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社外取締役に求められる変化とCSV経営―第2回コーポレートガバナンス・サミット前編

投稿日:2022/02/11更新日:2022/02/15

目次

コーポレートガバナンスに関する議論が、かつてないほどの高まりを見せる中、2021年9月に第1回コーポレートガバナンス・サミットを開催。日本を代表する経営者と社外取締役の皆様をお招きし、企業のガバナンス体制をいかに構築するかについて議論し、好評を博した(第1回講演レポート)。今回その第2弾として、2021年12月16日に行われた「ガバナンスを担う役員が押さえるべき経営の論点とは」の概要を紹介する(全2回、前編)。後編はこちら

【講演】社外取締役に求められる役割と資質の変化について

柴田彰氏(コーン・フェリー・ジャパン コンサルティング部門責任者、シニア クライアント パートナー)

コーポレートガバナンス・サミット

本セッションのオープニングでは、国内外企業の取締役会コンサルティングの豊富な実績を持つコーン・フェリーの柴田彰氏が登壇。攻めのガバナンスを行うにあたって、今後取締役に求められる要件などについて語った。

取締役会の4つの発展段階

まずは、グローバルな調査結果から、企業の取締役会には、次のような4つの発展段階があることを紹介した。

コーポレートガバナンス・サミット

「注目すべきは、4つの発展段階ごとに取締役会の構成が変わっていくことである」と、柴田氏は強調する。

  1. 基礎段階…健全な視点からコンプライアンスチェックをかけられる、独立性を有する社外取締役を一定数入れること。
  2. 成長志向…M&Aや海外成長など企業の成長戦略に合わせて、それに従った能力を持っている取締役を選んでいくこと。
  3. 変革実現…トランスフォームの方向性に合わせて、これまでとは全く違った資質や能力の社外取締役を招き入れること。
  4. 永続的な発展…よりサステナブルな発展に向けて、ワールドクラスの知見・洞察、そして多様性な視点を有する取締役会の構成を考えること。

「多くの日本企業は第1段階(基礎段階)か、第2段階(成長志向)レベルだと思います。そこから第3段階(変革実現)や第4段階(永続的な発展)に移行していくためには、取締役会の構成を大きく変え、より中長期的な企業価値向上に貢献する取締役会に進化していく必要があります

取締役選定の3つの変化

続いて柴田氏は、経済産業省がまとめた調査報告書をもとに、日本の現役経営者(後継者、社長、CEOなど)が、社外取締役にどんなことを求めているのかを解説。

この調査結果から見えてきた顕著な特徴は2つである。

「今まで主眼になっていた『リスク管理』に対する期待値が下がってきたこと。もう1つは、『経営に関する助言や指導ないしアドバイスをより求めている』ことです。このことから、企業の成長にあたって、本質的な議論を経営者はより求めていることが見えてきます」

最後に、コーン・フェリーが2017年以降にグローバル規模で取締役の選任に関するトレンドを追っていることを紹介(下図)。

コーポレートガバナンス・サミット

グローバルなトレンドの影響を受け、今後日本企業の取締役選びにも変化が生じることが予想されるポイントは、①業界経験の需要の変化、②企業経営の多様な専門性を求める、③CXOへの需要の高まりの3つだという。

「ガバナンスの先進国であるアメリカでは、こうした時代の潮流が加速しているため、これから守りから攻めのガバナンスになっていく企業が増えていく日本では、社外取締役には、より『専門性』『多様性』『企業での経営経験』が求められてくるでしょう」と、柴田氏は締めくくった。

【講演】超VUCA時代を乗り越える「CSV(共有価値の創造)経営」とは

チャールズ・レイク氏 (アフラック 生命保険株式会社 代表取締役会長)

コーポレートガバナンス・サミット

続いて、アフラック生命保険株式会社 代表取締役会長のレイク氏が自社の事例も交えながら、共有価値の創造(CSV:Creating Shared Value)ガバナンスについて講演を行った。

超VUCA時代に攻めのガバナンスを実践するためのCSV経営

2つの柱となるコード(スチュワードシップ・コード/コーポレートガバナンス・コード)が融合して、新しい攻めの経営や稼ぐ力を上場企業に求めるようになった令和時代の企業統治改革。レイク氏が強調したのは、一連の改革は日本経済全体の好循環の実現を目指すものであり、企業には合理的で健全なリスクテイクを促す「攻めのガバナンス」が問われているということ。

超VUCA(Volatility(不安定性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))な経営環境に加え、ステークホルダー資本主義が新たな潮流となるなか、企業の経営戦略はどうあるべきか。そこで、有効な戦略フレームワークとして挙げたのが、「CSV経営」だ。「共有価値の創造(CSV:Creating Shared Value)」とは、ハーバード・ビジネススクール教授のマイケル・ポーター氏、FSG共同創業者のマーク・クラマー氏が金融危機の直後に発表した論文で提唱された考え方のこと。

