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アクセラレーションプログラムは恋愛と一緒、想いとギブとテイクを具体的に伝える

投稿日:2019/09/19更新日:2021/10/26

本記事は、先日グロービス経営大学院東京校で行われたセミナー「あらたな価値で、あたらしい未来を!三菱電機アクセラレーションプログラム説明会」の内容を書き起こしたものです。(全2回 前編)

大企業はギブとテイクが苦手、相手は金星人と思え

難波:最初にスタートアップの目線から、大企業との協業の難所や、大企業がどうあってほしいかをお伺いできればと思います。

岩佐:私は今、大企業側半分、スタートアップ側半分の非常に微妙な立場で座っています(※)。基本、ほとんどうまくいかないっていう前提から入ったほうがいいと思っていて。

日本の大企業はお金だけでなく情報やアイデアのギブがすごく苦手です。スタートアップに何かをちょっとギブしたところで、たとえば三菱電機が潰れたり大きな不利益を被ることはないから「出せばいいじゃん、そんな資料」って思うんですけど。「いや、これはちょっと」みたいな。一方で「本当のところ何が欲しいの?」と聞くのも苦手。つまり、ギブとテイクを可視化するのがすごく苦手なんです。

スタートアップ同士で話をすると、「何欲しいですか」「金に決まってるじゃん」「じゃあ金払うからやってよ」とか「技術が欲しいんですよ」「じゃあ技術渡すからこういうふうにやろうか」って話にすぐなる。みんな忙しいのと、ストレートに物言う人が比較的多いので。

大企業の場合は、「この情報を出したら誰かに怒られるかもしれない」「誰の確認取ったらこれ出していいの?」となるのはわかる。上司の上司ぐらいの所長とか役員に許可を取ると、「知らない奴になんでこの情報渡すんだ」みたいになったりして。

だから、ぜひスタートアップの方は大企業に「何が欲しいんですか?」「何をくれるんですか?」って聞いてほしい。大企業のほうも「私はこれが欲しい」「これならあげられる」って言って欲しい。具体的に「あれもこれももらえるんですか?」って言うと、「それはちょっと」となる方が多いので。「出せるもの」「出せないもの」「出したいもの」「欲しいもの」をお互いに最初のフェーズで明確化すると、成功確率が高まるかなと思います。

あと、「相手は金星人だと思ってください」と、よく言ってます。姿形も違うし、話す言語もわからない。それぐらい差があると思ってアプローチをすると、そんなにずれない。何かあったときに「金星人だからな」みたいな。どっちがどっちを見てもですよ。そこをお互いリスペクトするというか、違うものなんだからしょうがないというか。

例えばアメリカ人に対して「なんで箸が使えないんだ」って思わないじゃないですか。箸を普段使わないんだから使えないよねという前提で「じゃあフォーク用意しようか」っていう話をしていくと思うんですけど。それはどっちから見てもあると思いますね。

あと1点、PoC(概念実証)を外注するアプローチとの違いを、大企業側では明確にしとかなきゃいけないと思っていて。スタートアップ側としてはそんな温度感をちょっとでも感じ取ったら「いやいや、別に僕らPoCの外注を受けに来たんじゃないんですよ」って話はバシッとしたほうがいいかなと思う。

※岩佐氏はパナソニックを経て起業。スタートアップ経営の傍ら、現在はパナソニックの新規事業に協力もしています

合わないなら、思い切って切る

武樋:私も以前、日立製作所にいまして。ハンコリレーの一番下っ端にいて、今はスタートアップをやってる人間でもあります。直近も大企業様との協業やアクセラを何個も入らせていただいているので、その辺もお話できればと思います。

特にスタートアップ側は自分から行かないとダメなんです。スタートアップ側から「こうしたいんです」って言って、それがアクセラの相手側の企業が「じゃあいいですね」ってなったときに、そこが最低ラインだと思ったらよくて。

