目利き、評価、育成…新規事業プロジェクトを進めるための肝とは? 

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前回に続き、先日行われたセミナー「事業開発を前進させる力とは?~パネルディスカッション+ワークショップ~」の内容をお届けします。質疑応答と事業開発における「A or B」を考える中で見えてきた、プロジェクト推進の肝とは?(全2回)

新規事業立ち上げの難所をどう乗り越えるか?

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板倉:では、会場からの質問も受け付けたいと思います。

会場:新規事業立ち上げにおいて、精査等から実行にいたるまでの時間軸はどのように見ていらっしゃるでしょうか。それともう1つ。私が所属する事業開発部門は営業部門にぶら下がっていて、新規事業でありながら早い時間軸での収益化も求められています。その点でボードメンバーと現場のメンバーでギャップがあったりもします。営業部門の直轄という環境でうまく進めるためのアドバイス等がありましたらお願いします。

本松:たとえば先ほどお話ししたクレジットカードに関しては、今年1月に開催されたCESで見つけてきました。そのあとは少し時間が空きましたけれども、精査は8月にスタートして、10月には契約をしています。今は事業プランを書いていて、いろいろ調査をしている状態です。12月末までに事業計画をつくり、来年3月までにプリセールスで実際にお客さんにつなごう、と。その先は4月までに事業展開を行うというタイムラインを一応ひいたうえで進めています。

板倉:マイルストーンを置いておいて、そこまでいかなかったらどうするかといったことも、きちんと議論する必要があるという話かと思います。いきなり収益化という話ではなく、かなりステップを細かく踏んでいるというやり方をとられていますよね。

本松:そうですね。弊社も営業会社なので、「いつになったら売れるのか」というようなことはたくさん聞かれます。ですから、「3月までにプリセールスを行います」といったように、そこで逆に線を引いている状態ですね。

会場:新しい事業に関する目利きという点で、上の役員と現場側で認識が少しずれていると感じるときがあります。その辺のギャップを埋めるためにはどうすれば良いでしょうか。

山内:意思決定側と現場の断絶という課題は我々にもありましたが、その対策として、我々は判断できるレイヤーを執行まで降ろしています。そのうえでボードというのは監督機能という風に位置付けて、事業の決定はなるべく事業側が行うという建てつけにしています。以前は本当に目利きのない決裁をされたこともあるんですが、最近はそういう部分もかなり改善されてきたと感じます。

会場:事業企画と事業推進は微妙に違うと思っていますが、企画力についてはどのようにドライブしていらっしゃるのでしょうか。

本松:弊社では、人数は少ないんですが、ネタというか情報を集めるということをミッションにしている人間がいます。CESでクレジットカードの話を見つけたのもそのメンバーです。

山内:弊社でも、アイデアを出すのは現場の若い人ですね。現場が一番、と。そのうえで経験をもとにしつつ、事業モデルとして形づくっていく部分で企画部門がフォローする体制をとっています。出てきたアイデアをベースに、たとえば現場に対して企画書のフォーマットづくりをレクチャーしたりして、企画として組み上げるまでをサポートします。

板倉:アイデアを上げさせる仕組みは何かありますか?

山内:私たちは全部署の会議資料に目を通しているのですが、そのなかに、やっぱりキラリと光るものがあるんです。そういうときは、それを出した本人に直接会いに行きます。うちの部署では「とにかく現場に行け」と言っています。

板倉:では、ここでまとめの質問をさせてください。皆さんから見て、経営もしくは事業開発におけるプロジェクトの位置づけや役割というのは、どういったものになるのでしょうか。

山内:まず、目指すべきものを最初に決めることがすごく大事になると思います。ゴールからバックキャスティングで考えるということです。しかし、ゴール設定から企画をする経験というのは、既存事業のなかには少ないです。なかにはできる部署もあるんですが、ほとんどの場合、日々のルーチンを改善する業務を担うウェイトが大きいので、どうしても考え方が現時点を起点としたフォーキャストになる。

バックキャスティングで考える経験をしてもらう、それも早い時期に経験してもらうというのが、個人的にはプロジェクトの価値であり位置づけだと考えています。それによって成長した人が次の事業で良いものを作っていくサイクルが今の企業の成長には必要です。

