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企業を根本からつくりかえる―CX(コーポレート・トランスフォーメーション)を実現する組織・人創り

投稿日:2021/11/23更新日:2022/12/07

企業の人材・組織開発の責任者(CLO:Chief Learning Officer)を対象としたカンファレンス「CLO会議」が2021年9月に3日間にわたりオンラインで実施された。本レポートでは、3日目の「CX(コーポレート・トランスフォーメーション)を実現する組織・人創り」の概要を紹介する。

既存事業で大きな成果を出しながら、新規事業でこれからのビジネスモデルを創造していくという、2つをパラレルに実行しCXを推し進めていくことが求められる今。この激動の時代背景を読み解き、変革しながら、成長できる組織・人材戦略をいかに構築していくのか。CLOが担う役割や、CXにおいて重要となる、新規事業と既存事業にバランスよく取り組む『両利きの経営』について、グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター 花崎 徳之が語った。※肩書は記事公開当時のもの。

企業の細胞や機能を変えていくのがCLOの役割である

 本プログラムは冨山和彦氏の『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』(‎文藝春秋)と、チャールズ・A・オライリー氏/マイケル・L・タッシュマン氏の『両利きの経営』(東洋経済新報社)の2冊がベースになっている。

「この2つの書籍に共通するテーマは『経営マター』です。そしていずれも、重要なのは経営トップの力量だと述べています。今回のセミナーでは、経営マターにCLOとしてどう対応すべきかについて考察を深めていきます」(花崎)

CX(コーポレート・トランスフォーメーション)とは、企業を根幹からつくり変えること。国内では、三越、任天堂、ヤマトホールディングス、海外ではノキアなど、CXにより創業のビジネスから大きく転換した企業は非常に多い。

今や、CXは企業の『成長』のためではなく『生存』のために必要不可欠だ。そして、昨年度来のCOVID-19のように急激な環境の変化への適応が強いられる中では、トップだけではなく、組織全員の判断・行動が加速度的に求められる。花崎は、グロービスが行ったCXの取り組みにおけるエピソードを交え、CLOの役割について次のように語った。

「グロービスも『この状況下ではどのようなテクノロジーが最適なのか』『ビジネスプロセスを変えると、既存のサービスにどんな不具合が生じるのか』を、現場メンバーの意見・協力をもとに変革していくことで、みなさんにさまざまなサービスをご提供できるようになりました。やはり激動期には、人・組織の進化・転換とCXは不可分な関係にあります。CLOには、企業の細胞や機能を変えていくことが求められるのです」

既存の資産や能力を新規事業に活用する「統合」の重要さ

『両利きの経営』は、既存事業の拡大を図る「知の深化」と、既存事業の拡大を図る「知の探索」を、いずれもバランスよく「両利き」で取り入れる経営手法を説いた書籍である。この手法においては注意せねばならない点がある。それは、「知の深化」に寄りすぎると、「知の探索」がおろそかになってしまう「サクセストラップ(成功の罠)」という点だ。

出典:書籍『両利きの経営 』を参考に、グロービスにて作成

サクセストラップを防ぐためには、加えて2つを併存させる組織能力が必要になる。そしてさらに重要なのが、「深堀」と「探索」を分離すると同時に、探索側が深堀側の資産や能力をレバレッジ(活用)できるよう「統合」することだという。

「経営層は、イノベーションを起こす組織をどうつくっていくべきかには数多くの議論を重ねますが、既存と新規をどう統合するかまではあまり考えていません。しかし最終的には既存事業のリソースを使いながら新規事業を探していかないと、『両利きの経営』は実現できません。それゆえ「深堀」と「探索」の分離と統合はセットで考える必要があります」(花崎)

【提言】CLOとして意識すべき8つのポイント

本セミナーの最後に、花崎はCXを実現するための組織・人創りにおいてCLOが意識すべきポイントを挙げた。それが次の8つである。

  1. DXを禁句にしたとしても、実現したいことがあるか?
  2. カスタマーエクスペリエンスをテーマにした事業運営ができているか?
  3. Book Smart(≒知識)、Street Smart(≒知恵)を繋げる人材育成・組織開発ができているか?
  4. 「統合=融合」のためのアクションは実行しているか?
  5. “ブランド=理念”に応じたアクションを展開する組織創りができているか?
  6. 「キャッシュフロー」を確保して、“稼ぐ力”を人・組織に浸透させているか?
  7. 社員のキャリア自律と好奇心の醸成に力を注いでいるか?
  8. CLO自身がCXの担い手となるための学習と自己変革を行っているか?

