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「ミガキイチゴ」のGRA、M&Aで挑む農業革命(後編)

投稿日:2023/10/10

目次

2011年東日本大震災を機に起業した、アグリテックスタートアップの株式会社GRA。1粒1,000円のブランドイチゴ「ミガキイチゴ」を軸に成長してきた同社が発表した、農薬大手の上場企業とのM&A合意のプレスリリースにまつわる話を聞く。聞き手はグロービス経営大学院 副学長の 田久保善彦。(進行=知見録、文=中山景)(全2回、後編)

猶予はない、世界の食料問題にどう向き合うか

――M&Aを機に、GRAは今後、どんな成長戦略を掲げていきますか。

岩佐:GRAは国内外への農業経営支援を加速し、農業界で強いリーダーシップを発揮していきます。これまで、GRAから独立した営農家「ミガキファーマー」は埼玉・神奈川・愛知にも展開され、新規就農者支援「ミガキイチゴアカデミー」を卒業・独立した法人は21社もあります。GRAの知見をもっと日本全国に拡大していき、農業で地域活性に貢献したいです。

田久保:イチゴ以外の農産物への展開も見据えてるとのことですが、具体的には?

岩佐:我々はイチゴの栽培を通じてITによる形式知化をしていますが、日本中の農産物は、実は形式知化がほとんどされていません。そのため今、農家さんがなくなるたびに日本からノウハウが失われるという深刻な実況があります。また先日メディアでは、高齢化などによる農家数の減少問題がある中、国産のさくらんぼが2030年に消滅すると報道されていました。更に2049年には国産ほうれん草が消滅。そして2050年には米の生産量が今の6割減になるとも言われています。

この状況下で、私たちがイチゴでやった形式知化を、あらゆる作物に応用していくことは急務だと考えています。

※参考:農家が8割減る日 主食はイモ、国産ホウレンソウ消滅?|日経新聞

田久保:GRAのこれまでの12年のプロセスの中では、国内だけでなくグローバルでの挑戦を早々に初めていますね。

岩佐:2012年からインドに進出しています。それから中東、マレーシア、ヨルダン、カナダなど世界中で実証実験をしており、ASEANの国のほとんどに私たちの農作物を輸出しています。田久保さんとも1度インドへ一緒に行きましたね。

今はあらゆる大陸やポテンシャルマーケットで、どれぐらいのイチゴが育つかという実証段階に比重を置いていますが、マーケットがぱっと開いた時に一気に投資できるように準備しています。

起業家・岩佐大輝のネクストステージ

田久保:今後、やはり気になるのは「起業家・岩佐大輝」がどうなっていくのか。M&Aで上場企業のグループ企業に所属することになったと言っても、スタンスとしてはやはり起業家であり続けるんですよね(笑)。その生き方しか、きっと似合わない。

岩佐:本当におっしゃる通りで。これからも起業家であって挑戦者であると思っているので、そこは全く変わらないですね。どんどん新しいことに挑戦しますし、むしろなんなら今よりもスピードを上げていきます。

私自身、IT業界での起業から始まり農業に転身したこの二十数年間の起業家人生を振り返って、事業を作るのはけっこう得意だなと思っています。0→1、あるいは1→10も経験したので、次は10→100のようなステージまでやりたいですね。自分の経営のスタイルをどんどんアップデートしていきたいです。

全力で走れる残り時間がだんだん見えてくる世代に入ってきているので、「やりたいことは我慢しないで全部やろう」「やりたいこと以外はあまりやらない」と最近思っています。

田久保:話は少し変わりますが、企業家であり続けるというポイントから言うと、ITから農業に転身した当時は、ビジネス自体の時間感覚の違いなど、多少の戸惑いもあったのではないかと思います。

岩佐:生き物と対峙するのが農業なので、レバレッジ(てこの原理)は効かないし、ビジネスとして大きく跳ねるということもない。12年の間には、本当にこれでいいのかなと思ったこともありました。起業家としての葛藤はやはりいろいろなところで、常にありますね。

でも、総じて、この12年間やってきたことには全然後悔ないですし、相当面白い世界でやらせてもらったなということに尽きます。農業界もこの10年ですごく変わったし、少なからずそれに対して貢献できたかなというちょっとの自負心もあります。

特に最近、農業の世界は本当に面白いって、改めて思うことが増えたんですよ。食を届ける農業は、多くの人のライフスタイルに関われる仕事。豊かに生きることとは何か、農業のビジネスを通じて、社会と対話しながら進んでいることに、充実感がすごくあるんです。

