成長性の財務指標には、売上高成長率、利益成長率、総資産成長率などがあります。総資産成長率は単独で評価されるよりも、売上高成長率あるいは利益成長率とのバランスで評価されることが多いのではないでしょうか。資産に投じたおカネが有効活用されて、しっかりと売上、利益の成長につながっているかどうかという観点です。
さて、ここからは成長率の中でもおそらく最も重視される売上高成長率について説明します。売上高成長率は、一般に以下の計算式で表されます。
売上高成長率(%)=(当年度売上高-前年度売上高)÷前年度売上高×100
なお、少々ややこしい計算式ですが、複数年度間における年度ごとの売上高成長率を算定する際には以下で計算されます。CAGR(Compound Average Growth Rate)と言います。
売上高成長率は高い方がよいと言えます。では、どの程度高ければよいと言えるのでしょうか?売上高成長率は景気の影響を受けます。好況期には売上高成長率は高く、不況期には低くなる傾向があります(マイナス成長も含みます)。また、業界によっても景気の影響度合いは異なります。たがって、景気動向を無視した成長率の比較や異業種間の比較は意味を持たない場合があるので注意が必要です。また、事業や製品にはライフサイクルがあります。成長期であれば、売上高成長率は高くなりますが、ライフサイクルが成熟期、衰退期に移行すれば売上高成長率は低くなります。
M&A(企業買収)も売上高成長率に影響を及ぼします。売上高成長率が急に伸長した場合、M&Aが要因のケースが少なくありません。このように、売上高成長率は一概に何%であればよいということではなく、相対的な指標と捉えるべきでしょう。また、成長期には、設備投資や運転資本投資が先行して資金繰りが圧迫することもあるため留意が必要です。
売上高成長率を比較・評価する際には、比率の高低の要因である事業活動を意識すると売上高成長率が一過性のものか、構造的なものかの判断に繋がります。一方、投資家は会社に継続的な成長を期待するものです。経営者としては、事業や製品のライフサイクルを念頭に置き、次の成長の柱となる新事業や新製品の開発を進めることが望まれます。
会計ルールの選択や改正も売上高成長率に影響を及ぼします。例えば、工事売上に関して、工事完成基準(工事完成時点で売上計上)から工事進行基準(工事の進捗状況に応じて売上を段階的に計上)へ売上計上基準を変更すると、売上計上のタイミングが早期化されます。また、会計基準を日本基準からIFRS(国際財務報告基準)へ移行すると、百貨店、広告代理店、商社などの業種によっては売上高が大幅に減少することがあります。大幅な売上高の変動が見られる場合は、会計ルールの変更の影響の有無をチェックするとよいでしょう。