なくなりにくい仕事の共通点とは――藤原和博氏が語るAI時代にも価値を創出する働き方 

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グロービス経営大学院の在校生と卒業生が一堂に会し、各界で活躍する経営者や政治家、学者の方々を呼んで開催したカンファレンス「あすか会議2017」。その人気セッション「10年後、君に仕事はあるのか?~AI時代にも価値を創出する働き方とは」をお届けします。(全3話) 動画版はこちら>>

まずはアクティブ・ラーニングを押さえる


藤原和博氏(以下、敬称略):
この講演を聞いていただくと、おそらく会場にいる大半の人の人生が変わると思います。のちほどオンラインで見る人も同じように変わりますから、そのつもりでいてください。では早速、“敎育界のさだまさし”が1時間番組でお届けしますが(会場笑)、まずはストレートに、「この10年で最大の社会変化は何か」というところから入りたいと思います。

「アクティブ・ラーニング」といいまして、今日皆さんには頭をぐるぐる回転させてもらいながら、会場で隣近所にいる3人から5人とブレストしてもらうということを、恐らく5回以上行っていきます。いずれにせよ、この問いかけは僕が去年も今年も奈良市立一条高校の校長として、入学式で問いかけたものです。式辞で普通の教訓をたれても誰も覚えてないから、「それよりはインパクトを」ということで、「今後10年で最大の社会変化は何か」を、三百数十名の新入生と、その保護者に考えてもらいました。

それをまず皆さんにも1分少々考えてもらいたいんですが、最初にブレストのコツを教えておきます。3~5人がいいです。それでぱっと組んでもらう。ブレストですから知恵出しをしてもらいたい。何が最大の変化になるかについて。

ただ、そこで、えらい人や歳上の人が正解っぽいことを最初に出しちゃうと、若い人たちが意見を出さなくなります。そういう現象が職員会議でも会社の会議でも起きているわけですね。偉い人がなんだか正解っぽいことを最初に言っちゃったら、そりゃあ若い人は「あ、もう俺はいいや」って思いますよね。

では、どうしたらいいか。若い人から知恵をどんどん集めたいなら、皆さんのようなリーダーは、わざとバカなことを言うべきなんです。まず「こうだったりして(笑)」なんて感じでバカなことを言って、笑いを取っちゃったほうがいいです。

だから今日も1周目はとにかくバカなこと、とんでもないこと、起こりそうにないことを言い合う感じにしてください。すると何が起きるか。「あ、そんなんでいいのね」と、気安くなります。それで脳がつながる。じゃあ、脳がつながるとどうなるか。

ブレストっていうのは、佐藤さんと鈴木さんと田中さんが単独で考えてることを言ってるだけじゃだめなんです。それは単なる独り言の応酬でしょ? そうではなくて、佐藤さんと鈴木さんと田中さんの脳が(目の前を指して)この辺に出てきて、そこで混じり合って化学変化を起こす。ブレストというのは、そんな風にして脳をつなげて自分の脳を拡張する技術だから、ぜひバカな意見から言ってください。

僕の場合、ブレストは長くても1分半以上させません。だから、すごいスピードでやってもらいたい。もちろんいろんな変化がありますよね。高齢化もあれば少子化も。どんなものでもいいから挙げてみてください。では、いきましょう。3、2、1、はいどうぞ。

~ブレスト~ 

はい、そこまで。もちろん日本だけで考えたら少子化も高齢化もすごく大きな問題だと思います。ただ、世界中を包み込む変化という意味では、世界の有識者による見解はほぼ一致してると思います。それは、この10年間で地球上の50億人がスマホでつながるということですね。そこにAIとロボットがつながってくる。これ以上の変化はないんじゃないかと思います。

携帯電話でつながるだけなら「ここからアフリカに電話がかけられます。以上。ちゃんちゃん♪」ですよね。でも、スマホでつながるというのはどういうことか。動画でつながるわけなので、ほぼ50億人の脳がつながる状態がつくられた。そういう風に理解したほうがいいんじゃないかと思います。

すでにその現象が表れてます。皆さん分かると思いますが、たとえば、あの『PPAP』の動画がYouTubeで一気に視聴されて、それにジャスティン・ビーバーが「いいね」と言った、みたいな。で、その年のうちに紅白歌合戦に出ちゃう。そういうことがあちこちで起きるということです。分かりますよね? 

