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デジタル世界における教育の再定義を目指す――教育DX界気鋭の経営者・本間拓也氏に聞く

投稿日:2022/07/08

グローバルで実績をあげるEdTech企業、Manabieのトップ・本間拓也氏にインタビューする本企画。後編では、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー・今野も加わり話を進めていく。本間氏の前職であるQuipper時代からの付き合いであり、Manabieへの投資にも関わる今野、そして前編に引き続き投資担当者の深川と共に、ここだけの裏話や今後の展望を聞いた。(聞き手=小栗理紗子、文=渡辺清乃)

先人たちの薫陶が、次世代へ

――前編では、Manabieでいま取り組む教育業界のDXについて伺いました。後編では話をさかのぼり、本間さんご自身のご経験について伺っていきたいと思います。
本間さんは前職のQuipper、そして現在のManabieとEdTech業界で2社の創業に携わっていますが、そもそもなぜEdTechだったのでしょうか?

本間:もともと僕には梅田望夫さんというメンターがいて、彼が共著した『ウェブ進化論』を読んでインターネットで社会課題を解決することを志すようになりました。
社会課題の中でも関心が向いて行ったのが教育です。その原体験になったのは2008年頃、MITやハーバードなどの世界最高峰の授業を無料でオンライン受講できるサービス、MOOCsが誕生したことだったと思います。当時僕は地元山形を離れ東京で大学生をしていたところだったのですが、「これからは場所を選ばず教育にアクセスできる時代だ」と衝撃を受けたのです。2010年には梅田さんの著書『ウェブで学ぶ』執筆のお手伝いをしました。

その後大学を辞めてイギリスへ留学しました。合間にアフリカ・ケニア・インドなどを旅しながら学校訪問をしていたところ、直面したのが教育格差です。たとえば、ある地域では一番近い学校へ行くのに2時間かかり、しかも行ってみたら先生がいない。そんな状況に愕然としたのですが、同時にそんな場所でも人々はスマホを持ち始めていたことに気づいた。「これで教育が届く!」とインターネットと教育を掛け合わせることの可能性を感じました。

そんな時、DeNA共同創業者である渡辺雅之さんとロンドンで出会い、Quipperの創業に至ったんです。そこで今野さんとご縁ができました。

今野:ある時、知人の経営者から「DeNA創業メンバーの1人で、南場智子さんが最も信頼する弟分が起業しようとしている。一度、話を聞いてみてくれないか」と相談されて。我々はあまり早いステージの会社に投資をする方針ではなかったのですが、その渡辺雅之さんは、「マッキンゼー・3人の天才」と言われてるうちの1人だというので興味を持ち、話をしてみることになりました。

本間:渡辺さんは直前までカレー屋を開くつもりで修行していたらしいのですが(笑)その後、もともと課題感を持っていた教育格差を解決すべくQuipperに方向転換されたそうです。

今野:お話を聞くと「スマホ時代だから教育が届けやすくなる」「プロダクトは、漢字ドリルや計算ドリルを応用した反復練習式のe-learningサービス。ドリル式は日本固有のものだが効果があるので、グローバルでチャンスがある」と。ならば確かにアドバンテージがありそうだと投資を決定しました。そこで渡辺さんに会いに渡英したら「メンバーにロンドン大学の学生がいますので案内させます」と紹介された方が本間さんでした。南場さんが渡辺さんを弟分として可愛がっていたのと同様に、渡辺さんは本間さんを弟分として可愛がっていらっしゃいましたね。

本間:南場さんが起業したのが36歳ぐらい、その頃の渡辺さんは23、4歳ぐらいだったそうです。対して渡辺さんがQuipperを起業したのは36歳ぐらい、僕はその時23歳だったんです。今思えば、DeNA創業当時のご自身を重ねていたのではないかと思います。

今野:当時の本間さんは、渡辺さんレベルのスピード感と量で仕事をふられても、貪欲に吸収されていたようでした。とはいえ、その後フィリピンとインドネシアを開拓していく際、渡辺さんはフィリピンの全てを本間さんに任されて……正直、恐ろしい指示だなと(笑)。しかし最終的には、現地で『Quipperをやる』という言葉が『宿題をやる』を指す意味になったというぐらいですから、本間さんは見事に仕事を成し遂げられましたね。

本間:インドネシアにはAKB48の姉妹グループのJKT48というアイドルグループがいるんです。JKTの人たちが「今日Quipperやんないと」とSNSでつぶやくぐらい、日常に入り込むことができました。

今野:その後Quipperはリクルートに買収されましたが、この経験で大手企業の事業のつくり方も学べたのではないですか?

