ロボットは人間の業務をどこまで置き変えるのか?

新刊『テクノベートMBA基本キーワード70』の2章「新技術」から、「Keyword014 ロボティクス/RPA」を紹介します。

ここ数年、「機械やロボットに人間の仕事が置きかえられる」ということが盛んに言われるようになりました。ここでいうロボットは、必ずしも人間型のものではなく、何かしら人間が行っていた機能を担う機械全般を指します。最も置き換えが進むとみられているのは繰り返しの多い単純作業ですが、ホワイトカラーの仕事も、単純なものからおいおいロボットが代替することが予想されています。企業としては、置きかえられる部分はロボットでどんどん置き換えたうえで、人間にどのような仕事を割り振ることが最適か、言い換えればロボットと人間の最適な分業体制を模索していく時代がやって来ているのです。

(このシリーズは、グロービスの書籍から、PHP研究所了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

ロボティクス/RPAとは?

ロボティクスとは、ロボット工学(ロボット関連の学問分野)のこと。ロボットテクノロジーとも呼ぶ。RPA (Robotic Process Automation)は、ロボットによる業務の自動化を指す言葉。

解説

元々ロボティクスは、機械工学やセンサー技術、制御技術などを中心として発達してきました。近年では、IoTでインターネットにつながったセンサーから、さまざまなデータを収集しその情報をAIで処理して最適な動作を行うといった次元にまで応用が進んでいます。

たとえば介護ロボットであれば、目の前の人の姿形や声をセンサーで認識してAIが解析することで、荷物を持ちあげて移動するといった「その場で最適な行動」を即座に取れるようになることが期待されています。

また、清掃ロボットであれば、汚れている箇所について、画像や匂い(揮発している化合物の情報)などから汚れを解析して、最適な清掃を行うといった活用法が期待されています。たとえば、床の上のしつこい汚れを見つけると、その汚れに一番効く洗剤を吹きかけてきれいに拭き取る、といったようなことです。

すでに活用されているロボティクスの数々

上記の例は一般消費者視点での活用例ですが、実際には家庭用のロボットで、一人ひとりの人間を相手にロボットが適切な行動をとることは、未だ認識技術や機械工学的に難しい面もあります。その一方、いち早くロボットが導入されているのは、倉庫や工場など「モノ」を対象に比較的単純な作業が繰り返される現場です。

たとえばアマゾンの物流倉庫では、アマゾン・ロボティクス(AR)というシステムが導入されています。そこで活躍しているのは自走式のロボットで、アマゾンはこれによって商品保管棚を管理しているのです。

具体的には、ロボットは倉庫の床に埋め込まれたバーコードを読み取り、次に向かう位置を把握しながらエリア内を移動しています。一方、倉庫のスタッフは商品を棚に入れたり、棚から出したりする作業だけを行います。通常の倉庫では、人が歩いて棚まで行くところを、ロボットに完全に任せているのです。

アマゾン・ロボティクスの手法は時間や人件費の節約にもなり、作業の負荷も減らすことができます。また、現在は人間が行っている棚入れ、棚出しの作業も、将来的にはピッキングロボットによって代替されることが期待されています。

アマゾンの例以外にも、特に工場などは、今もさまざまなロボットが活躍しています。企業にもよりますが、生産ラインに従事する人間を極力少なくし、徹底的にロボットを活用しようという動きが進んでいます。

特に日本企業の場合、人件費が新興国に比べて高いという弱点があります。また、昨今は人口の減少によって、採用が難しいということも多いでしょう。コスト競争力や安定供給といった側面からもRPAが導入され、ロボット活用を前提とした生産が今後の主流になると予想されています。

RPAのさらに進んだ形としては、「ホワイトカラーの業務の効率化」も期待されます。たとえば情報収集やその後の分析、資料の作成なども、ゆくゆくはロボットに任せていくことが期待されています。

「多機能化」と「故障」がロボット活用の課題

ロボットの活用における重要なポイントに、「どこまでロボットを多機能化するか」という問題があります。多機能ロボットは確かに便利ではあるのですが、たとえば先述したような清掃ロボットを作ろうとすると、現在の「ルンバ」のようなものに比べ、恐ろしく大型で高価なものになってしまうでしょう。さらに、そこに警備機能なども実装しようとすると、ますますロボットが大型化してしまい、その実用性に問題が出てきてしまうのです。複数のロボット間の仕事の分担の最適化や、そもそもロボットに何を担わせるべきかについては、まだまだ議論の余地があると言えるでしょう。

ロボット活用におけるもう1つの留意点は「故障」です。工場であれば、あるロボットが故障した途端にすべてのラインが止まってしまう、という事態は絶対に避けたいでしょう。その間に、制御を離れたロボットが暴走したりすれば、人間にも危害が及びます。

もちろん、単純な故障は品質改善の努力で減っていくでしょうが、機械である以上、故障はゼロにはなりません。故障が起きるという前提で、それらのメンテナンス体制をどう構築するかも、当面の大きな課題です。

(本項担当執筆者:嶋田毅 グロービス出版局長)

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