我々の親世代や我々世代にとって、未来というのは鉄とコンクリートがつくり出すものなんですよ。高速道路ができたり、そこを車がばんばん走ったり、新幹線ができてそのスピードがあがったり、大型客船が就航したり、鉄とコンクリートから未来が見えました。

ところが今はどうかというと、そうした建設のほとんどはネットのなかで行われています。だから外のリアルな仕事、とりわけ事務系の仕事はどんどんなくなっていくはずです。皆さんのお子さんに至っては、恐らく人生の半分をネット内で暮らすようになるでしょう。そうしてネット内で建設が行われるからこそ、たとえばプログラマの仕事といったものが膨大に増えるという話です。

今の子どもは未来がどんなものになるか、スッと言えない。なぜか。未来像が目に見えなくなっちゃってるんです。ネットのなかやICチップに押し込められて。あるいはiPS細胞やナノテクノロジーのように、最先端の技術はほぼすべて見えなくなってる。そういう意味で、すごく巨大なものが鉄とコンクリートでつくられるという未来を見てきた我々とは、未来の感じ方がちょっと違うわけです。

ちなみに、赤ちゃんから大学生ぐらいまででお子さんを今育てていらっしゃる方は会場にどれぐらいいるの? …あ、半分ぐらいいますね。はい、分かりました。今日はそうした人たちにとってすごく大事な教育上の話もあとで散りばめていきます。

なくなる仕事、なくなりにくい仕事


とにかく、今お話ししたような未来だとすると、なくなる仕事があるはずですよね。あと、なくなりにくい仕事も、新しく生まれる仕事もあるはずです。その3つをばっと考えてもらいたいんですが、なくなる仕事については、1つだけ分かりやすい例を挙げましょう。

鉄道の改札の仕事ってすごくわかりやすいと思うんですよ。昔はハサミでちょきちょき、物理的に切ってたじゃないですか。で、その速さを競ったりしていて、あれに憧れて鉄道会社に入る子だっていたわけです。それが今はどうなったか。自動改札機になりました。そしてプリペイドカードになって、今はスマホで通ってる方もいますよね? 

たぶん、もうあと5年もしないうちに非接触がもっと優秀になるから、(改札口にある)あの見た目の悪い箱みたいなのはなくなっちゃうんじゃないですか? で、電車に乗ったらまず基本料金が「ちゃりん」。降りたところでまた「ちゃりん」みたいな。今アメリカでは「Amazon Go」の実験が行われていますが、ああいう風になるんじゃないですかね。

ああいうことがあらゆるところで起こるという予測のもと、どんな仕事がなくなりやすいのかについて、1分半ほどミニブレストをまた行いましょう。「これはなくなるんじゃない?」「これは意外と残るんじゃないの?」と。いいですか? 3、2、1、はい、どうぞ。

~ブレスト~ 

はい、そこまで。これ、世界中の研究機関が筆頭に挙げているものの1つは、レールの上を走る電車の運転士。都内の「ゆりかもめ」に乗った人は分かると思います。すでにあのモノレールには運転士がいない。そういうものも出てます。

じゃあ、車掌はどうか。これは少し難しいと思います。朝の通勤電車で「ただいま急病のお客様が発生したため、搬出にてしばらく停車させていただきます」といったことがロボットに得意なのかどうか。だから、意外と運転士が先にいなくなって車掌が10~20年生き残るかもしれない。そうなると運転士に憧れて鉄道会社に入った「てっちゃん」は悲惨ですよね(会場笑)。「あれ? 入ったらその仕事がなくなっちゃってた」みたいな。

ということで、実は「なくなる仕事」がある一方、「なくなりにくい仕事」がありそうです。たとえば医者や弁護士の仕事は高度に知的な仕事だという人はいますが、パラリーガルのように判例をがんがん調べるような仕事だったら絶対にAIのほうが早い。

医者の仕事も同じです。診断と治療に分けて考えると、前者の「このがんのケースに一番近いものはどれか」と、世界中のあらゆる学術論文に、あっという間に、しかも多言語であたるということならAIのほうが強いですよね。ご存知の方は多いと思いますが、実際に「IBM Watson」などはすでにアメリカで、実用的ながん診断で活躍しはじめてます。

というわけで、単に高度で知的な仕事なら残るかというと、「どうもそうでもなさそうだ」と。ここ、今日の最大のミソでもありますが、それを次に考えてもらいます。ちなみに、今日は時間がないので新しく生まれる仕事についてはブレストしません。これはもう分かるでしょうという感じです。なくなる仕事が多いということで悲惨な感じで伝えられたりする話題ですが、プログラミングを中心に、新しく生まれる仕事も相当数あります。なので仕事の総数が激減するとは、僕は思っていないんですね。

新しく生まれる仕事としては、たとえばプログラマ以外にもデータマイニングがありますよね。データを比較して皆が見えていな現実を見つけたりするような、そういう仕事はたくさんあります。そういうこともあって今後は統計が大事になるということで、実は小学校6年生の指導要領に統計が、中学から降りてきたりします。

というわけで、新しく生まれる仕事については言わずもがなという感じなんで、今日はなくなりにくい仕事について議論します。今日は1分半ぐらいしかブレストしませんが、この議論を突き詰めると、要は「人間が本来するべき仕事とは何か」という話になります。この点に同意する人は拍手くれる?(会場拍手)これ、非常に大事なんですよ。だからこの話はセッションが終わったあともぜひ引きずっていただいて、今日の夜にでも改めて議論してもらいたいところです。

なくなりにくい仕事とは?