1. DXを禁句にしたとしても、我々に実現したいことがあるか?

「DX」によって、見えなかったものが見えるようになり、多くのことが可能になる。しかし、デジタルは決して魔法ではない。まずは、自分(自社)のやりたいことを設計する。次にビジネスを考える力の向上。更にその力の活用の場を経営全体としてつくる。DXに取り組もうという考えを先立たせずに、前提としてこの3点にまず着手することが重要となる。

2. カスタマーエクスペリエンスをテーマにした事業運営ができているか

行動データを高頻度に取得できるセンサーなどが普及すると、データ化できない行動がなくなり、全てがデジタルの世界に内包されていく。こうなると顧客にとっては、何を欲しているかわざわざ言わなくても理解され、テクノロジーを意識させずに喜びや驚きの体験を与えてほしいという願望が生まれてくる。

企業がこうした顧客の要望に応えていくためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)ではなく、カスタマーエクスペリエンス=顧客体験がどうあるべきかを社内で議論することが極めて重要になってくる。

3. Book Smart(≒知識)とStreet Smart(≒知恵)を繋げる人材育成・組織開発ができているか?

「経営学やデジタル技術、地政学など、研修や自己学習などで学び得た知識を『Book Smart』、仕事などの実際の経験から得た知恵を『Street Smart』と呼びます。このどちらか一方が突出しているのではなく、両方がつながった組織や人材育成を意識的につくっていくことが今後重要になってきます」(花崎)

4. 「統合=融合」のためのアクションは実行しているか?

『両利きの経営』に記載があったように、既存事業のリソースを、どのようにして新規事業に統合していくのかが課題となる。現状CLOとしてできていることを、次の5つのポイントで確認してみる必要がある。

  • 新規チームは既存のビジネスモデルを理解しているか?
  • 既存チームは新規チームのチャレンジを理解し、updateできているか?
  • 新規と既存チーム相互の信頼(感情面そして理屈面)を育んでいるか?
  • 新規と既存の双方のチームがいずれもチャレンジしているか?
  • 経営メンバーが上記をすべて意識して発言・行動しているか?

出典:書籍『両利きの経営』を参考に、グロービスにて作成

5. “ブランド=理念”に応じたアクションを展開する組織創りができているか?

AT.カーニーのレポートによると、先進国では大手企業・ブランドへの信頼が軒並みダウンしている。一方で、インターブランド社という世界的なブランディング専門会社の調査では、2020年度の1年間で2桁成長をしたブランドは、「Empathy(共感)」「Affinity(愛情)」「Agility(俊敏力)」の3つの要素が卓越しているとわかっている。

「この3つの要素は、COVID-19の影響を大きく受けていると思います。人々が恐怖のなかで、どういう『共感』や『愛情』をつくるかを考えているか。また、急激に世の中の価値観や生活様式が変わったなかでも『俊敏』に動いているか。これらをクリアしている会社は、デジタルやリアルにかかわらず、地位を上げています」(花崎)

6. 「キャッシュフロー」を確保して、“稼ぐ力”を人・組織に浸透させているか

企業が新規事業にチャレンジできるのは、既存事業(本業)でキャッシュを生み出しているからである。この稼ぐ力を、いかに意図的につくれるかが重要であり、COVID-19級の新たな危機到来の際には、生き残ることができる組織どうかの基準にもなりえる。

7. 社員のキャリア自律と好奇心の醸成に力を注いでいるか?

目まぐるしい変化にも柔軟に対応したり、先んじて新たな事業に取り組めたりという組織をつくるには、社員がキャリアを自律的に築いていくためのきっかけづくりや、好奇心の醸成が必要となる。

例えば、社外勉強会・ビジネススクールへの派遣、ワークショップ、留学・留職など社外の異質な他者・知見・価値観に触れる機会を提供することで、社員の能力・価値観の変容を促すことが可能となるのである。

8. CLO自身がCXの担い手となるための学習と自己変革を行っているか?

CLO自身もいろいろなことに好奇心を持って深く関わり、戦略の議論や思考ができるようトレーニングを続けることで、人材育成・組織開発の点からCXをけん引していくことが求められる。花崎はこう締めくくる。

「戦略は組織能力に従い、組織能力はCLOが規定する。ですからCLOのみなさんは今何ができているのか、そして、これから何をしたいかということが大事になってくるでしょう」

<本セミナーにおけるポイント>

  • CXは企業の『生存』のために必要不可欠。激動期には人・組織の進化・転換とCXは不可分な関係にあり、企業の細胞や機能を変えていくのが、CLOの果たすべき役割である。
  • 企業にとっては「既存事業を深堀する力」と「新しい機会を探索する力」、そしてこの異なる2つを併存させる組織能力が必要。さらに、探索側が深堀側の資産や能力を活用できるよう、2つを分離して考えると同時に「統合」させて考えることが重要である。
  • 「自分たちが実現したいことを持っているか」「カスタマーエクスペリエンスをテーマにした事業運営ができているか」「『統合=融合』のためのアクションは実行しているか」など、CXを実現するための組織・人創りにおいて8つのポイントをCLOは意識すべきである。

2021年CLO会議レポート、DAY1DAY2はこちらから

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