お互いに実績も欲しいと思うんですね。スタートアップとしては、「大企業と一緒にやりました」と言うと資金調達しやすいだろうみたいな思いもあると思うんですけど。それをやってもうまくいかないですし、そこでできた物や実績って何の役にも立ちません。

であれば本当に身になるものにしたいっていう思いをぶつけて、相手の企業も「それがいいよね」ってなったときに、ようやくシナジーの一番の最低ラインまで行けたぐらいの思いでやったほうがいいのかなとは思います。

大企業のほうもPoCを外注するではなくて、単純にギブしていくみたいな思いを持って臨んでほしいなと思います。そこを一緒にやることによって、ようやくオープンイノベーションや新しい改革が起きると思っているので。

スタートアップ側は合わなそうだったら自分から切っていくぐらいのスタイルで、「合わないですね」「じゃあ別のとこでやります」といって別れるぐらいの潔さでやっていったほうが、お互い精神的にもいいとは思います。それぐらいの思いでぶつかって関係性築いていかないと、いいものは絶対生まれません。

岩佐:恋愛に例えられますよね。好きでもないけどズルズル付き合うと、だいたいいいことない。

武樋:そうですね。大企業の人は「1000万円ちょっと溶かしました」って言っても死にはしないけど、スタートアップは、会社が死んじゃうんですよね。1000万円や1日1日にすごく重みがあって、大事なんです。だから大企業の人に提案して「持ち帰って検討しますね」って言われて、3日後また「ちょっと、上司が捕まらなくて」って言われて、週明け連絡しても「まだ」みたいな。それだとスタートアップは終わっちゃうんですよ。そこは大企業の人もわかってもらいたい。

スタートアップ側も、向こうが金星人だと思って接してあげないと、イライラしても仕方がないので。種族も種別も違うような人と一緒に何かやることがアクセラという場だと思う。だからこそお互い思いをぶつけあって折り合って、何とかスタートラインに立つんだという思いで臨んでいただくのが成功の秘訣だと思います。

同じ事業が成長し続けることはあり得ない

難波:お2人の話を聞いて、高田さんはどう思いましたか。

高田:まずギブもテイクも苦手っていう話は、その通りだと思います。大企業というか、特に総合電機メーカーは事業ラインが広く、自前主義でやってきたというところも当然あります。社内の研究所に1000人以上が働いている状況なので、外のスタートアップと協業することに対して、技術汚染を非常に気にするところがあります。

ハンコリレーに関連して言うと、最近は電子承認もありますが、電子化されただけでやってることはあまり変わらないです。書類をメールで送るだけでも、場合によっては上長の承認がいることもあります。そういう風土は残っているけれど、それらを短縮してみなさんからの要求にできるだけ早く応えていこうとしています。たとえば、ハンコの数を減らすといった改革もやりつつあります。それがスタートアップのみなさんにとっても死活問題だということを、我々運営する側は肝に銘じてやらないといけないと思ってます。

それと、あまり他人行儀にならないようにしないといけないと思っています。「一緒にやるんだ」ということを前面に押し出してやりますので、もし気になるところがあったら、遠慮なく言っていただきたい。我々も直せるところは直していかないといけない、という思いを持っています。

実は、今、名古屋製作所の風土改革をやろうとしています。これまで自前主義中心でやってきて、業績もけっこういいので、みんな今の事業に満足しているところがあります。ただ、これから10年、20年、30年、50年も同じ事業が今のまま成長し続けるなんてことは、基本的にあり得ません。

ジェフ・ベゾスは「アマゾンはいつか潰れる」「企業の寿命はせいぜい30年」「100年持つ企業はない」ということを言ったらしいんです。最近、その言葉を引用して社内で話をしました。我々は100年企業ではありますが、そういう危機意識を持っているメンバーがいないと、企業はこの先事業を継続していくことは難しいと思います。新しい事業を創っていくDNAを名古屋製作所のメンバーは持っていると思うので、それをもう1度出してやっていきたいという思いで、今いろんな活動をやってます。

