ジグソーパズル型からレゴ型学力重視へ――藤原和博氏が語るAI時代にも価値を創出する働き方 

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前回に続き、藤原和博氏による「10年後、君に仕事はあるのか?~AI時代にも価値を創出する働き方とは~」をお伝えします。(全3話) 動画版はこちら>>

情報処理力と情報編集力の違いとは?

次に考えてもらいたいのは、逆三角形でいうところの左上にある「情報処理力」。それと右上の「情報編集力」。情報処理力というのは、正解があるような問題を前にして、速く正確に正解を言い当てる力です。だから学校の勉強をすごく頑張ったり、予定調和的な問題に対してもひとりで頑張ったりする。塾や予備校に突っ込めば、皆さんのお子さんも情報処理力をぐっと高めることができるかもしれません。でも、こちら側の仕事から、おそらくAIやロボットがどんどん奪っていきますよね。

これに対して右上はというと、インスピレーションやイマジネーションといった人間本来の意外性みたいなものが出るところ。予定調和じゃない想定外の問題を前にして、かなり意外な答えを含めて、回答を出したりする。あるいは、なんというか…、高度な計算が入るというよりは、冒険をしちゃったり情熱で押し切っちゃったりするような力です。

たとえば明治維新だって、本当に合理的に計算してたら行われなかったと言われますよね。基本的には負けていた筈なんです。それが、いろんな偶然が重なって、いろいろな人間の意志が重って、ああいうことになった。情報編集力は、そんな風に知識や技術、さらには経験のすべてを組み合わせて、状況に応じて最善の「納得解」…と呼んでいますが、自分が納得し、かつそれに関わる他者が納得できる解を導き出す力です。で、そういう力を発揮する仕事はAIやロボットにもなかなか奪われにくいんじゃないかなと思います。

もちろん20年後は分かりません。自分で判断しつつ、ちょっとした意外性みたいなことも織り込んでくるAIが現れるかもしれないから20年後は分からない。けれども、この10年は逆三角形右上の情報編集力を鍛えることがすごく大事になると思います。どうですか? 納得できる人は拍手くれる?(会場拍手)

はい。じゃあ、次は確認のため、この情報処理力と情報編集力の両方を今から皆さんに発揮してもらいたいと思います。お題は、「世の中で『白』であることが常識とされているものを挙げてください」。白が当たり前で、白がほとんどというもの。「最初は白だったよね」というのも含めてたくさん出してください。たとえば会場には白シャツを着ている人が大勢いるし、(壇上の)ホワイトボードだって白だよね。会場にはマスクをしてる人もいるけど、マスクだって白。そんな風に白が当たり前のものを、できたら10個以上。20個出せたらえらい。これは正解を一気に出してください。3、2、1、はいどうぞ。

~ブレスト~ 

はい、そこまで。今発揮した力は情報処理力です。情報処理脳を働かせました。自分が知っていることを思い起こして、それを挙げるわけですね。速く正確に処理する力。

情報編集力をどう高めるか?

では続いて、皆さんの頭を情報編集脳のほうにぐいっと持っていきます。今は白が常識というものを出してもらいましたが、そのなかで、「これ、黒にしたら意外とおしゃれ。売れるんじゃない?」というものを出してください。ここはイマジネーションやインスピレーションが加わります。付加価値を加えるわけです。

ぜひ、変わったやつを出してください。まあ、本当にいいアイディアが生まれたら、それは黙っていて、そのまま明日特許庁に走って持っていったほうがいいかもしれないけど(会場笑)。でも、たとえば「白髪を黒く染めちゃうのはどう?」とか、そういうのはちょっと悲し過ぎるんで(会場笑)、もう少しおもろいやつを。「これやったらヒットするんじゃないの?」というものについてブレストしてみてください。

もちろん、この編集モードに持ってくためにも、やっぱり最初はバカな案から出したほうがいい。1周目ぐらいは「そんなん黒くしたってしょうがないんじゃない?」」みたいなアイディアから入ったほうがいいです。では、いきましょう。3、2、1、スタート。

~ブレスト~ 

はい、そこまで。さて、ここで21世紀の授業を皆さんにイメージしてもらうため、ちょっと変わった実験をします。ブレストでいろいろなアイディアが出たと思いますが、その結果を聞くため、もし僕がこういう聞き方をしたらどれぐらいの人が手を挙げるか。「はい、分かる人?」。

