利益が100のA社と200のB社、皆さんはどっちの会社がより儲かっていると思いますか。
額の大きいB社の方が儲かっていると思うでしょうか。では、売上高がA社200とB社600だったらどうでしょうか。A社は利益率が50%、B社は33%となり、利益率の面ではA社の方が高くなります。
何をもって儲かっているかの定義にもよりますが、利益の額、利益率のいずれを重視するかは人によって異なる場合があるでしょう。また、利益だけをP/L(損益計算書)に記載すると売上高の規模が分からなくなります。
P/Lは、ステークホルダーに対して利益の金額だけでなく、会社の業績などの経営の状況に関する有用な情報を提供します。それによって、ステークホルダーがより会社に対する適切な判断を可能とするためです。そのためには、利益の金額だけでなく、利益の発生原因や取引規模、利益率といった情報を併せて提供する必要があります。
P/Lに売上高から売上原価を控除して売上総利益、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益と表示しているのはそのためです。これを会計ルールでは、「総額主義の原則」と言います。
ところで、すべての取引が総額で表示されるかというとその限りではありません。為替差損益、有価証券の売却損益、固定資産の売却損益などは純額での表示が認められます。例えば海外との取引がある会社は為替の変動による為替差益、為替差損が発生します。為替差益が100、為替差損が50の場合、純額の50(100-50)を為替差益として(営業外収益へ)表示します。これは、為替差益、為替差損が為替相場の変動という同一の要因によって発生しており、総額で表示するよりも為替差益と為替差損を相殺して純額で表示した方が為替相場の変動が会社へ与える影響をより分かりやすく表すことができるためです。
また、有価証券や固定資産の売却損益については、会社の本業に関わる取引ではなく取引の規模を把握することよりも結果としての利益(あるいは損失)が得られたのかが重視されるためです。
なお、売上高に対する値引きや割り戻し(仕入高に対する値引きや割り戻しも同様)を相殺して売上高(又は仕入高)としてP/Lに表示することは、総額主義の原則に反するものではありません。
また、売上高に関する会計ルールが現在検討されています。これによると、百貨店などのように商品の所有権を取引先に残したまま陳列し、販売と同時に仕入れ・売り上げを計上しているケースでは、従来は販売額を売上高としていました。しかし、今後は販売額から仕入れ値を差し引いた手数料部分のみを計上することになります。利益には影響はありませんが、売上高の規模が大きく減少することになります。