まず、「なくなりにくい仕事」というと、どんなものがあるのか、1分で挙げてください。で、そのあと可能であればそれらの仕事の共通点について考える。そうすれば、「あ、こういう要素があると、なくなりにくいんだな」「こういう要素こそ、人間が本来しなきゃいけない仕事なんだな」という風になるじゃないですか。

これを一条高校の「よのなか科」ではどんな風にやっているかというと、まず、なくなりにくい仕事を一気に挙げさせます。で、挙がった仕事をそれぞれ1つずつ、「ポスト・イット®」1枚に書かせます。それを5人ぐらいが持ち寄ると30枚とか50枚になる。その「ポスト・イット®」をA3紙、またはもう少し大きな白い紙に貼っていきます。

すでに貼られている仕事と同じものを挙げたら、同じ場所にその「ポスト・イット®」を重ねます。先輩が書いたものだろうとなんだろうと気にせず。あと、近い仕事は近くに貼って、遠いものは遠くに貼っていく。これをやっていくと、たとえばKJ法のような難しい分類法を知らなくても、なんとなく5つや6つの群に分かれます。そこで、たとえば最大の群について「共通の要素って何?」と。で、それがたとえば「優しさ」なのか「思いやり」なのか分からないけど、そういうことも含めて議論が深まるわけです。

今日は時間がないので「ポスト・イット®」は使いませんが、皆さんには、なくなりにくい仕事を1分半ぐらいで一気に挙げてください。また、その共通点があれば「こういう要素が大事だよね」と。「AIとロボットに仕事を奪われないためにはこういう要素が大事だし、強めなきゃいけないね」と。そこまで導いていければすごいと思います。では、いきましょう。3、2、1、はいどうぞ。

~ブレスト~

はい、そこまで。じゃあ、まず僕のほうから。これは必ずしも正解というわけではないですが、「こういうことが言われてる」というポイントを2~3つお伝えします。

皆さん、目の前で自分の指をこういう感じ(両手のすべての指を速くバラバラに)激しく動かしてみてください。あと、ちょっと結んだり離したりしてみてください。こういうのはロボットには不得意なの。この人間の関節の数や動き、それから、たとえば適度に汗かくこととか。それから「温かみ」。たとえば撫でることで温かみを感じさせるような、そういうことは不得意です。

たとえば今はすごいマッサージ機がたくさんあるけど、あれ、僕はいくら乗っても満足できない。だから結局は毎週整体師のところへ行ってるんだけど、意外とあれは残るんじゃないかな。すごく高度なマッサージロボットがいてもいいけど、人間の手で揉んでもらえるのがなんだか気持ちいい。だから寝ちゃう。ロボットに揉まれてても絶対に寝られない。(会場笑)わからないけどね。そういうことも含めて、あるいはその延長に高度なヒューマンケアやヒューマンワークがある。保育や看護、あるいは介護もそうだと思います。

もし麻酔が効いた状態で手術を受けて、それで手術後に麻酔から覚めてベッドの上でぱっと目を開けたとき、(機械的な声で)「ダイジョウブデスカ?」って聞かれたらどうなのよ、と。(会場笑)それより、なんの知識もなくていいから優しい顔で微笑んで、「大丈夫ですか?」「(手術がうまくいって)良かったですね」みたいなことを言ってくれるほうがよほどいい。そういうことはあると思うんです。

それともう1つ。僕は「生きる力の逆三角形」という図を使っています。今まで、文部科学省は生きる力というものをすごく曖昧に定義していました。でも、今は「この3つだ」ということを言いはじめてます。その3つで結んだ逆三角形の、まず下の部分は、今お話しした手の動きを含む高度なヒューマンウェアのような部分。「人間の人間たる」というか、「基礎的人間力」。ここはそれほど奪われないかもしれません。

[2]「ジグソーパズル型からレゴ型学力重視へ――藤原和博氏が語るAI時代にも価値を創出する働き方」

スピーカー

1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年〜11年橋下大阪府知事の特別顧問。16年4月より奈良市立一条高校校長として生徒所有のスマホを100%活用し世界初の「スーパー・スマート・スクール(SSS)」を目指す。著書は『リクルートという奇跡』『つなげる力』(ともに文春文庫)、『藤原先生、これからの働き方を教えてください。』(ディスカヴァー)など累積133万部で講演回数も1200回を超える。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。日本の技術と職人芸の結晶であるブランドを超えた腕時計「japan」(文字盤漆塗り)や「arita」(文字盤白磁)を諏訪の時計師とファクトリーアウトレット方式でオリジナル開発し、第7弾まで完売。高校時代はバスケット部だったが、弱くてもっぱら強い女子バスケ部の相手をさせられた。いまは女子テニス部の練習に参加。3児の父で3人の出産に立ち会い、うち末娘を自分でとり上げた貴重な経験を持つ。詳しくは「よのなかnet」http://www.yononaka.net に。

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