本間:スタディサプリの立ち上げメンバー・山口文洋さんからは、社内での新規事業の立ち上げ方、事業の通し方、ビジョンメイキングなどを学ばせてもらいました。その後スタディサプリは、リクルートに新卒入社した方のうち8割が配属を希望するほど、魅力ある事業に育ったと聞きます。渡辺さんと山口さんのお2人は恩師と呼べる存在で、いま彼らから引き継いだものを礎に事業をやっています。

――そんなご縁が、Manabieへのグロービス・キャピタル・パートナーズによる投資へと続いていくのですね。

本間:Quipperがリクルートに買われた2015年、今野さんにそれまでについての御礼のメッセージをお送りしました。そして次の連絡は創業から2年後の2021年、Manabieへの投資を決めていただくキッカケになったメッセージです。それまで6年が経っていましたが、今野さんに連絡するときは「然るべきタイミング」だと決めていたんです。

今野:起業時に連絡がなくて寂しいなと思っていたけれど……確かに2021年のあのタイミングがベストでしたね。起業当初は良い意味での試行錯誤段階。我々のファンドの投資方針は「日本に関わる」や「日本の強みを生かす」が前提なので、創業段階ではまだ合わなかったかもしれません。

ジャパンクオリティは、勝てる

――とはいえ、Manabieも通常よりも速いスピードでの投資決定だったそうですね。今野さんは投資家側として、Manabieの何を魅力に捉えていますか。

今野:EdTechはグローバルでも難易度の高い領域とされています。教育は歴史のあるフォーマットなので、ディスラプティブなサービスがマーケットに受け入れられにくいから、というのが私の仮説です。となると、方法はおそらく2つしかない。今の人たちに寄り添ってやるか、自分たちで一から学校をつくるか。Manabieは両方やり、しかも、売上が順調に上がっています。特に前者は強みでしょう。多くのEdTech企業は、先生方がプライドと情熱を持って向き合っている教務そのものを一気に変革しようとしてしまい、困難にぶつかります。しかしManabieは教務から校務まで、一貫してそれらを「楽にする」サービスを提供している。コロナ禍が偶然にも機会となりましたが、稀に見る好実績を上げており、今後も期待できる。そこを評価しました。

――グローバルで実績を上げた後に日本に参入されて、日本の教育業界特有の課題を感じられることはありますか?

本間:課題より「武器」を見出しています。製造業など他の業界もそうだと思いますが、日本はリアルのオペレーションが洗練され、完成されています。例えば、日本でセンター試験の刷新となると数年単位でのプロジェクトとなり相当大変ですが、東南アジアだと、もともとのシステムがそんなに良くできてないので、半年ぐらいで作れるのではないかと思います。ただし、東南アジアをはじめほかの新興国も、今後はより洗練された仕組みが必要になってくるでしょう。そこで、日本が磨き上げたソリューションは必ず役に立つはずです。

深川:Manabieにはぜひ「国境を超えた教育のインフラを創る」チャレンジを全うして頂きたいと思っています。そして、そのチャレンジをご一緒していくのがとても楽しみです。

今野:本当に、期待しかないですね。教育業界はもっと生産性を高めるべきだと言われ続けてきたけれど、教育の本質を考えれば、単にフォーマット化するのは難しいし得策ではない。「教育者を支えるインフラをアップデートする」というアプローチは非常に効果的だし、グローバルでのベストプラクティスを日本の高い水準が反映したプロダクトとして世界で提供できるようになれば、日本人がアジアに向けてやる必然性もあると感じます。

――最後に、本間さんがこれから創りたい世界とは?

本間:あらためて、教育機関のデジタル化をサポートするのが、Manabieのビジョン。まずはそれを徹底してやっていきたいと思っています。その先の、全てがデジタルになったときの教育は、また形が変わるでしょう。例えば日本の教育機関がインドネシアの教育機関に教えるとか、その逆も然り。生徒のデータも、小学校から高校・大学まで全部ずっと一気通貫で溜まっていったり、最初からキャリアと結びついたような教育が実現されたりといったこともあるかもしれません。そんなデジタル化された世界における教育の再定義に関わっていきたいですね。

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