

投稿日:2020/01/04更新日:2021/07/08

本記事は、G-STARTUPセミナー(株式会社メルカリ取締役社長兼COO小泉文明氏 *現:取締役会長)の内容を書き起こしたものです(前編)。

今野穣氏(以下、敬称略):今日は、起業はしたことはないけれども日本で最も実績を残している、ベンチャーのプロ経営者である小泉さんにいろいろとお話を伺っていきます。最初、大和証券からミクシィに入ったきっかけは、どんなことだったのですか。

小泉文明氏(以下、敬称略):私は大学生の頃はアルバイトもしたことがなく、転売をしていたのです。裏原ファッション世代で、ずっと転売で稼いでいて、大学を卒業するときに、これをビジネスにしても、大きなビジネスにならないなと思っていて。それに当時は今より起業が難しかったじゃないですか。だから、一回お金の勉強をしようかなと。それで投資銀行に入りたいと思ったのですが、大学にまじめに通っていないので英語ができない。日系投資銀行で採用していたのが、当時大和証券だけだったので、大和を第一希望で行って、見事通って。そこでIPO部門を希望しました。なぜなら自分が将来そういうのをやろうと思っていたから。

今野:最初から決まっていたのですね。

小泉:ある程度決まっていました。第2希望は事業再生部門でしたが、経営者寄りでありたいなと。僕はずっとネットで転売をしていたので、会社では「おまえインターネット詳しいな」ということで、ネット企業を担当していました。最初にやったのはモバイルコンテンツの企業。着メロ、着うた、あの辺の銘柄をいくつか担当しました。2年目で担当したのがDeNAさん。3年目でミクシィ。同じ時期にやっていたのはオイシックスさんとか、あといくつかありました。そういうのを担当しながらも、一方で、大企業なので子会社の上場案件もあり、最後はある会社の民営化を担当していました。10年かけて10兆円のプロジェクトで、平社員で唯一その40人ぐらいの部署に選ばれて「おまえ、出世コースだな」と。

でも私はその瞬間に「これはもう潮時だな。これを10年やっても・・・」と。一応最初の1カ月はやってみたのですけれども、誰がやっても一緒という仕事をしていたし、ミクシィに来てほしいとずっと言われていたので。

偶然の出会いで大和証券からミクシィへ

今野:なぜミクシィを選んだのですか?

小泉:当時、ミクシィは違う証券会社で上場準備(編注:当時の社名はイー・マーキュリーでSNS「mixi」が主事業ではなかった)をしていたのです。Find Job!という人材紹介サイトで利益も出ていて、上場準備もかなり進んでいました。そこにミクシィを立ち上げたのですが、その証券会社は「出会い系のようなサービスをやらないでください」と。

今野:当時のSNSは、出会い系に近かったですからね。

小泉:「出会い系だと審査が通らないからやめてくれ」と。私はそのタイミングで偶然、笠原健治さん(ミクシィ創業者)と知り合ったのです。本当に偶然です。

今野:どういうところで出会ったのですか?

小泉:彼は東大卒なのですが、大和証券の先輩が東大で、そのつながりで最初は同じく東大卒の取締役の塚田さんを紹介されました。面白いインターネットの会社があるからと紹介され、会いに行った時が、mixi(SNS事業)の立ち上げ直後ぐらいでした。

今野:ミクシィは笠原さんだけいたのですか。

小泉:別の人材事業で15人くらいいたのですが、mixi事業はまだ数人とかでやっていました。まだほんとに立ち上げです。でもSNSはすごく面白いなと思って話を聞きに行きました。そして、ある週末に「世界初のSNSの上場」という提案書を100枚ぐらいつくりました。当時のエクイティストーリーは、「SNSがインターネットのプラットフォームになる。一人1ID持つぐらいになる。その上にのるサービスを、IPOをした資金でM&Aで買っていって、SNSを中心とした経済圏をつくりましょう」と。その提案書を持っていきました。ですから、証券会社の選び方を間違うと、本当に潰されていたという。私からするとその後に事業が一気に上がっていくので、自分の仮説も正しかったし、週3回ぐらいミクシィにいました。

今野:そういう意味では、起業家からして証券会社や担当の選び方のコツはありますか?

