アクセラレーションプログラムを上手く回していく仕組みとは?

前回に続き、先日行われたセミナー「あらたな価値で、あたらしい未来を!三菱電機アクセラレーションプログラム説明会」の内容をお伝えします。(全2回 後編)

アクセラレーションプログラムはどう採決して誰と組むべきか?

難波:応募したスタートアップは、三菱電機のどなたが一緒に組んでくれるのかすごく心配だと思います。組んだ相手が「仕事だから」というスタンスだと、熱い思い同士にはなりにくいのかなと思って。その辺の組み合わせは、どう作っていくのでしょうか?

高田:私の部下たちは、たぶん誰がどの担当になっても大丈夫だと思います。本務と兼務の2つの関わり方の人がいて、兼務者を入れると20名ぐらいになります。非常に熱い思いを持ったメンバーで、彼らを中心にスタートアップのみなさんと一緒にブラッシュアップセッション等やっていきたいと思っています。さらに、我々に協力してスタートアップのみなさんと新しい製品とかビジネスモデルを考えたい人に、社内から手を挙げて参加してもらおうと思ってます。手を挙げてくれた人は当然やる気のある人だと思うので、そういう人たちを人選して、ブラッシュアップセッション以降のところで入ってもらおうと企画しています。

難波:自発的な人を集めてくださるっていうことですね。じゃあ、例えばそのスタートアップの方と三菱電機さんの方がミーティングをしますよね。ミーティングごとに報告書を書いて上に出して上からフィードバックが来るような流れでやっていくのか、最後に上がってくるまで上は黙って待ってるという流れなのか。どちらでしょうか?

高田:「上」はたぶん私です。細かいことは嫌いなのであんまり言うつもりはないです。最終的な判断は直属の上長である名古屋製作所所長がやります。所長は私どものグループを去年の4月に作った方で、こういったことをやっていかないとダメだという認識が非常に強い人です。その所長を含む名古屋製作所の幹部を複数人集めて最後のプレゼンテーションやってもらった上で、採択しようと考えています。

そのときまでは、個別に逐一「こんなふうに考えたのでこうやりました」っていう報告をするつもりは特にないです。一次セレクションの段階で「こういったところ選びました」っていうぐらいの報告は上げることにはなると思いますけど。

難波:ありがちなのが、途中で責任のある方がフラッと訪れて、「このプランにこの要素入れてくれないかな」とか口出しして、ガラッと中身が変わってしまうみたいなことです。だから、偉い人が来るとそういうことが起きるんじゃないかとすごく心配です。どの段階で偉い人が関与するのがよいのか。最後まで放置されて、最後に全部が覆るのも心配ですし。その辺ってどう思いますか。

武樋:ちょっと大胆すぎる話かもしれないですけど、全部報告を垂れ流しておいて、「何かどうしても気になるものがあったら言ってきて」と伝えておく。そんなやり方をやっとくと、あとあと文句言われなくて済む。実際、そういうのがありますね。

岩佐:若干違う話になるかもしれないんですけど、1つとあるところでやっていていいなと思う手法があります。合議制をやめる。めちゃくちゃ熱い担当者が1人いて、その1人が熱い1票を入れたらそのまま無条件で通るっていう仕組みです。

例えば長島さんが1票入れました。「なんであれやるんですか?」「実はこんな思いがあって」とかって長島さんが語るわけですよ。他の選択をする人に。そうしたらだんだん「わかった、わかった。それは確かに長島さん、いいわ」みたいに、思いのある人がきちっと説得していくと、みんなが納得するっていうか。だいぶ荒っぽいやり方ですけど。

高田:それって別に選択はロジカルでなくてもいいっていうことですね。

岩佐:そうです。ロジカルでなくてもいい。選ぶ人はちゃんと考えてる人たちなので。たとえば、「ゴルフやらないから、そのサービスわかんないわ」って言う人がいれば、「ゴルフ罵倒しやがって」と熱い思いを3時間でも語る人がいたりします。そういう人が「このゴルフのプロジェクトはすごいいいんだ」と言うと、わからない人は「俺わからんわ。やってくれ」みたいな話になる。それをロジックって言えるんだったら、ロジックかもしれない。

長島:人によって、見えてる世界違うんですよね。何を基準に、どんな事実をどのぐらいの広さで見て、あるいはどのぐらい偏ったものを見ているか、それを元にそれぞれが結論を出してるので。あまりにも違う世界を見てる人同士って、論理的だとはお互いに思えないですね。なので、そのときは、熱い思いを持っている人をちゃんと信じてあげるべきだろうと思います。

スタートアップも大企業も互いに依存しない仕組みが必要

難波:武樋さん、岩佐さん。このアクセラの中で他に心配な点って何かありますか。

岩佐:一般論かつ、どちらかと言うとスタートアップの人側を見た部分の話ですが。スタートアップの人がアクセラレータープログラムに依存しないように、全体を組んでほしいなと思っています。極論、三菱さんがやってくんないんだったら他の手段いっぱいあるよっていう状態がいいです。逆に言うと、三菱さんからしても頼られ過ぎても困るっていうところもあると思うので。