たとえば、社内にイノベーションエリアというオープンスペースを作って、いろんなゲストを呼んで話をしていただいているんですが、100名以上が集まって入りきれないこともあります。他にも、社内で第1回名古屋製作所アイデアコンテストっていうのをやったところ、50件くらいあればいいかなと思っていたら、200件以上応募があったんです。

我々の中にもこれまでのやり方を変えていかないといけないっていう思いがあるし、それをますます醸成していかないといけないと思っています。そういったメンバーをぜひ今後のスタートアップのみなさんとの協業に駆り出して、一緒にやらせていただければと思っております。

大企業もスタートアップも、具体的に話す

難波:大企業がスタートアップのみなさんたちと一緒にやっていくっていうのは、気持ちはあってもなかなか難しいところがあると思います。スタートアップはそういう大企業をどう動かして、どう利用していけばよいのか。企業側は、スタートアップとの協業を成功させるために、どういう心構えでいるのが必要か。長島さんのご意見を伺えればと思います。

長島:前半のアクセラレーションプログラムの進め方のプレゼンテーションから見ていて感じたことを、ちょっとだけまず話させてください。おそらくここに集まってくださった方は、自分のやりたいことがあって、俺はこれで食っていくぞという思いを持った方が多いと思うんですね。熱量を持って、自分の技術なりノウハウなり能力なりを使って何かできないかなと探しに来られている方々だと。

いろんなリソースの話などありましたが、三菱電機側の熱量がどのぐらい伝わったのか、私の中で気になっていまして。熱量って「これをやりたい」っていうのがないと、なかなか伝わらないんですよね。だから、「おやおや?」ってみなさん思ったかもしれないなって。

ただ先ほど社内のアイデアコンテストの話出ましたよね。社内で50件ぐらいかと思ったら200件あった。かつそれをやりたいっていう人が出てきてくれるって話もありました。おそらくその200件の具体的なテーマを聞かせてってみなさん思ってますよね。それがあったら一気に話が進むと思うんですよね。

これ初のお見合いの場なんですけど、探り合ってるだけだと、大抵何も起きなくて、「ちょっと合わなかったかな」ってなりますよね。少し自分を出してみたときに、相手がそれに反応してくれたら自分も出してみたいな。それがあると続きます。簡単に言うと失敗するとそこで終わるんですけど。でも、ズルズルやるより絶対いいですよね。そこの流れを変えたいなって思いました。

あとこれたぶんこれは両方に言えることなんですが、今日集まった方の中で、大企業の人たちとこういう場でもなくオフィシャルな会社訪問でもなく普通のその辺の飲み会で話したことがある方って、どのぐらいいるか。逆に大企業の方が仕事とは関係なしにスタートアップの人と会って飲みながらグチ聞いてやったことがあるか。

男女の付き合いでも、たぶんお見合いだけ頑張ってる人ってダメなんですよね。日常でいろいろ探りを入れながら「こうなったらこう行こう」と思考を回す。そういう行動が両方に必要なんですよね。おそらく今日からみなさん「よし、飲み会に行くぞ」と動き始めてくださると思うんですけれども。お互いの日常がわかると全然変わるんですね。ビジネスの話をしてるときは建前があるんでうまくいかないんですけど、相手を知ろうということをお互いにやり始めると前に進むのかなと。

最後に、何をアクセラレートするんだろうかということについて考えてみましょう。いろんな捉え方があります。例えばよりたくさんの経験を積む。例えばオープンイノベーションみたいな。そういう話なのか。それともスタートアップの支援をしたい。それとも世の中に新しい価値をたくさん産みたいのか。たぶん3番目が一番正しいんですよね。お互いにやりたいことを持ち合ってぶつけ合うと。そういう形でぜひ進めていただければなと思いました。

難波:すごく具体的なアドバイスでしたね。お見合いでただ鼻息が荒いだけだと、気持ち悪いだけで終わってしまう。ちゃんと具体的に話をしないといけないですよね。日常を知るってことで言うと、月の食費はいくらぐらいで、春夏の旅行にはどのぐらい使うのかとか、関心事はそれぞれ違いますよね。岩佐さん・武樋さん、相手の手の内の何が大事で、何を知りたいでしょうか。