小泉:最初のエクイティストーリーをどう書いてくるかで、だいたいセンスは分かります。バリュエーションはその後いくらでも何とかなる。

今野:会社を理解しているか、どういう成長を描きたいか、同じ船に乗れるかみたいなところですね。

小泉:だから笠原さんが、自分達より大きなビッグピクチャーを描いてきたというところで評価してくれました。

今野:小泉さんが入って何年後に上場したのですか?

小泉:私は上場直後に入っているのです。上場までは自分は証券会社の社員として、一応責任を果たさないといけないので。でも上場して2カ月目ぐらいには入社していましたね。当時は、大学などでは先生たちが「授業中みんなオレンジの画面(当時のmixiのUI)を見て授業を聞いていない」というクレームをしてくるくらい人気でした。今メルカリでさえマンスリーのアクティブユーザー数は1,400万人ですよ。当時mixiで一番多い時は3,000万人くらいなので。それからすると、今のメルカリは、MAUで当時のミクシィに追いついていないのです。

フェイスブック登場後のミクシィの内部状況

今野:という素晴らしいエントリーはしたものの、ちょっと時間は飛びますが、結果的にフェイスブックがやってきて、私も当時ベンチャーというのは確定されたことは本当にないのだなと思ったのですが、当時の内部の状況はどんな感じだったのでしょうか?

小泉:結論から言うと、フェイスブックに負けたという感覚はあまりないのです。ベンチャーは他社との競争に負けたと言うのですが、大体が自らの戦略を取り違えているのです。他社の戦略を過剰に気にして、自分たちの戦略をミスるということがあります。

今野:SNSに2本目の柱みたいなのは考えなかったのですか?例えばコマースとか。

小泉:事業が違うと、いる人材のスペシャリティが合わないというか。当時の私たちは経営体力がそんなになかったですね。

今野:その後、愛したミクシィを去るわけですが、どういうきっかけで去ることにしたのですか?

小泉:私が30歳くらいのとき、ありがたいことに会社にどんどん優秀な社員が増えてくるわけです。「なんかこれ、自分じゃなくてもいいな」と。もう一度自分にしかできないことをやりたいなと思ったのです。でも上場企業の役員というのは責任のある立場なので、どうしようかと悩んだのですけれども、1年悩んでやっぱり辞めようということで、30歳の時に辞めることを決意しました。実際辞めたのはその1年後です。

今野:社長としては、小泉さんみたいなすごく優秀な人が採れて、5年やってもらったと。未来永劫いてもらうことを考えるべきなのか、ステージによって入れ替えるのか、逆の立場だとどうするのがいいですか。今のメルカリでもそうかもしれないですけれども。

小泉:そういう意味ではどっちもYESです。事業のサイズや組織のサイズによって必要なスペシャリティは違うので、替えるべきだと思います。一方で辞めてもらっていいかというと、「0→1が強い人」と「1→100が強い人」というのは別の能力なので、次のタネがあるんだったら、それを自分たちの事業の中で渡していけるような感じが、私はすごく大事だと思うんです。

私は今、鹿島アントラーズの経営をやっていますけれども、もともと私は大きいサイズよりは、小さい事業を大きくするほうが得意で、そっちのほうが向いているというのがあるので、今回のケースはM&Aをして、自分の得意なサイズの会社をまた経営している印象を持っています。

ミクシィを辞めて2年間のニート生活

今野:ミクシィを辞めた後の2年間はどうだったのですか?

小泉:最初の1年はもう疲れきっていたという感じです。20代は夏休みも一回も取ったことがないし、ほとんど仕事をしていたので、夜の飲み会はほとんど行っていなかったし、結構燃え尽きたという感じです。燃え尽きて働く気もなくなりました。「とりあえずボーとしたい」と。

今野:それで、メルカリにはなぜジョインしたのですか?

小泉:ニート生活の時、アカツキ、ラクスル、フリークアウトとか、まだ社員が10人いない会社もありましたが、そういう会社の社外役員をやらせてもらっていました。それで、徐々に「スタートアップって楽しいな」という思いがよみがえり、またやりたいなと。そのとき、自分は何をやりたいのかなと思ったら、やっぱりコンシューマインターネットをやりたい。ミクシィを超えるサービスをやりたいとずっと思っていたのです。

フリマ自体は、私はCtoCのモデルとしては絶対に大きなプラットフォームになると思っていました。ある時、進太郎さん(山田進太郎氏、メルカリ創業者)に久しぶりに会って、今みたいな話をしたら「じゃあうちでやろうよ」と。じゃあ私もそろそろ2年たつし働こうかなと思い、メルカリに入りました。進太郎さんは私がすぐに入社を決めたので「めっちゃ早く決めてびびった」と言っていました。

今野:進太郎さんの採用への情熱ってどんな感じなのですか?何がすごいのか?

