今回は、洗替え法と切放し法の違いについて説明します。といっても、何のことやらと疑問を持つ方もいると思いますので、棚卸資産を例にとって説明します。
洗替え法、切放し法それぞれを使った会計処理の例
通常の販売を目的として取得した商品(取得価額:100)の期末時点における時価が40に下落したとします。この場合、会計ルールでは時価まで簿価の切り下げが必要になります。そして、この商品は翌期に80で販売されたとします。この場合の会計処理は以下になります。
【洗替え法の場合】
<当期末>
借)商品評価損(*) 60 / 貸)商品 60
(*)通常は、売上原価に区分されます
<翌期首>
借)商品 60 / 貸)商品評価損 60
<販売時>
借)現金 80 / 貸)売上 80
借)売上原価 100 / 貸)商品 100
⇒差し引き、20の販売損が発生します
【切放し法】
<当期末>
借)商品評価損(*) 60 / 貸)商品 60
(*)通常は、売上原価に区分されます
<翌期首>
会計処理なし
<販売時>
借)現金 80 / 貸)売上 80
借)売上原価 60 / 貸)商品 60
⇒差し引き、20の販売益が発生します
洗替え法と切放し法とは?その相違点
両者の一番の違いは、当期末に行った商品の時価下落による評価損を翌期首に戻し入れるかどうかです。
評価損を戻し入れる、つまり当初の取得価額まで戻す方法が洗替え法、一方、評価損を戻し入れしない、つまり商品の取得価額そのものを修正する方法が切放し法です。その結果、商品の販売時には洗替え法では20の販売損となるのに対して、切放し法では20の販売益となり異なります。しかし、トータルでの損益に両者の違いはありません。
洗替え法は、取得価額の修正がどちらかというと一時的であり、近い将来回復も含めて変動することが予想される場合に適用されます。これに対して切放し法は、一旦修正(評価減等)した取得価額をそのまま維持することからも、背景には将来の値戻りの可能性が低いと考える場合を想定しています。
具体例で考える
具体例を見てみましょう。棚卸資産の時価の下落に伴う簿価切り下げについては、その要因が物理的な劣化や経済的な劣化のような場合もあれば一時的な市況の悪化のような場合 も考えられるため、継続適用を条件に洗替え法と切放し法の選択が認められます。
有価証券の時価変動については、上場株式等短期間の市場環境の変化により時価が変動することが考えられますので、洗替え法が適用されます。これに対して、固定資産の減損損失は過去数期間の継続的な収益性の悪化を要因とするため、洗替え法は認められません。
なお、貸倒引当金などの引当金については、いわゆる過年度遡及修正処理の会計ルールの導入により過年度の引当金の修正は過年度に遡って修正する必要がありますので、切放し法のみが認められます。