変化が激しい現代におけるコミュニティの活用方法を探る本連載の第2回は、「コミュニティへの参加によってビジネスパーソンは何を得られるのか?」がテーマです。得られるものを「3つの恩恵」として整理し、説明していきます。
※本連載はグロービス経営大学院に在籍したメンバー(大島さやか、角田由希子、中村知純、清末太一)が、田久保善彦講師の指導の下で進めた研究プロジェクト「コミュニティの創設・維持・発展」について、その研究結果をまとめたものです。詳細を7回に分けて連載し、皆さんが既に体感していることを言葉にすることで、より良いコミュニティライフを送るきっかけになればと考えています。
ビジネスパーソンはコミュニティに何を求めるのか
ビジネスパーソンはそもそも、何を求めてコミュニティに参加するのでしょうか。
私たちはそれを明らかにすべく、メンバーとして参加する際に「コミュニティに求めること」について、選択回答式のアンケートを実施しました。265名から得た回答結果を以下に掲載しましたのでご覧ください。(選択肢に無いものは自由回答可。回答率5%以下のものは「参考値」扱いとして割愛)
【図1】「コミュニティ」に参加する際に求めることとは?(265名/選択式・複数回答可)
「仲間・人脈づくり」のネットワーキングへの期待を筆頭に、「知識・アイデアなどが得られそう」「他者の考えや行動からの学びがありそう」といった情報のインプット、そして「何かに貢献したいという気持ちがあった」「自らの志に活かすことができる」といった自分自身の「本質」との接触を求めていることがわかりました。
コミュニティから得られることは何か
ここからは視点を変え、インタビューベースでヒアリングした「コミュニティに参加して得られること」をまとめていきます。
得られること①:「今」の自分を知り、「これから」の自分をつくるヒントを得る―自己理解の始まり―
まずはインタビューの内容をご覧ください。
《インタビューの中で着目したコメント》
- メンバーとの会話が「自分は本当にそれをやりたいのか」「自分は結局何ができるのか」など、
改めて自問するきっかけとなった - 同じタイプの人たちと話すことで、気づいていなかった自分の性格を知ることができたのは良かった
- 様々な人と話すことで、自分自身が固定観念に囚われていたことに気づいた
私たちはこれらの意見を「メンバーへの自己開示とフィードバックを通じ、今まで気づいていなかった自分、または今の自分を客観視できる」とまとめ、この状態を「自分への理解が始まっている」と解釈しました。
「自分の思いや意見を伝え、仲間からの反応によって自身の考えや言動、強みや弱みを知るきっかけになった」という経験は、誰しも少なからずお持ちなのではないでしょうか。
コミュニティに参加することでその経験価値を強く、明確に感じ始めると分かったと言えます。
得られること②:同じ価値観を持つ人とのつながり―つながりの構築―
これは想像しやすいのではないかと思います。コミュニティが掲げているテーマに共鳴し、参加することで、興味・関心・価値観が近い人たちとのつながりを構築することができます。
《インタビューの中で着目したコメント》
- 年齢・職業・国籍等、背景は多様でありながらも、「コミュニティのビジョンへの共感」を共通項とした人たちとたくさんつながることができた
- コミュニティが掲げる展望に共感できる仲間ができた。そしてこの仲間の存在が、私生活・仕事ともに頑張るための原動力になっていると感じる
- 育休中という同じ「タグ」を持ったメンバー同士だからこそ、キャリアや育児の悩みを相談しやすく、心の支えになった
性・年代・職業といった、基本属性以外で大切にしたい「自分のタグ」。コミュニティにおいてはそれを軸としたつながりが、新たに構築されることが確認できました。
得られること③:知識やスキルの獲得―インプット―
3つ目は知識やスキルの獲得です。これも②同様、イメージしやすいと考えています。加えて①、②で記載したように「メンバーとの会話」「メンバーからのフィードバック」「メンバー同士のつながり」が発生することで、コミュニティではあなたにとって興味のある情報が集まりやすいことも分かりました。
《インタビューの中で着目したコメント》
- 以前から少し興味があった副業関連のコミュニティに参加した。メンバーとの会話やイベントへの参加を続けたことで生きた知識を得ることができ、結果として副業の進め方まで学べた
- 自分の知識をコミュニティメンバーに説明する場合、その知識を伝える立場で再構築する必要が出てくる。更に、相手からフィードバックを受けて知識不足を認識することもあり、その場合はもう一度学びなおす。つまり、インプットの質が高まったと感じている
- コミュニティへ参加し、何かをギブしようと思うと、必然的にマネジメントのスキルが必要になる。自分は管理職ではないので実務では経験したことがなかったが、コミュニティでこれらのスキルを体験し、実務でも活かせるマネジメント力をつけることができたと実感している
私たちは本や教科書、インターネットを通じて世界中から多くの知識・情報を取り込める環境下にあります。 コミュニティ内ではそうやって得た知識の交換より「知らなかったことを知る」ことが可能になるのに加え、個人単位の情報収集ではなかなか入手しづらい「経験者の知恵」や、経験の積み重ねによる「実践知」も身に着けることができると言えます。
コミュニティに「求めること」と「得られること」はどう関係するのか
こうしてインタビューにてヒアリングした「コミュニティ参加によって得られること」と、冒頭でアンケート結果としてご紹介した「コミュニティ参加に求めること」とは、どのように関係しているのかを確認すべく、両者を照らし合わせました。
その結果、参加することで得られるメリットは、コミュニティ参加の際に求めていることとほぼ一致していると考察しました。私たちはこれらのメリットを「自己理解」「つながり」「知識とスキルの獲得」と集約し、これらを総称して「3つの恩恵」と名付けました。
【図1改】「コミュニティ」に参加する際に求めることとは?(265名/選択式・複数回答可)
以上、第2回はコミュニティに参加することで得られる「3つの恩恵」についてご紹介しました。
コミュニティへの参加経験のある方は、ピンとくる話が多かったのではないでしょうか。コミュニティに参加することで、この3つの果実を受け取れるということを、頭のどこかに置いておいていただければと思います。
次回は、コミュニティへの積極的な関わりが、「恩恵」を変化させるという点についてお伝えします。