武樋:思いが一緒かどうかっていうところです。自分たちはそこだけでしたね。基本思いが一緒だったら、お互い一緒にいると楽しいです。これが別々だと、何か困難があったらすぐ別れてしまう。目指す先が一緒かどうか。そこが一番大事であり、そこだけでいいと思っていますね。

岩佐:僕は意外とストイック派なんで、目指すところは何でもいいんですよ。ただ利害は一致してなきゃいけないと思っていて。「お金を持ってる人と結婚したい」っていう人と「お金はあり余ってる」っていう人が一緒になって、どっちも旅が好きで100ヶ国行こうとなればすごくいいじゃないですか。一方で、目指すところは一緒でも、お金はあるけど時間がないとか、利害関係がカチッとはまらないこともある。特に大企業・スタートアップってそういうところがあると思って。

武樋:そうですね。結局企業として活動してるんで、最終的にはお金稼がないといけないですし、事業としてサステナブルに継続させていかなきゃいけない。そういう利害が一致した上で、思い一緒じゃないと。スタートアップは、思いが一緒だからこそ一緒にやっていく人たちの集まりでもあって、お金じゃないってところもあるんですけど。外部と組むとなると、利害関係・経済関係が大事になってくると思うんで。

思いをどう伝え、形にするか

難波:「思い」ってビッグワードだと思うんですよね。その中身を、高田さんは今回どこに揃えていきたいと思っていますか。

高田:Win-Winかなと思います。「大きな企業とやると全部取って潰しちゃうんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、三菱電機は決してそんな会社じゃありません。みなさんから応募いただいて、一緒になって考えて、お互いのメリットが出るような形のものを考えてやっていきたいです。

我々のコーポレートステートメントは「Changes for the Better」で、常により良いものに変わっていく・変革していくという取り組みにつながって、社会なり世界なりを変えていこうという思いで今回もこういったプログラムをやらせていただいていています。

岩佐:正直にストレートに何度も言うことだと思います。大企業の特性として、現場の担当者は思いに共感してるけど、いつの間にか話が変わったり、上の上の役員は全然そうは思ってなかったって話は多い。とはいえ、日本の大企業はある種正直な人が多いので、ストレートに正直に何度も言ってると、「岩佐さんはあれやりたいって毎回言ってるじゃん」みたいな感じで、ジワジワとちゃんと上に上がっていく面もあります。

以前経営していた会社で高級トイを作っていました。例えばですが、そういった商品を大企業とのコラボで作りたいとして、私が「アニメファンの人たちが超喜ぶ高級IoTトイを作りたい。これが夢だ。これしかやらない」みたいなことを言ったとしましょう。初めて話すと、「いいですね」となるんだけど、だんだん「ニッチじゃないか」「そこにマーケットはあるのか」「そんなことに技術を使うのか」ってなっていきます。だけど、毎回正直に最初から何度も言うのは、結構おすすめで。「そこだけはいじっちゃいけない、この人は」ということが、お互い通じるので。

大企業側も、スタートアップの人たちはちゃんと受け止めると思うので、ストレートに言う方がいい。正直に何でも言うのは1つポイントです。

長島:今の高級トイの話で時間がかかったっていうのは、大企業側の人がやりたいことだって思うまでに時間がかかったんだと思うんですよ。新しいものをなるべく早く世に送り出そうっていう趣旨のアクセラレータープログラムにおいても、きっと時間はかかるでしょう。それでも早く出したいんだったら、200個ある三菱電機の社員がやりたいこと、これをバーンと出すと。そうすると少なくとも誰かがやりたいと。そういうやりたいことから始めるのは、アクセラレーターという名にふさわしいのかなと思います。

後編はこちら

※「三菱電機アクセラレーション2019」の応募は終了しました。今後もグロービス・テクノベート・ラボは大手企業とスタートアップのマッチングおよび新規事業計画の共創をお手伝いしていきます

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