「CSVとは、社会のニーズや課題を深く洞察し、独自の資源や専門性を活かしながら企業が向き合うべき課題解決を行うことで社会と共有できる新たな価値を創造すること。これは当然社会に必要とされるビジネスであるため、経済的な価値が生み出されます。社会が抱えている課題を解決する共有価値を創造し、経済的な価値を生み出していけば、持続的な成長につながる企業のビジネスモデルになるという考え方です」と、レイク氏は補足した。

論文では、「社会的ニーズを常に探し求めることで、既存市場において差別化とリポジショニングのチャンスを見出し、それによってこれまで見逃していた新市場の可能性に気づくことができる」とも書かれており、「CSVは超VUCAな経営環境に対応する効果的な戦略フレームワークである」と、レイク氏は指摘した。

CSV経営の実践を支える5つの要素

コーポレートガバナンス・サミット

ここから、CSVという経営戦略フレームワークを支える5つの要素について、レイク氏が、自社の事例も交えながら、一つひとつ紐解いていった。

コアバリュー、パーパス、企業文化

役職員が共有する価値観や行動様式であり、企業文化が戦略の実行性・実効性を左右する。そのため、企業の基本的な価値観が、社員にとって意識せずとも当然の基本的な前提認識として存在するという状況をどこまで作ることができるのか、すなわち「コアバリューの醸成、浸透、継承」が経営にとって重要なテーマになる。

「アフラックでは、『がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい』という創業の想いなどに表されるコアバリューに基づく企業文化の醸成、浸透、継承に向けて取り組んでいます。例えば、行動倫理憲章において経営陣自らの言葉で大切なコアバリューを整理し、それを全役職員が理解した上で行動することを、毎年誓約しています。

また、eラーニングを使った継続学習プログラムを通じて、全役職員に理念に基づいた戦略を共有し、その戦略をもとに様々な重要テーマについて、1年を通して取り組み、確認していくプロセスを展開しています」

ノブレス・オブリージュ

新渡戸稲造博士の著書『武士道』にも出てくる言葉「ノブレス・オブリージュ」は、リーダーに求められる品格・素養のこと。本来は「高貴な者の義務」という意味のフランス語だが、現代風に言えば「高い役職に伴う義務と責任」である。

「CSV経営を実践するリーダーは、自らの職務における義務を認識し、責任を果たしていく覚悟を持って業務を行うことが求められる」と話すレイク氏。リーダーが修養すべき資質として、新渡戸博士の教え「七つの徳(正義、勇気、仁、礼、誠、名誉、忠節)」を例に挙げ、鍛錬し続けることの重要性を語った

さらに経営陣には、「徳とコアバリューの実践に基づくぶれない判断」と「多様性を重んじる自由闊達で建設的な議論を確保し、組織をまとめ、結果を出していくこと」が求められるという。

「リーダーとして『現実的な理想主義者』『合理的で愚直な行動派』という相矛盾するコンセプトをしっかりと現実社会の中で考えながら、前に進む意識・行動が重要であると考えます」

実行性・実効性が高いコーポレートガバナンス態勢

CSVガバナンスを支える第一の柱。ここでは、重要な3つの視点と、レイク氏のコメントを紹介する。

  1. 機関設計の選択・ガバナンス態勢(法律論ではなく経営戦略論)

「会社の機関設計にはガバナンス戦略が表れます。機関設計を法律論として捉えるのではなく経営戦略論として認識することが重要です。そのうえで、取締役会と業務執行部門とが機能分化に基づきながら本質的な形で協業することが重要になります。「自由闊達で建設的な議論」は、経営戦略としてのガバナンスの高度化につながります」

  1. グループガバナンス(各国・地域の文化・法制度・商習慣も考慮)

「『中央集権型』や『分散型』などのベストプラクティスがありますが、最終的には各企業の企業文化に基づき、事業を行う国・地域の文化・法制度・商習慣も考慮して設計することが重要です」

  1. 3ラインモデル*(攻め・守りのガバナンスの基盤)

「第1ラインは事業部門による自律的管理、第2ラインは管理部門による牽制、第3ラインは内部監査部門による検証。それぞれのラインが責任を果たし、機動的な業務執行が実現できる態勢を整えることが重要であると考えます」

*内部監査人協会(IIA)提唱のモデル

デジタル社会における業務執行の機動性(アジリティー)

CSVガバナンスを支える第二の柱のキーワードが「アジャイル」だ。

アジャイルとは、もともとはシステム開発の分野で使われる言葉であり、最小単位で価値を提供して、顧客のフィードバックに基づき、いわゆるデザイン思考によって繰り返し改良を重ねていく手法のこと。これによって、柔軟かつ機動的にお客様の期待に応え、CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客が驚くような体験)が実現できるようになるという。

「アフラックでは『Agile@Aflac』を掲げ、働き方のみならず、会社の仕組みそのものの変革にも取り組んでいます。例えば、様々な組織からメンバーが集まる機能横断的なチームを組成し、CX(カスタマーエクスペリエンス)、デザイン思考を前提として、機動的に課題を解決するために大胆な権限委譲を行っています。そのうえで、代表取締役社長を議長、DXO(統括担当役員)をメンバーとする『Agile@Aflac』のための会議体を設置し、監督・モニタリング、経営視点でのアドバイスを通じて機動的な価値創出を実現しています」