小泉:彼もそうですし、スタートアップの成功している経営者全員に言えると思うのですけれども、手数が多いですね。例えば私だと毎日午後3時から3時半ぐらいのFacebookは意識して見るようにしています。上場企業の役員陣は、みんな株式市場が閉まった後にだいたい退職をSNSなどにポストするのですよ。一番最初に「ご飯食べに行こうよ」というのが、超大事です。

今野:分刻みということですね。

小泉:あれは「早さ」が大事なのですよ。他人に評価されるのは、人間はすごくうれしい。なので、一番最初に「ご飯行きましょう」というのがすごく大事です。私はその辺の時間帯をいつも意識して見ています。誰か辞めないかなみたいな。取り合いですよ、これは。

今野:例えばメルカリの小泉さんだと、もう名前が知られていて、最初に声を掛けられた人も「おっ」と思うのだけれども、名前も知られていないベンチャーの起業家がキーマンを採用するコツは何かありますか?

小泉:手数はもちろん大事なのと、あとは自分たちの魅力をちゃんと語れるようなピッチや資料などを合わせて送っていくといいと思います。もしくは今野さんをはじめとした、自分たちに近しい投資家を経由して信用補完をしてもらうと。私も2年間、たくさんいろいろな会社から誘われたのですけども、誘われればうれしいものですよ。名もないベンチャーでも結構会ってくれると思いますよ。

今野:そこからいろいろあって、5~6年ぐらいで3000億の会社にしたわけですが、一番しんどかったところとか、ブレイクスルーしたところはどんなところでしたか?

高い目標設定をして自分をとことん追い込む

小泉:東京でカスタマーサポートを全部するのは無理だと思い、CMをやる1カ月前に仙台に80人入るカスタマーサポート拠点をつくりました。でも3人しか応募がこないのです。まだ全然メルカリが有名じゃないから。やっぱり最初は信用がなければなかなか進まないので。お金は何とか調達できたので、使っていこうとするのですけれども、そこはもう必死でしたね。

今野:そこをどう乗り越えるのですか?

小泉:最初はだいたい全部一人でやっているので、自分を追い込むため、「これをやらないと本当にやばい」というレベルを自分に設定していました。例えば1か月で数億円を使うようなCM制作の場合、もう絶対にミスできないじゃないですか。これを自分で置いてしまうのです。そうすると、これに耐えられないといけないので。自分の能力に期待していつつも、怖いから焦るじゃないですか。必死に自分が知恵を絞ってというのをひたすら続けて。最初の半年間ぐらいはお酒もやめて、ひたすら仕事をしました。CMだけでなくカスタマーサポート拠点の新設だったり、ヤマトさんとのメルカリ便の交渉だったり。

今野:高めな自分のOKR(Objectives and Key Results)を課していたと。

小泉:課して、とことん自分を追い込んでいくということをしていましたね。これは中途半端な目標にすると、何となく「これでいいかな」となってしまうのです。本当にここを超えなければいけないと思うと、真剣に考えますよね。

例えば、メルカリの初期の頃のCM。メルカリは「メルカリ♪」という高い音だけれども、あの音は50パターンぐらいつくっているのです。あれは、まだメルカリが知られていない頃、いろいろな年代と性別の人に聞いてもらって、あれが聞き取れるか聞き取れないかのギリギリのラインを攻めているのです。ちょっと音に違和感があるじゃないですか。

今野:「今の何?」と思われるようにすると。

小泉:あれは、40代以上の男性は「メルカリ♪」とは聞けない人もいたのです。モスキート音みたいな感じで。今は慣れているからみんな聞けますけど、当時は「メリカリ」とか。

今野:アテンションを引くためにあえて曖昧にしたと。

小泉:違和感はあるけどギリギリ聞き取れるところを攻めたのです。そのために、関係してくれている会社の人たちを巻き込んで、めちゃめちゃ聞いてもらったりして、泥臭いこともたくさんやったという感じですね。

ミクシィから学んだ「ミッション」「バリュー」の大切さ

今野:組織に入ってからのマネジメントのコツみたいなのは、ミクシィでの学びをインストールしていると聞いたことがあるのですけれども、どんなことですか?