本松:プロジェクトはタレントの持ち寄りだと思います。戦略が描ける人、事業計画が書ける人、契約が得意な人、マーケティングが得意な人、営業が得意な人等々、会社にはいろいろなタレントがいますが、そうした人たちがすべて揃っている部署はそうそうないので、できる人を連れてくる。ただ、異動させるとなると難しい。新規事業なので立ち上がるかどうかが分かりませんから。そこでタレントを借りるというのがプロジェクトだと捉えています。

板倉:今日は事業開発というテーマで、アイデアはどのようにして生み出していくのか、事業の形はどのようにつくっていくのか、そしてそれは1人でやるのか役割分担するのか等々、さまざまな問いが出てきました。あるいは、それを実行できる組織をどのようにつくるのかという話もあり、そうした課題についてそれぞれに工夫があったと思います。

大切なのは、そうした事業開発をどのように仕組み化して、継続的に進めていくか。今回の例を参考にぜひ会場の皆さまも考えていただければと思います。

事業開発は専任部門と現業部門、どちらが担うべきか?

板倉:ここからはワークショップ形式で、皆さんと「答えが出ない議論」をやってみたいと思います。議論したいのは、新規事業もしくは事業開発における「A or B」です。実際は二元論で語れるものでもなく「AとBの両方」ということもあると思いますが、今回は「二者択一で選んでみるとどんな意見交換ができるか」という趣旨で進めてみたいと思います。

1問目は、「事業開発は専任部門が担うべきか、現業部門が担うべきか」。専任部門というのは新規事業開発部門とか事業開発部門ですね。そこが事業開発をするべきであるというのがAで、「いや、専任部門ではなく現業部門がやらなければいけない」というのがBです。まずは周囲の方と4~5人ぐらいのグループをつくっていただき、AかBかという結論だけでなく、その理由も合わせて意見交換していただければと思います。

(ディスカッション)

会場(グループ1):AとB、どちらの意見も出てきました。まず、Aのほうは「専任部隊でなければ今までと違った新しい切り口のものは出てこない」という意見です。一方、Bについては「現場で出てきたアイデアをいかに形にするかというカルチャーのところでは、なかなかAのほうは難しい」という意見になっています。

板倉:なるほど。事業開発における“あるある”として、たとえばアイデアを上にあげると「うちの会社の強みをまったく活かしておらん」なんて言われたりしてしまうということは、結構あるのですよね。そこで「強みを活かすべきか否か」という議論もあれば、「じゃあ、それはうちでできるのか」という話もある、と。そういった意味ではAとBの両方ということになるかもしれません。壇上の皆さんにも議論していただきましたが、いかがでしたか?

本松:「Aの専属部署だよね」という話になりました。ちなみに私の経験をお話しすると、うちの組織はもともとBだったんです。それで何が起きたかというと事業が発足した時点でメンバーを引き抜かれたりしていたんです。「既存事業が大変だから新規をやる暇はない」なんていうことで(笑)。既存のなかで人材が回されちゃうのです。ですから、社長直下にしてもらう形でAの状態にした経緯があります。

板倉:やはり既存事業に引っ張り込まれる力学は相当働くから、そこをどう逃れるのかというのは永遠のテーマということですよね。逆に言うと、既存でやる場合はそこを逃れる仕組みをちゃんと入れていかなければといけない。

ただ、新規のほうにいくと、あまにも離れ過ぎてしまうことがある。事業開発に関連しては、あまり飛び散り過ぎてもいけないというのが現実的にはあると思います。そういったことまで考えながら、どのように折り合いを付けるかということかと思います。

事業開発を担う人材は外部採用と内部育成、どちらがよいか?

板倉:では、2問目。「事業開発を担う人材は、外部から採用するべきか、内部から育成するべきか」。また意見交換してみてください。

(ディスカッション)

会場(グループ2):こちらのグループでも両方の意見が出ましたけれども、どちらかというと「内部から人材を採用すると、どうしても既存事業に引っ張られてしまうということがあるので、やはり外部から採用する」という意見のほうが多かった次第です。ただし、外部から採用するにしてもバランスを考えて、どこからリソースを取ってくるか、慎重に考えなければいけない、と。いきなり外部からトップが来て、今までとまったくかけ離れたことをやってしまうと潰れてしまうので、そのあたりのバランスが非常に大切だという話になりました。

