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テクノベート時代に意識すべきことは?―『ビジネススクールで教えている 武器としてのITスキル』教員座談会

投稿日:2018/04/28更新日:2020/01/31

先日発売された『ビジネススクールで教えている 武器としてのITスキル』。Excelなどの目先のテクニックではなく、ビジネスにおいていかにITを活用して価値を生み出し、組織としての生産性を高めるかについて書いた本で、アルゴリズムやビッグデータ、プラットフォーム戦略から新時代のマーケティング戦略、新しいリーダーシップ、デジタルトランスフォーメーションなど、多種多様なテーマを扱っています。それらの知識がなぜ今ビジネスパーソンに必要なのか、執筆者が語ります。(全2回)

テクノベート時代の変化の本質とは

嶋田:まず、本書でも取り上げた、「テクノベート」(テクノロジーとイノベーションを組み合わせた造語)と呼ばれる、テクノロジーが大きくビジネスのルールを変えるこれからの時代について最初に確認しておきたいと思います。この時代の本質というか最も大事な変化のポイントは、突き詰めると何でしょうか?

君島朋子君島:いろいろあるのでしょうが、変化の速さと透明性でしょうか。まず変化の速さですが、今回、この本に書いた以上に、時代とともに加速していくことが予想されます。そうなるとどんどん自分自身が変わり続けるマインドと学び続ける姿勢が大事になってきます。透明性は、あらゆることが可視化されるということです。SNSなども含め、自分を出し続けることが必要になるのですが、アイデンティティ、インテグリティ(誠実、真摯、高潔などの意)というものが重要になると思います。それがないと人はついてこなくなるでしょう。

川上:昨今はコンピュータに何が出来るかといった話にどうしても引っ張られがちです。しかし、より大事なのは、コンピュータにやらせることはやらせてしまって、人間が本当にやるべきこと、やりたいことをどんどんやれる時代になってきたということのほうです。その意味で、実はテクノベート時代とは「人間中心の時代」であると思います。

嶋田:人間の一番本質的な部分にフォーカスできる時代とも言えますね。確かに若い人ほどそうした意識を持っているようにも感じます。

梶井:AI、ビッグデータの時代になると、人間が頭の中だけで仮説を立てて検証する、ということでは追いつきません。コンピュータに任せるものは任せてしまって、人間はもっとクリエイティブな部分に注力する、というように協業していくことが重要だと思います。

とはいえ、知識知見をある程度もっていないと「コンピュータに使われるだけ、世の中の流れに振り回されるだけ」になってしまうので、本書で書いたようなテクノロジーに関する知識や世の中の潮流についての知見は最低限必要と思います。

嶋田:最近はBTC人材などといって、テクノロジー、ビジネス、クリエイティビティを高い次元で実現する人材の必要性が叫ばれていますが、それにも通じる話ですね。やはりITを知るからこそビジネスもクリエイティビティもさらに価値が出せるという側面はありそうですね。

梶井:テクノロジーがある程度分かっていないと、世の中で言われていることが実際のところどこまで実現可能性があるのか、実はまだ当面は夢物語なのかということも分かりませんからね。最低限のITリテラシーや、そのビジネスへの影響の理解はどのような業種業界の人にとっても必要不可欠だと思います。

ビジネスパーソンの意識はまだまだ遅れている

嶋田:受講生を始め、ビジネスパーソンと接する中で、もどかしさを感じる点はありますか?

梶井:2通りのパターンがあるように思います。1つは「人間のほとんどの仕事はAIに奪われてしまう」などと過剰に怖がる、しかし、だからといって何もしないタイプの方。もう1つは、例えば「うちは少数の決まったお客さんと決まったビジネスをしているだけだから」などとおっしゃって、「自分には関係ない話」と思ってしまっている方々も多いです。いずれのパターンの方も「気軽に何か新しいものを試したら世界が変わるよ」とお伝えしても、試さないんですよね。わりと意識の高いビジネスパーソンであっても、半数程度はこの2つのどちらかのパターンに当てはまるように思います。

川上:社内でITについての自主勉強会をやっている人もいますが、「結局、未来は今のビジネスの延長線上にある」と思っている人がやはり多い。非連続的な変化をイメージできない人が多いのがもどかしいですね。「今のビジネスが、ある日突然世の中からまったく必要とされなくなる」という可能性に対するリアリティがない。