小泉:ミッションとかバリューのような自分たちの軸をまず置くことですね。メルカリのミッション、バリューは私が入った時、社員が10人の頃につくりました。それらは別に変わってもいいんですよ。変わってもいいのですけれども、まず今の事業で今の会社はどういう未来を描いていて、どうコミットメントしているのかというミッションと、それを達成するために必要なバリュー、ここが紐付いていないと。バリューが経営者個人の価値観みたいになってしまうと駄目です。そのミッションを達成するためのバリュー。これはすごく大事な関係性です。このバリューがあるから採用基準であるとか、採用した社員の評価の基準ができてくるわけですね。

私がミクシィにいた頃、ミッションやバリューはもちろんあったのですけれども、ちゃんと社員に共有をやっていなかったので、社員がそれぞれに理想のミクシィ像を語り出すのですよ。要は、サービスが会社のカルチャーのベースになっていて、あまり自分たちの会社を言語化していなかったので、そうすると理想のミクシィ像を語り出しちゃってバラバラになる。だから次の会社に行くときは、最初にミッションとかバリューをしっかり定義付けようと思いました。その定義に基づいて、OKRでパフォーマンスの評価と、バリューという定性的な評価、そして3カ月で高速で回そうというのを10人の頃に導入していった感じです。

採用の面談も、全部バリューに紐付けたコメントや点数をつけるようにしていきました。全てにバリューを入れていく。自分たちをブランディングして、一番欲しい人が最少人数で来てもらうのが一番いいかなと思って、それで外に情報発信もやっていました。「メルカン」というオウンドメディアをつくったのもそうです。そうすると何が起きるかというと、確かに応募者も理解するのですけれども、一番は、中のメンバーたちが「自分たちはこういう会社なんだ」ということが分かるのですよ。

今野:今、メルペイ、海外展開、アントラーズと、2本目3本目の柱をつくりにいっていると思うのですが、次の柱を起業家はいつ頃から考えたらいいのでしょうか?

小泉:私たちは基本的にはいつでも考えてますし、新規事業はいくつも始めて来ましたが、注力すべきタイミングでは結構新規事業を閉じたりして、フォーカスするようにしています。

事業に人を紐付けるのではなく、会社に人を紐付ける

今野:そういう意味では、新規事業というか、トライアルを割と早く閉じる。知名度もそれなりにあるけれども、早く閉じるみたいなこともあるのですか?その辺の判断というのはどういうふうにしているのでしょうか?

小泉:「事業はそんなに簡単に成功しない」という思いがベースにはあります。だいたい失敗します。なので、当たったらラッキーというと社員はかわいそうですけれども、ある程度「そんなにうまくいかないよね」という前提でやっているので。初速を見たらだいたい分かるじゃないですか。自分は時間という、社員の人生の一部を預かっている身なので、そんなにうまくいかないと分かっている事業に時間を割くのは社員に失礼なので早めに閉じると。

今野:例えば、海外だと新規事業の一つのプロジェクトのようなサイズから始めたりするときに、「初速で分かる」というのは、どういうことなのでしょうか?例えば同じドメインでも違うサービスにするとか、場合によってはピボットするということもあり得るじゃないですか?何を見て判断すればいいですか?

小泉:私が大事にしているのは、事業に人を紐付けるのではなく、会社に人を紐付けさせていることなのです。「メルカリという会社のミッションやバリューが好き、この会社で働くことが価値がある」と思ってみんな働いているので、新規事業を急に閉じても、社員が全然辞めないのですよ。事業に紐付けさせていないので。そうすると、KPIを見て、僕らがある意味冷徹に「これは絶対いかないね」と。本人たちは多少いけると思っている人もいるのですけれども、うっすら立ち上がりがきついなと思っているわけですね。そのときにズバッとやっても、事業ではなく会社に帰属する意識をもっているので、社内で次のチャレンジで頑張ろうとしてくれる。

今野:初速のときの何か数値とかを置くのですか?

