VRやAR分野でベンチャーが躍進するために必要なこととは?

若山泰親

ベンチャー支援事業の傍らグロービスでベンチャー系科目の講師を務め、さらにグロービスのアクセラレーションプログラム「G-STARTUP」で、VR/AR部門のメンターを務める若山泰親氏。VR/AR分野で起業する際に意識すべきことや、起業家が支援者を選ぶ際に見るべきポイントなどを伺いました。

VRとAR分野で事業開発する際のポイント

髙原:VRとAR分野の事業開発のポイントを教えていただけますか。

若山:まずVRとARとは何か。ひと言で言うと、人間が感じる情報、五感の部分にコンピューターから出力されたデータを当てはめる、ヒューマンコンピューターインターフェースに関わる要素技術です。数年以内に世界で5兆円を超える市場規模になると言われています。

このうちVRはデジタルの空間の中に人間が放り込まれて、視覚・聴覚を完全にVR空間から来るものに置き換える技術です。今後は五感すべてが置き換えられる可能性があります。その技術が発達して安価に入手できるようになっています。

ARは、現実で見ている空間の中にコンピューターが入れたデータを重ねる技術です。ポケモンGOで言うと、その場にポケモンがいるかのように出てくる技術です。コンピューターやスマホの端末の能力が上がりGPSが使いやすくなったことで、プレーヤーも増えています。さらに、AIや5G、IoTとの掛け合わせで、ユーザビリティも上がることが期待されます。

このように非常にポテンシャルは高いんですが、技術として新しいので、利用シーンが開拓し尽くされていません。そこをどうビジネス化し、短期で成長させるか、がポイントです。

髙原:利用シーンはどうやってみつければよいのでしょう。

若山:デザイン思考的なアプローチは有効ですね。ユーザーの課題定義が曖昧なまま進めると、「すごいけど使えないよね」となります。とにかくユーザーを観察して、しっかりとペインを見つける。解決するペインが決まったら、解決策を考えてプロトタイプを出して使ってもらって進む、ダメだったらもう一度やり直す。それをセンス良く、スピード感を持って、繰り返しやっていくことが大事です。

髙原:VRとARの事業開発に、テクノロジーの知識はどれくらい必要ですか。

若山:テクノロジーの理解は必須です。ハードウェアもミドルウェアもかなり使い勝手が良くなっていますが、じゃあその中でどれを使ってどう実装すると使いやすいのか、サーバーの負荷や遅延にどう対応するのか、VRで重要な没入感を損なわないためにどうすればよいのかなど、技術の理解がないと判断できない点は多いです。

特に最初はスピードが大事なので、フルスタックのエンジニアがいて、スピーディーにプロトタイプを作る。スケールさせるとなったらフロントエンドとバックエンドとに分かれてやる感じで作っていくのがいいですね。

実は日本のVRとARは世界の中でもかなり発展しているんですが、海外の情報をウォッチして、新しい技術や利用シーンを取り入れながらやっていく観点もやはり大事です。

もう1つ、VRとARは手段にすぎません。ユーザーの課題を解決するために、他の方法もあるけど、その一部としてうまく組み合わせて提供していく。そういった観点も必要だと思います。

場作り、仕組み作り、投資でスタートアップを支援

一番町インキュベーションセンター

一番町インキュベーションセンター内のフリースペース

髙原:ところで、どういうきっかけでベンチャー支援活動を始めたんですか。

若山:もともと商社で新規事業開発をしていたんですが、20年前の金融危機で勤め先が倒産したんです。日本経済全体でこれまでの成功モデルが立ち行かなくなっている、そう強く感じ、キャリアチェンジを視野に慶応ビジネススクールに入学しました。

そこで起業を目指す外部の人とビジネスプランを作る科目があり、事業立ち上げまで支援したことが、まず1つのきっかけですね。卒業後はベンチャーで上場準備にも携わりました。こんな具合に徐々に支援に入っていき、この領域なら自分の付加価値を出せると思って2004年にブレイクポイント株式会社を創業しました。

髙原:インキュベーションオフィスはいつから始めたのですか。

若山:これも2004年です。実は、創業直後はIPOコンサルをやっていたんですが、ベンチャーが成長する過程にいろんな落とし穴があることに気付き、そこを一気通貫でお手伝いする仕事をしたいと思ったんです。そこで、まずは「場作り」をしようと、インキュベーションオフィスの運営を始めました。