少し観点を変えて言うと、自分がやりたいと思っている仕事、実現したいと思っている目標に向けてではなく、やりたいとも実現したいとも思ってないけれど、会社でただ誰かに指示されたからその仕事をやっているという人が非常に多い。そうした「会社のロジック」に染まった人たちに対して、特に30代未満の若い人々が拒否反応を示している感じはありますね。多くの企業でそうしたギャップが広がっているように感じます。

君島:ヒト系の分野では「逆メンタリング」という言葉があります。若い人や自分と違うコミュニティの人に学ぶ必要があるのですが、それが出来ている人は少ない。消費者の方の変化が速いことも多いのに、組織のそれまでのやり方に引っ張られている方も多いです。特に40代後半以上になると、それまでの成功体験を捨てられる人は本当に少ないですね。それができる人は数%いるかどうかではないでしょうか。

組織の意識は変わるのか

川上:従来、仕事のできる人というのは組織内の論理を深く理解し、あちこちの関係者の利害を調整して組織内でうまくことを進めることができる人でした。場合によっては組織を守るために違法すれすれのことにも手を染めたり、関係する人を組織や業界の論理の中に引きずり込んで「仲間」という名の共犯者に仕立てたりといったことも行われ、そういう人が「優秀」「豪腕」と呼ばれたりもしていました。

でも、今やそうした内輪の論理が問題となるように社会が変わってきた。狭い世界に閉じていたルールがどんどん通じなくなっていく兆候はあちこちに見られます。テクノロジーの時代とは、組織や業界の枠組みを超えたオープンな関係から新たな価値が生まれ、世の中を動かしていく時代です。そうした力学が引き金になって会社というものが変わっていく可能性はあると思います。

テクノベート時代の1つの特徴として、人間関係も組織内だけでの「すり合わせ型」ではなく、組織を越えてさまざまなつながりを生かす「モジュール型」の関係がより大きな価値を生むようになるということがあります。そうした時代には、特定の組織内だけに通じる論理で物事を動かすという方法論は機能しにくくなります。多様な背景や価値観を持つ人たちとの連携の構築能力が大事になっていくと、「社内調整力」で生きてきた人間の活躍の場は減っていきます。それがきっかけとなることもあると思います。

君島:これまで調整が上手く出来た人というのは、特定の組織のロジックに染まっていた人たちです。これからは、組織の垣根を越えた「翻訳能力」が大変重要になるでしょう。ワクワクするビジョンを掲げたうえで、多くの人々の価値観などにも配慮できる。本書の第1章(「コンピュータ+データ」の基本スキル)のメッセージも、端的に言えば、「自分はエンジニアにはなれなくても、翻訳できるスキルは必要だ」ということかと思います。

梶井:テクノロジーに疎い経営者や企画者の中には、エンジニアに「とりあえず、いい感じにAI、ディープラーニングなんかを使って、レコメンデーションの仕組み作って、売上げは10倍にしてね、よろしく」などという無茶振りをする人が多いという話はよく聞きます。しかしそもそも、そのビジネスに本当にAIが必要なのか、レコメンデーションの仕組みが必要なのかから考えられないと、結局無駄なコミュニケーションコスト、無駄な投資が増えるだけです。

逆に、エンジニア側が安易に収束させようとしたり、不要なシステム開発を提案するといったことがあったとしても「こんなことをすればどうか、これもできるのではないか」と提案できるとよいのですが、それも今はできる人は少ないですね。

嶋田:やはり垣根が高いということですか。

梶井:歩み寄りは必要でしょう。いわゆる「文系」の人でも、多少勉強することで、できることは随分増えると思います。年齢は関係ないと思います。一番大事なのは、結局ITを使って何をやりたいかですね。それをしっかり考えてエンジニアの方に伝えないと、結局いいものはできません。

テクニカルなことを深く知っていなくても、今回書籍に書いたレベルのことを理解し、世の中の情報にアンテナをはっていれば、ある程度はできるようになるという感触はあります。ディープラーニングとかロボティクスといったバズワードに引っ張られるだけではなく、結局自分は何をしたいのか、何を社会に価値提供したいのかをしっかり考えて、それをテクノロジーに長けたエンジニアと分かち合い、ともに実現していけることが大事です。

後編:テクノベート時代の個人と組織の関係は?―『ビジネススクールで教えている 武器としてのITスキル』教員座談会 >>

 

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