取締役会の在り方とは―コーポレート・ガバナンス改革を考える 前編

2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂・施行され、プライム市場に上場する企業は形式・実質面共に取締役・執行役員改革が求められることに。企業価値を高めるために、今後日本企業はどのようなガバナンス体制を構築していけばいいのか。2021年9月24日に行われたコーン・フェリー/グロービス共催コーポレートガバナンス・サミット「企業のガバナンス体制をいかに構築するか」の概要を紹介する(全2回、前編)後編はこちら

取締役会だけでなく執行体制の見直しまで踏み込んだ改革が必要 

柴田彰氏(コーン・フェリー・ジャパン コンサルティング部門責任者、シニア クライアント パートナー)講演

本セッションのオープニングでは、グローバルで取締役会コンサルティングの豊富な実績を持つコーン・フェリーの柴田彰氏が登壇。コーポレート・ガバナンスを通じて経営を高度化させるための論点について説明した。

2021年6月に東京証券取引所から発表されたコーポレートガバナンス・コードの改訂・施行により、本腰を入れてガバナンス改革に乗り出す日本企業が増えてきた。社外取締役の人材不足が各所で指摘されており、これを機に取締役会の構成を再考するために、取締役のスキル・マトリックスから着手という企業も出てきている。しかし、まだまだ形式的なガバナンス対応に留まっている企業が多いと、柴田氏は警鐘を鳴らす。

「日本企業では、監督と執行の未分化という問題があり、取締役と執行の完全分離は避けて通れない検討テーマになってきています。そのため、ガバナンス改革は取締役会だけではなく、経営執行体制の見直しまで踏み込まなければなりません」

つまりガバナンス改革では、取締役会と経営執行体制の双方をセットで考えていく必要があるというのだ。そこで、まず取締役会においてポイントになるのが「取締役会が目指すべき姿」である。グローバル企業における取締役会をリサーチすると、次の4つの発展段階があることが分かった。

・第1段階…コンプライアンス上のリスクをヘッジするための「基礎段階」

・第2段階…全取締役が企業の長期目標と戦略を共有し、将来の成長を主導する「成長志向」

・第3段階…新たなビジネスモデルと組織への変革を取締役会が後押しする「変革実現」

・第4段階…高次な視点からガバナンスを行える「真のダイバーシティー」を持った「永続的な発展」

最終的な発展形にある「真のダイバーシティー」については、柴田氏は次のように補足した。

「多くの企業ではまだまだ外形基準のダイバーシティーを整える傾向が強いですが、本来のダイバーシティーは進化論的なアプローチで考えるべきだと思います。企業を永続的に発展させていくために、どういう論点が想定されて、どういう社外取締役を選ぶべきか、自社なりのロジックを立てていくことが重要です。GAFAの取締役会などを見れば分かるように、多様な意見こそ自分たちを進化させることができます。日本企業もこうした発想をもっとキャッチアップしていくべきだと思います」

一方、経営執行体制は、人に紐付いた「メンバーシップ型」から脱却していく、次の4つの発展段階が考えられるという。

第1段階…執行役員の明確な定義がなく、“人”に紐付いた「メンバーシップ型」

・第2段階…執行役員をポストと捉え、機能を明確にする「ジョブ型」の導入

・第3段階…各役員ポストの人材要件を定義して、「適材適所」を強化

・第4段階…ビジネスモデルの変革に必要不可欠な「CXO制」の導入

「ここで注意すべきは、執行体制を段階的に進化させることです。メンバーシップ型からいきなりCXOを導入して、役割が明確にならないまま組織を再構築しても、本当の意味でも経営の機動性は高まりません。上記の4つのステップを踏んで体制を整備していくことが大切です」

経営者として社外取締役に期待すること

根岸秋男氏(明治安田生命保険 取締役会長)講演

続いて、先進的なガバナンス改革を実践している明治安田生命保険の根岸氏が事例をもとに社外取締役に期待することについて講演を行った。最初にこれまでの同社のコーポレート・ガバナンスの高度化への取り組みを説明。

同社は2004年1月に旧明治生命と旧安田生命が合併し、相互会社として明治安田生命が誕生した。しかし、2005年に2度にわたる行政処分を受けてしまう。これを機に2006年7月から取締役の過半数を社外取締役とする委員会設置会社としてコーポレート・ガバナンスを刷新。

自律ある経営を目指して、コーポレート・ガバナンスの高度化にコミットして、これまで取り組んできた。同社の改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応については、相互会社に該当しない原則を除いて、全74原則がコンプライ(順守済み)と評価された。

根岸氏はこの8年間の社長経験を振り返って、社外取締役に期待することが2つあるという。

「1つは、明治安田生命のフィロソフィーに沿った経営の『健全な成長軌道』に関する妥当性のある評価をいただけること。ちなみに『健全な成長軌道』とは、適切な内部管理体制のもと、経営のPDCAサイクルが的確に機能していることを指します。

もう1つは、『新たな刺激・気づき』を注入してもらえることです。社外取締役は、コンプライアンスやリスク管理、さらにはビジネス領域等において、経営者のアクセルやブレーキに繋がる効果的な作用を促してくれます」

後編では、多くの大手・外資系企業で社外取締役を務める岡俊子氏と平手晴彦氏を迎え、日本企業が取り入れるべきガバナンス体制の要諦などについて、グロービスの西恵一郎をモデレーターにディスカッションが行われた。後編に続く。

RELATED CONTENTS