会場(グループ3):私たちのグループでは、私が「外部から」で、他の方は「内部から」という意見になりました。前者としては、多様性あるアイデアを出していくには外部人材のほうが良いのではないかなという意見です。一方、Bのお話はというと、「外部の方は去ってしまう」と。活性化させるためには内部からピックアップして推進力を高めるほうが良いのではないかというご意見でした。

板倉:ありがとうございます。今、事業開発の担当としてご自身で事業を直接推進しているという方は挙手してみていただけますか?…その方々にちょっと聞いてみたいのですが、まずは今、楽しいかどうか(会場笑)。

会場:はい、楽しいです(会場笑)。

板倉:ちなみに楽しい理由はなんでしょうか。

会場(続き):前はエンジニアだったのですが、今は事業開発ということで自分からビジネスに関わっている感じがあるというか。自分で企画をつくり、自分でそれを回していくというのは自身としてもやりたかったことですし、それを楽しいと感じています。

板倉:自分で物事を考え、自分で動かすことができているという感覚になると、おそらく人は仕事が楽しくなりますよね。一方で人事系や事業部の方、もしくは経営者の方に質問してみたいんですが、そうした感覚を組織に植えつけることができているでしょうか。「仕事、楽しいよね」という感覚を、既存事業体でどれほど植えつけることができているか。これ、なかなか難しい現実があるのではないかと思いますが、どなたかいらっしゃいますか?

会場:植えつけようとは思っているのですが、開発をする方からすると、収益がなかなか出てこないこともあり、既存事業との比較でプレッシャーを受けてしまうときもあると思います。それで二の足を踏んでしまうことが実際にはあると考えています。

板倉:なるほど。そこで何をしなければいけないかということですよね。これは答えがない世界ですが、おそらく皆さまのような立場の方々が、もしくは人事または事業部の方々が、仕事の楽しさみたいなものを植えつけていくことが大切になるのかなと思います。そして二の足を踏まないよう守ってあげたりして、前に進めてあげる。人間というのは、基本的にはやり方が分かれば自分で進めることができると思いますので。

でも、たとえばそこで外部からの人材をずっと採用し続けていると、その楽しいことを外部の人たちだけがやり続けて、内部の人たちが置いていかれる形になってしまう、ということにもなりかねない。そういった意味からもバランスが大切なのかなと思います。

事業開発の評価は中長期で見るべきか、短期で見るべきか?

板倉:では、最後の質問をしたいと思います。事業開発の評価は中長期で見るべきか、短期で見るべきか。これについても意見交換してみてください。

(ディスカッション)

会場(グループ4):基本的には中長期で見るべきという意見が多かったですが、やはり最初の立ち上げ段階や収益化の段階といった時間軸によって違ってくる面はあるのではないかという話になりました。

板倉:なるほど。「何を見るか」という議論をしたチームはありますか?壇上ではいかがでしたか?

山内:こちらで議論になったのは、「プロセスを見るのか、結果を見るのか」という点です。短期間では、我々3人は「2年間はだいたい赤字だろう」という認識がありまして。なので、そこはもう結果だけを追わず、プロセスも見ていく。ただ、そこを見たとしても、プロセスだけで120点をつけることはできないという議論にもなっていました。

板倉:何を見るのか、そしてそれをどう見るのかという評価軸はどうするのか。これも社内の仕組みとして持っておかないと正しく見ることができないということですね。あと、新規事業開発とか、今日はプロジェクトという言葉も使いましたが、その目的観は2つあるのではないかと考えています。

1つは、当然ながら成果を求めます。ただ、成果だけではなく、事業を開発するプロセスのなかで人が育ったのかどうかとか、どのぐらい目線が広がっていったのかとか、そういったことが次の肥やしになってくるというのがまずはあると思います。それともう1つ。事業開発にもさまざまなステージも踏まえ、AなのかBなのかということを事業ごとに考えていくことも必要になると思います。

では、時間になりましたのでまとめたいと思います。すべての事業にはライフサイクルがあり、それはいつか必ず終わります。では、そのときどのようにすれば次のサイクルに入ることができるのか。難しいのは、そこで既存の力に引っ張られてばかりでは新しいものも立ち上がらないという点。やはり仕組みをうまくつくっていかないといけない。その仕組みづくりのために、プロジェクトをうまく使っていくというお話も出てきました。

改めまして壇上の皆さんに盛大な拍手をお願い致します(会場拍手)。

※実際のセミナーではテルモ株式会社の藤田規嗣氏にも登壇いただきましたが、その内容は非公開となっています

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