いやいや他の男もいるのよみたいな。2番目もいるのよとか。不貞行為は良くないですけれども例え話の中ではいいじゃないですか。要は一夫多妻制の国もあるわけですから。奥さん3人いるんですよっていう状態を例えば作る。彼氏だとするとすごいわかりやすいですよね。この人に振られたら私の人生終わるみたいな。会社が終わるに置き換えると、従業員もいるしすでに入ってくれてる投資家もいるし、めちゃめちゃ大変なので。

さっきの、途中で上司の人が出てきてガラッと変わりましたみたいなことはありますよ。会社なんで。あるいは、いつまで経っても進まないと、「俺らでやったほうが早かったよね」みたいなときに、スパンと切り替えられると。「嫌ならいいですよ」「来月までできないんだったら僕ら降りますよ」ぐらいで話せる人のほうが、大企業側から見た場合には信頼できるし、いいパートナーになり得る気がするので。だからと言って変な関係では全然なくて。健全な依存しない関係を、ぜひスタートアップ側の人は作ってほしいなと思います。

難波:何でも正直に話すけれども、依存しないっていう感じ?

岩佐:そうですね。だから、一夫多妻制の国だと思ってもらうのはわかりやすくて。2人目の旦那さん、2人目の奥さんがいます、でいいと思っていて。そういう国だと思えば、それって当たり前のことじゃないですか。別に隠す話でもないし。だとすると、三菱電機の人は「俺はお前の一番になるために頑張るぞ」ってたぶん動いてくださるだろうし。うまくいかなさそうと思ったときには、スタートアップってスピード命なので、パチッとスイッチして次に行ける環境は常に持ってほしいし。逆にそれができるスタートアップが望まれてるんだと僕は思うので。そういう関係が望ましいんじゃないかなと思います。

難波:武樋さんはいかがですか。

武樋:自社の話をすると、まさに同じことをやって。某通信会社のアクセラと同時に別の通信会社のアクセラもやっていました。本当に同時期にお声がけをいただいて、採択もされたので、両方フラットにやらせていただきました。目指してるとこは一緒なんですけど、方向は違うようなやり方をさせていただいて進めました。結果的に1社からは出資をいただきました。

岩佐:ちゃんとその後結婚しますと。

武樋:片方と結婚して。とくに今後の活動については縛りはない感じにしてもらってますが、やっぱり他の会社さんから見ると「浮気だよね」って見えちゃうのが、スタートアップ側のつらいとこなんですけど。色ついちゃうっていう。そこは注意したほうがいいかもしれないです。

あとアクセラが失敗したときに査定に響くと、やりにくくなると思う。そこは本当に切り離した考え方を持って進めていただきたいと思ってます。最初に出たように、当たらない前提なんですよね。だけど査定に響くとなると、ヒットを打ってくような感じになる。ホームランを打てないじゃないですか。「結局何も投げなかったよね」ってなりやすいと思うので。だったら「空振りしてもいいよね」っていう風土を作っていただきながら、「ホームラン狙っていこう」みたいな仕組みを大企業側で作っていただけるとうれしいなと思っています。

好きなことをやっているからつらくても大丈夫

難波:会場のみなさまもご質問があれば。

質問者:学生です。3人を見ていて「若いな」と思いました。若く見える理由を教えてください。

長島:若い人と付き合ってるからですかね。スタートアップの人とお付き合いをするのは、正直言うと大変なんですよ。彼らは自分の世界観を持っていて、その世界観と違う人をそんなにおもしろいと思ってくれないわけです。そうなったときに、「自分がやりたいことはこれです」ってことが話せないと、全然相手にもされないんですね。話せれば、その中でスタートアップの人がやれることなどを話してくれる。それがだんだん盛り上がってくると、歳を忘れて夜中まで飲んでしまい、次の日後悔するんですけど。そんな毎日を過ごしてるんで、髪は白くなったけど中身は元気。そんな感じですね。

岩佐:たぶん、楽しいことをやっているからだと思います。スタートアップの経営者ってつらいことが実は多い。人のクビを切ったり、会社の預金が15万円になっちゃった、個人の預金のほうが多いぞみたいなこともよくあります。だけど、「こういう世界を作りたい」って思っていることをやるって、すごくストレスが少ない。それをやってる間ってプラスのゲージが溜まっていって。もちろんスタートアップならではのさっきのつらい出来事が重なるとマイナスゲージが溜まるんですけど。トータルでプラスのゲージが溜まっているからなんじゃないかなと。ぜひやりたいことを突き詰めて、仕事をしてもらうといいなと思います。