地域から生まれた日本の農業に夢や誇りを

岩佐:GRAは成長したかもしれないけど、社会からの農業への注目度はまだまだ弱いし、他の産業に比べてのインパクトはまだ出し切れていない、と感じるんですよね。

田久保:それは、ネクストステージの岩佐さんのミッションですね。

岩佐:みんなが農業は面白いと思って、この業界に入る人、投資する人が増えるといいなと思います。今回のGRAのM&Aをきっかけに、いわゆる農家での生計を立てるという方法だけでなく、資本主義の世界でしっかりエグジットする農業ビジネスができるんだと思ってもらえるよう、後から続く人の道標になりたいですね。

田久保:未来の農業の担い手の憧れの対象になる、その人たちに夢をデリバリーする役割というか。

岩佐:そこは、私の仕事であり、非常に大きな役割だと思っています。

田久保:GRAの経営はもちろん大事ですが、本当に大事な意思決定以外は他の人に任せられる状態を早く作って、岩佐さんには、もう一段も二段も高いところから、農業の業界全体に対してビジネス界や政策側からの影響力を持っていただきたいです。

岩佐:そこは最近よく思いますね。自分自身がサステナブルでないと、サステナブルな地域もつくれないから、後継者を育てるタイミングでもあると考えていて。また、新しくスタートアップ起業家を目指す人たちが、「このおっさんがやってること、なんかかっこいいな」みたいに感じてくれたら、とってもいいと思っています。

田久保:山元町の子どもたちが「憧れる人は岩佐大輝」って言ったらかっこいいじゃないですか。

岩佐:山元町はオリジンとして大事にしつつも、常にビジョンは大きく。リーダーの仕事は、地域に誇りを作ることが非常に大事だと思うんです。この12年で、山元町と言ったらイチゴだと全国に定着していて、住む人も「自分たちの町にはイチゴがあるべ」と自分の町に誇れるものがあると、その地域はいい感じで賑わいます。そういう誇りを持てる町で生まれた技術がどんどん世界中に広まっていくと、さらに山元町に還元できるんですよね。そういう循環を作りたいです。

血湧き肉踊るほどの志をもって生きていきたい

――最後に、GRAという企業、そして企業家としてひとつの区切りに立った今、改めて知見録の読者や経営を志す方などにメッセージをいただけますでしょうか。

岩佐:事業を作るのに1番重要なことは、「自分が何に血湧き肉踊るか」を見つけることだと思います。それがあった上で、次に、マーケットニーズあるいは社会課題を考えればいい。はっきり言って、自分が血沸き肉躍らないものに挑戦してもパワーは出ないのではないかと思います。起業家はマーケットがこれぐらいあるからそこに行けというのではなく、自分の心に正直になって、本当にやりたいことでないと、おそらくインパクトは出せないと思います。「そこを追求していこうぜ、皆さん」ですかね。

田久保:岩佐さんの活動からは社会課題が先にみえるけれど、それだけじゃない、ということですよね。だからこそ、そんな岩佐さんに巻き込まれて人生が大幅に変わった人たちが何人もいます。山元町のみなさんも、グロービスの関係者でも。

岩佐:今まで一緒にやってきた人は、本当に想いを持ってついてきてくれてたことに深く感謝しています。素晴らしい能力をもった人が、大きな想いで集まってきてくれたお陰でこの12年やってこられました。

農業の会社を資本市場の中で認められるような存在まで高められたのは、そういう人たちがいたからです。上場企業のデューデリジェンス(適正評価手続き)に堪える農業のスタートアップなんてなかなかないわけですが、それができたのは仲間の支えがすごく大きいと思います。M&Aしても、創業メンバーがみなGRAに残りますし、これからも一緒に、さらに大きな舞台で活躍していきたいです。

田久保:いろんな想いがあるなかで、それでもやはり東北の復興のために数多くの人が岩佐大輝を軸に突き動かされてきた。やはりどこまでいっても想いと愛情によって支えられた12年でしたよね。それは間違いないと思います。すごい人生ですね、この12年。心からそう思います。そして、それを横で見守ることができたことにとても感謝しています。

岩佐:GRAがやってきた12年間は、宮城県山元町のイチゴ革命だったかもしれない。でも、これからは日本・アジア・世界の農業革命へと全力を尽くします。

田久保:今後ますます応援し続けます。本日はありがとうございました。

岩佐:心強いです。こちらこそ、ありがとうございました。


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