小泉:置きますが、正直それだけ見ても、分からないじゃないですか。なので、結構そこはもう、私たちの会社は起業家が多いので、みんなでこれがいけるかいけないかという議論をしていくという感じですかね。そんなに決まった数値でバッサリ切らないです。ただ一応、このくらいかなというのは一応置くのですが、最後はかんかんがくがくやりますね。

今野:事業をやったことがない人はどうすればいいでしょうね?彼らの目線に立った場合、当たり前だけど最初のステージは、事業と自分がほぼ同一化するじゃないですか。目を向けたくない事実も含めて、ずっと信じていくということも多い中で、そうやって早めにジャッジしたほうが、逆に成功はあるかもしれないと。

小泉:これは事業の特性によって違うのですけれども、特にコンシューマ系のサービスの会社では、DAU(Daily Active User)でも、メルカリでいえば出品数でも、何かしらの先行指標が毎日0.1%でもいいから積みあがっていれば続けていいという考え方です。ただ逆にいうと、ダウントレンドになったときのC向けのサービスはほんとにきついので、そこをリカバーするのは本当にハードだなと思っていて、常に0.1%でもいいから上がる。そこだけですかね。

成功する起業家の共通点は「素直さ」「優秀なナンバー2・ナンバー3」

今野:小泉さんはエンジェルとしてもかなり成功確率が高いです。

小泉:一応私が社外役員をやった会社は、9社中8社が上場したのです。

今野:すごい。VCやったらいいじゃないですか(笑)。

小泉:ラクスルとかアカツキとかは初期の初期で。ラクスルなんてマンションの一室でしたし、アカツキもすごく小さかったし。

今野:そのときに、共通する成功する起業家のポイントって何かありますか?

小泉:「素直さ」です。基本的には、自分たちのやっていることを信じているし、それが頑固さにつながるのか、素直さかで全然違っていて。他人の意見を聞くもそうですけど、素直さみたいなところがある人というのは、学んでいきますよね。頑固な子は、言っても聞いてくれないし、聞く耳を持たないから。そうするとどんどんその人の頭の中の選択肢がなくなるのですよ。私は、経営というのは結局、選択肢をどうやって増やすかだと思っています。「素直さ」以外で言えば、2つ目はやっぱり「ナンバー2・ナンバー3」の存在です。

今野:どういう人が集まってくるかということ?

小泉:スタートアップは、一人ではできないです。ナンバー2とナンバー3が優秀な会社が、基本的には絶対に成功するのですね。取り戦略が圧倒的に増えるので。私と進太郎さんや笠原さん(ミクシィ創業者)は真逆なのです。タイプも強みも、何もかもが真逆。僕は真逆だからやっているのですよ。真逆の人とやると、会社の取る手は圧倒的に広がるので。同じタイプの人は心地いいのですけれども、やっても成功する気はしないんです。

今野:いいナンバー2ナンバー3を採るコツとは?

小泉:自分をちゃんと客観的に分析し、自分に足りないところをナンバー2ナンバー3が埋められるかどうかです。信じているミッションは一緒なのです。ただ登り方が違うのです。社長は自分と同じことを考えている人が心地いいから、採ってしまいがちなのですけれども、それは全然会社が強くならないです。ミッションはちゃんと一緒に見なければいけない。高い山はここだと。ただ、考え方とか強みは全く逆の人を採っていかないと、取る手が全然広がらないので。それは人件費の無駄ですからね。これは怖いのですよ。自分とタイプが違うので、この人を本当に信じていいのかと。でもそれはコミュニケーションをしていく中で、それを見つけないといけないですね。進太郎さんとは強みが真逆だから一緒にやろうと思いました。

あと、人(採用)の問題というのは、1日たてばたつほど雪だるま式に問題化するので、早めにやったほうがいいです。でも人の問題は基本的にすごく嫌なので、みんな目を背けるのですが、私なんかは特に何となく「まずそうだ」と思ったら、一番先に入っていきます。私が心の中で思っているのは、スタートアップをやっていて「いいな」と思ったものは、だいたいそのとおりにならないです。「やばいな」と思ったことはだいたいやばいようになります。「まずい」と思っている直感は絶対当たりますからね。だから「まずい」と思った瞬間に目を背けないことですね。(後編に続く)

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