最近、ビットコイン、イーサリアム、NEMなどの仮想通貨に関するニュースをよく耳にするようになりました。それだけ仮想通貨の経済的影響力が増加しているということでしょう。ところで、仮想通貨は決算書にはどう表現されるのでしょう?そもそも、現金や預金とは異なるのでしょうか?
最初に申し上げておきますが、日本では仮想通貨に関する会計ルールはまだ整備中であり、企業会計基準委員会から草案が提出されている状況です。当コラムは、その草案をベースに記載しますが、現時点ではあくまで未確定である点をご理解ください。なお、草案はマネーパートナーズ、QUOINE、bitFlyer等の事業者(仮想通貨交換業者)を対象としています。
仮想通貨は資産なの?
仮想通貨は資金決済法によれば財産的な価値ですが、法定通貨や電子マネーとは異なります。また、有価証券のような金融商品、営業目的のために保有、売却する棚卸資産、無形固定資産等の既存の会計ルールで定義される資産とは性格が異なると考えられます。そのため、既存の資産とは異なる新規の資産として決算書上も表現することになります。例えば、100百万円相当の仮想通貨を取得した場合は、以下のようなイメージです。
(借)仮想通貨 100百万円 /(貸)現金及び預金 100百万円
決算期末の評価は?
事業者が保有する仮想通貨は、以下の区分により評価されます。
決算期末ごとの評価の要否は、仮想通貨を取引する活発な市場の有無で区分されます。活発な市場が存在する場合には、その仮想通貨が最も取引されている市場の取引価格を時価として適用します。活発な市場が認められない場合は、仮想通貨の取得価額(取得に際していくらの現金預金等を支払ったか)での評価を維持しますが、固定資産と同様に仮想通貨の資金回収額が取得価額から下回る場合は減損処理が必要となります。
とはいえ、どの程度をもって活発な市場と判断するか、活発な市場がない場合にどのように資金回収額を見積もるかなど、実務上の課題は少なくないと考えます。
売却時の処理は?
仮想通貨を売却する場合はP/Lの収益取引として認識されますが、収益の金額は純額で計上します。例えば、100百万円で取得した仮想通貨を1,000百万円で売却する場合、1,000-100の差額900が収益として認識されます。収益は、取引の内容によって売上高、営業外収益/費用等に区分されると考えられます。仮に売上高と判断される場合であっても900が売上高とされます。また、売却取引の認識時点は、当事者間で売買の合意が成立した時点(約定日)となります。
以上、ざっと現時点での仮想通貨に関する会計ルール(案)を説明しました。仮想通貨については、例えばICO(イニシャルコインオファリング)など未だ法律上の位置づけが明確でないものもありますので、今後仮想通貨の取引や関連する法律の整備に伴って会計ルールも整備されていくことになると思います。