髙原:インキュベーションオフィスではどういった支援をしているんですか。

若山:信用も不動産を借りるお金もない立ち上げ期に、低コストでオフィスを使っていただくのが1つ。そのうえで、一般的なコワーキングスペースやシェアオフィスにはない付加価値が2つあります。1つは成功確率を上げるお手伝いです。言い換えると失敗パターンに陥らないようアドバイスしています。もう1つは事業化の速度を高めるお手伝いで、資金調達や組織のスケールアップの仕方、マーケティング施策などをアドバイスしています。

髙原:他にもベンチャー支援の活動をされていますよね。

若山:「仕組み作り」と「投資」もしています。その1つがTokyo XR Startupというインキュベーションプログラムです。ゲーム会社のgumiさんと一緒にやっていて、6ヶ月1バッチで、各バッチ4~7社採択し、プロダクトの開発などを支援、1社当たり平均1000万の投資をTokyo XR Startupとブレイクポイントの協調で出資しています。

他にも、自治体の創業支援施策の事務局をしたり、投資に関してはご縁があるスタートアップ26社くらいに、シード投資もしています。シードからアーリーにかけての支援の経験値は、かなり高いと思います。

髙原:グロービス経営大学院の教員もされています。

若山:どうすれば起業して成功できるのか、日本では学ぶ機会がほとんどありません。スタートアップの知見を持った人も、あまりいません。アメリカはシリアルアントレプレナー層がけっこういて、スタートアップでコア人材になれる人たちの流動性もあります。なので、成長ステージに合わせて人を引っ張ってくることができますが、日本ではそれは極めて難しい。スタートアップの経営者自身が勉強して成長しないと、会社として大きくなれないんです。そこの部分を埋めるために、教える仕事もしています。

新規事業が生まれるエコシステムを作りたい

髙原:ベンチャーを支援することで、どういう世の中を作っていきたいですか。

若山:日本の金融危機のあとにインターネットが来て、GAFAのようなイノベーションを起こした会社が経済活動の中心になり、雇用や経済価値も生むようになりました。デジタルトランスフォーメーションが進む今、新規事業を作らないといつまでもその中心には入れません。日本はバブルが崩壊したあと、選択と集中をやりすぎたんですね。結果、うまくいくかわからない新規事業をやらなくなった。

そんな中でも、起業家とかベンチャーからイノベーティブなプロダクトとかソリューションが出てくることがあります。そういった人たちがちゃんと報われて会社を大きくすることができ、最終的には世の中を良くする――そういうエコシステムを日本に作りたいです。

髙原:支援したいと思うのはどういう起業家ですか。

若山:やっている人も楽しくてハッピーだから、ユーザーもハッピーにできる。そういうサイクルがすごく大事だと思っています。もちろん、世の中に対する憤りや反骨精神のようなものでもいい。内なるエネルギーを持った人たちが頑張って新しいサービスを作り、世の中を変えていくことが、絶対必要です。

やはり、自分がやりたいことや、本当に信じていることじゃないと力が出ないですよね。同じアイデアを考えている人は、世界中にたくさんいるかもしれない。結局、誰よりもそこに思い入れがある人が一番いいものを作って世の中を変えていけると思います。なので、起業家が心底やりたいことはしっかりと尊重し、そこをお手伝いしたいと考えています。

ベンチャー支援者を選ぶ際に気を付けるべきこと

髙原:起業家がベンチャー支援者を選ぶ際に気をつけるべきポイントを教えてください。

若山:起業家にとっては、いいプロダクトを出してそれを伸ばして会社を成長させて成功することが一番大事です。その成長の根幹は、VCやアクセラレーター、インキュベーターといった支援者は提供できません。自分があくまで主で、支援者は従属的な存在なので、そこを間違えずに選択的に活用していくとよいと思います。

どこから支援してもらうかで言うと、たぶん一番頼りになるのはその支援者と何かしら接点を持った起業家の先輩やそのコミュニティなので、そこに聞くのが一番いいと思います。

髙原:G-STARTUPへの期待を一言お願いします。

若山:スタートアップや新事業の創造にどれだけ貢献していけるのか、たぶん我々支援の側にいる人たちが真剣に考え、我々自身がもっと進化していかないと世界は変えられないと思います。今回、グロービスがかなり真剣に支援を行っていくということで、非常に期待をしています。

髙原:ありがとうございます。

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