このような、機動性を十分に確保した対応を行うには、「代表取締役社長をはじめとした経営陣によるコミットメント、意識の改革、そして仕組みが大事だ」と、レイク氏は話す。

自尊自立型の人財マネジメント制度

CSVガバナンスを支える最後の柱は「人財マネジメント」である。

人生100年時代を迎え、社員は継続してリスキルが求められ、人事制度も進化していく必要がある。1955年、米国で創業した時代から「人財を大切にすれば、人財が効果的に業務を成し遂げる(“If we take care of our people, the people will take care of our business.”)」という言葉を大事にしてきたアフラック。

アフラックの人財マネジメントでは、“意欲と能力のある人財”が最大限に力を発揮しながら、主体的にキャリアを構築できる環境を実現するために、「“職務”と“成果”に報いる報酬体系」、「タレントマネジメントの強化」を行ってきた。

「“職務”と“成果”に報いる報酬体系」では、「金銭的なリワード」として日本の大手企業をベンチマークに競争力のある水準を整え、「非金銭的なリワード」としては、やりがいのある仕事、キャリア形成の応援、安心・安全な環境を提供してきた。それによって、高い目標へのチャレンジを促し、成長への貢献意欲を刺激する報酬パッケージを用意した。

コーポレートガバナンス・サミット

さらに「タレントマネジメントの強化」では、「キャリア形成支援」「実務力強化支援」「自己啓発支援」など、「自尊自立」に資する制度・トレーニングを提供。レイク氏は次のように語る。

「例えば、『キャリア形成支援』にあたっては『職務記述書の公開』や『キャリア開発計画書の作成・運用』を行っています。自分が将来目指すリーダーにはどのような職務やスキルが求められるのかを『職務記述書』から理解した上で、今後に向けての自分のキャリア開発の計画書を作成することができます。こうした仕組みを活用して一人ひとりの社員が自律的にキャリアを磨き、『ジョブポスティング』という制度等も活用することで、自分のやりたいポストに異動することが可能になる。これらを通して、会社は社員が描くキャリアの実現を支援していきます」

【Q&A】守りに入ってしまう社員をどのようにマネージして、攻めの姿勢に変えられるのか

ここからは、参加者からのご質問にレイク氏が応えた質疑応答の事例をいくつか紹介していく。

コーポレートガバナンス・サミット チャールズ・レイク アフラック

Q:大手企業では、守りに入ってしまう社員も少なくありません。そういう方のモチベーションを上げるために、どのようにマネジメントしているのでしょうか?

A全ての企業で起こりうることだと思います。歴史のある企業であればあるほど、これまでの成功体験が呪縛となって、改革を遅らせることもあります。そこで、アフラックでは、社員一人ひとりが自分で考えられる環境を作っています。

例えば、様々な社会課題の中でも、我々アフラックは、がん、医療、介護の分野において、お客様の「生きる」を創るために、お客様のペインポイントをどう受け止めて解消し、感動する商品・サービスにつなげていくのか、すなわち、我々が向き合うべき社会課題において、どのようにCSV(共有価値の創造)を実践するのかを社員に問いかけています。そのうえで、その実践に向けてボトムアップでチャレンジできる環境を社員へ提供することで、取り組んでいる社員がやりがいを見出していく仕組みを構築しています。CSVの実践に向けて変化をいとわない社員は果敢に挑戦します。その文化が醸成、浸透されていくなかで、次第に変化を求めていない社員たちも刺激を受け、変わっていくことができる。そういう環境を大事にしています。

Q:アジャイル組織は、縦割り組織よりも多くの専門家が必要になるのではないでしょうか。実際弊社でも改革に携わる人はとても忙しくなりがちです。人員の効率性を維持しながらトライブを進めるうえで、どのような点に気をつけるべきでしょうか?

A:アフラックでは、すべての案件にアジャイル組織を導入しているわけではありません。取締役会でアジャイル組織に適したテーマや課題を選びます。そして、社員がアジャイルチームへさまざまな関わり方ができるようにしています。100%アジャイルチームにコミットする人財もいれば、業務の一部を担う人財もいます。アジャイルチームのメンバーも案件が無事完了すれば、通常業務に戻ります。柔軟に最適な組織・仕組みをつくり、繰り返し運用していくことが大事だと思います。

コロナ禍において生命保険業界では、従来型の店舗で直接会って保険商品のご提案をすることが困難になりました。そこで、オンラインを活用した相談ができるようにするために、『Agile@Aflac』の枠組みで対応策を検討し、検討開始から6カ月で、オンラインで保険商品をご提案し、電子サインによって保険契約を完結できるシステムを開発しました。

お客様のペインポイントを理解して、お客様が喜ぶサービスにつなげていく。まさに営業・マーケティング部門、契約サービス部門、法務部門などが連携して、柔軟かつ軌道的に顧客価値を生み出していった実践例だと思います。

後編に続く

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