武樋:僕も一緒で、やりたいこととか思いを持ってやれてるからかな。つらいことしかないんですけど、正直。なぜやり続けられるかって言うと、自分がやりたいところを目指してやっているからこそ、そういう苦を苦と感じてないというか。ある意味脳みそがマヒしてるんですよね。ランナーズハイ的なイメージで。

岩佐:ドラクエとかファイナルファンタジーはすごいわかりやすくて。レベルを上げるってしょうもないじゃないですか。ゲームに興味ない人からすると。「何だよ、ずっとスライムを倒してEXPを溜めてるの?」みたいな。でもゲームやってる人はあれが楽しくて。チビチビスライム倒していると、何か次に移れて出てきてみたいな、最後こうなって…わかんないですよね。やってない人にはね。やってる楽しさが。

武樋:昔流行った無限プチプチとか。なんであれをずっとやってるのかって言うと、そういう話ですね。外から見たらずっとプチプチ変な人だみたいに思うんですけど。やってる人は楽しくて仕方なくて。逆に言うとそういうことしかやってないかなって。細胞が若返るのかもしれないですけど、よくわかんないですけど。

質問者:例えば、スマートフォンだったらバグがあってもアップデートで解消して、せいぜい1日ぐらいの不便で済みます。一方で、FA(工場の自動化)をしている工場の機器ってバグで人が死ぬこともあり得るし、1週間工場が動かないと、100億円単位の被害が出ることにもつながる。今回、いくらスピード感を重視しても、できないことはあるという前提なのでしょうか。

高田:おっしゃる通りだと思います。私どもFAの製品は信頼性が一番大事ですし、世の中からそう認識いただいているところが強みではあります。ただ、アジャイル的な開発をしてそれを一気にばらまくつもりはないです。例えば社内のある部門は自分たちで工場を持っているので、自分たちで使えます。こうこうこういう注意事項あるけどまず使ってみてくれということもできるし、あるいは特定のお客様に「パイロットなんだけれどもやってもらえませんか?」ってお願いをすることもできると思っています。

ですから、そうならないような手立てを打って早く回すというようなことをトライしていきたいと思っています。新しいものって市場に受け入れられるかどうかわからないので、試してみることが絶対必要だと思うんですね。それを「完成度上げてから」って言ってると、出したときに陳腐化している可能性がありますので。そういったところの危機意識をちょっと持っています。

難波:今回に関しては、FAに限らず広く考えてらっしゃるってことですか。

高田:そうですね。一応FA分野でと銘打っておりますけれども。実は三菱電機として、初めてこのアクセラレーションプログラムをやらせていただきます。社内的にも注目を浴びていますので、他の事業本部の方に興味を持ってもらっていると思っています。ですから、そういったところに我々のほうから「こういった会社あったんだけどどう?」みたいな話はさせていただくことはできると思います。

岩佐:質問者様のイメージは、トヨタ自動車さんのプリウスが流れている工場みたいな感じだと思うんですけど。世の中の工場の90%以上は小さい工場ばかりです。実は僕らが行ってる深センとか中国の工場では、「ベンチャーが作った機械、よく止まるんだけど便利なんだよね」って、新しい機械がすごい勢いでどんどん入ってきています。最近、四川大学とか北京大学とか上海大学とかのエンジニアが動かしてるFA機器みたいなものがそこら中に山のようにあって。FAだからと言って、すべてが1秒止まったらスーパー大問題みたいな世界じゃなくて、というのはありますよね。

高田:今おっしゃったように中小企業が実は一番多いので、そういったところでは新しいものをなかなか取り入れにくい面もあるのかもしれないです。我々としては従来の製品はしっかり信頼性を高めて完成度を上げて出します。これから世に問うものに関しては、もう少し早く回せるような工夫をこれから考えていきたいと思っています。

質問者:大企業と大企業が協業することも、あり得るのかなと思っています。なぜスタートアップとアクセラをすることがいいのか、教えてください。

高田:例えば今回のプログラムに、大企業のプロジェクトチームが応募いただいてもいいと思います。そのあと選択するかどうかは、我々内部で話をしないといけないとは思いますが。我こそはスタートアップだと思っている方は、応募いただいても僕はいいと思っています。とはいえ、大企業同士の協業は、必ずしもこの場でなくてもいいのかなとは思いますけども。

長島:たぶん大企業同士は、お客さんとしての関係や、競合としての関係が多いと思うんですね。そうじゃないところは意外とうまくいってます。競合やお客さんの関係のときに、唯一うまくいき始めてるかなと思うのは、時間に自由のある人が個人の思いでやり始めてる場合。それ以外のものは、役員が「おおっ?」って思うぐらいの大きさにならないと動けないのが現状かなと思います。意外とこの壁は厚いかもしれません。

難波:ご登壇いただきましたみなさま、ありがとうございました。

 

※「三菱電機アクセラレーション2019」の応募は終了しました。今後もグロービス・テクノベート・ラボは大手企業とスタートアップのマッチングおよび新規事業計画の共創をお手伝いしていきます

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