日本のベンチャーキャピタリストが見据える未来 

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調査会社ジャパンベンチャーリサーチによると2016年の日本におけるベンチャーキャピタル(VC)ファンドの組成額は2700億円を超えた。実に09年の15倍の規模である。特に13年以降は2000億円前後の組成が続いており、金融機関系や独立系といった従来のVCに加えて、これまでとは異なる大手事業会社によるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も年々増加している。

今年は、環境や企業統治に着目して投資先を選ぶ「ESG(環境・社会・企業統治)投資」元年ともいわれ、社会環境も変化してきている。これまで24回にわたって寄稿してきた本欄も私は今回で最終回。今回は私が所属するグロービス・キャピタル・パートナーズで切磋琢磨するパートナーを紹介することで、日本のVCを取り巻く業界の将来を占う。

努力を徹底する先に自己実現を果たしていく社会・企業を実証したい

仮屋薗聡一マネージングパートナー(48)は1996年の設立当初より参画。VC業界の創成期から数々の投資実績を残し、2015年からは日本ベンチャーキャピタル協会会長を務めている。

「思想による政治分野でなく、実体を創る経済分野に根差したかった。人の持つ志、創造性、能力、努力などの可能性が押し潰され、同質化され、諦めていく光景を見る中で、努力を徹底する先に自己実現を果たしていく社会・企業を実証したいとの思いから、人(ヒューマニズム)を礎にリアリズム(利益)とロマンチシズム(夢)を統合、実現する世界をつくりたかった」と語る。

と同時に「高利だけを目指す資金運用でなく、投資育成を通じての次世代産業・社会創造の志が重要。そのためには高い視座や崇高なビジョン、シャープな戦略設計と泥臭い実務実行を伴った人間力、リーダーシップが求められる。中長期的な発展のためにはグローバルな成功体験を模範とし、最初の成功が次なる成功を生み出す好循環を生み出したい」と課題を語る。

「日本株式会社」の成長を後押ししたい

高宮慎一パートナー(41)は08年の入社当初からトップキャピタリストとして活躍。13年からはパートナー兼CSO(最高戦略責任者)としてファンド運営全般を担う。

「海外生活が長かった経験を生かして、世界に羽ばたくメガベンチャーを生み出すことが自分の使命だ。『日本株式会社』が様々な産業のライフサイクルを超えて、事業ポートフォリオとして更新し続け、比較優位を持つ各産業の代表選手がいる状態を目指したい」と語る。

その実現のための課題を「『日本株式会社』として大上段に構えた経営戦略が重要。戦後日本の護送船団方式も立派な一つの戦略だった。その上で、人材やノウハウの還流、循環が必要。産業の変遷に対して、起業家・経営者・現場の優秀なメンバー一人ひとりが会社という箱にかかわらず、自己実現でき、プロフェッショナルとして力を発揮し成長できる制度設計が大事だ」と語る。

人工知能やロボティクス技術などの進展に伴い、ベンチャー企業の技術やサービスはこれまで「一部の少数のベンチャー村の出来事」だったものが「産業発展の原動力」として認知され始めている。

ベンチャーへの資金供給が盛んな今こそ、VCが大義と規律を伴った触媒として、起業家とともに再現性の高い生態系としての発展へと紡げるかどうかが、引いては日本経済発展の試金石となろう。

(2017年10月19日付日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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