今、会場からはまったく手が挙がっていない。教室でも同じことが起こります。「分かる人」「質問ある人」「意見ある人」という風に教員が問いかけるとどうなるか。中学校で40人のクラスなら、小学生の頃から手を挙げ慣れてる5人ぐらいと、あとは目立ちたがり屋の3人ぐらい?(会場笑)皆さんそれに入っていたかもしれませんが、それで8人ぐらいが手を挙げて、あとの32人の脳が止まるわけです。

これが、日本型の一斉授業における最大のデメリットです。それでしょっちゅう脳を止めちゃうわけ。じゃあ、それを動かしたままにするにはどうすればいいか。アクティブ・ラーニングの究極の形は、全員に発言させることです。

ちょっとやってみましょう。なんでもいいです。今の「白を黒にしたらおもろいんじゃない?」というもののうち1つだけ、自分の案として口に出してください。ブレストした仲間が言ったものでもいいです、僕が「どうぞ」と言ったら僕に向かって全員が言ってください。後ろのほうの人は叫ぶようにね。皆で怒鳴ればどうせ聞こえないから恥ずかしくない。(会場笑)どんなバカなアイディアでもいいです。では、白だったものを黒くしたら意外とヒットすると思う商品、どんな商品がありますか? どうぞ! 

(会場が一斉に回答)…なんか今「お歯黒」って聞こえたんですが(会場笑)。そりゃおもろいんだけど(笑)。とにかく今一斉に言ったでしょ? 皆の脳が働いてるわけです。ただ、教室でこれをやっても教師は聞き分けられませんよね。聖徳太子だって10人までなんだから。でも、今はそれを聞き分けられる技術がある。それがITです。

たとえば、皆さんにそれぞれ自分のスマホから僕が指定するアドレスに20字以内でざーっと打ってもらって、それで送信ボタンを押せば受信側にずらっと並ぶわけです。普通のメールソフトでも、件名の欄にアイディアを書いたうえで送信してもらったら、件名が一斉に受信トレイに並びますから。それで一気にアイディアを共有できる。

それをしょっちゅうやってるのが一条高校です。スマホを全員に持たせてる。教室に持ち込ませて、授業でも教員の指導下で電源を入れてます。そのうえで、「C-Learning」というソフトのアンケート機能を使えば全員が寄せた意見を一覧できたりするんです。

たとえば茂木健一郎さんが講演に来たとします。でも、その講演の場で「質問ある?」って募っても、そりゃあ出ないですよ。緊張しちゃうし。じゃあ、「はい、全員から質問」という風にする。その途端、無記名だからいろんな質問が出てくる。「茂木さんの髪の毛って天然ですか?」みたいな。(会場笑)お友達の私でもさすがに聞けなくなった質問でも(笑)。とにかく、そんな風にして集められたもののなかから茂木さんが質問をつまんでいけば、そのあともすごく面白く展開できます。

その機能を使えば授業の評価を取ることも可能です。実際、それをやってる先生はすでにいるんです。で、もうずっとソフトを開いたままにして、「いつでもいいから」と。授業について4段階か5段階の評価ととともに、「コメントをくれ」と。そうすると「眠い! 眠い! 眠い!」って打ってくる生徒もいるんだけど、僕はそれでいいと思ってるの。「あ、本当に眠気と戦ってるんだな」って。(会場笑)そういうのは面白いですよね。

そんな風に生徒・児童の意見や質問、あるいは評価を逆流させるのがICT(を使った教育)で一番大事なことなんです。こういうことがどんどん行われるようになってきた。iPadだと打ちにくいのでスマホを使わせてます。両手フリック入力をしてる今の高校生なんて、もう完全に人種が違いますから。2分間で200文字ぐらい打ってくる。ひとりで2分間に6行ぐらい入力しちゃいます。

とにかく、そんな風にして生徒たちに意見を言わせていくと、情報編集力側の「思考力」「判断力」「表現力」といったものが高まって、2020年からはじまる新しい大学センター入試等にも対応できる、というお話です。

ジグソーパズル型学力からレゴ型学力へ


じゃあ、ここで一応、卒業試験じゃないですけど、1つ押さえておきましょう。この情報処理力と情報編集力という言葉、皆さんは分かると思うけど、子どもたちには少し難しいじゃないですか。そこで、皆さんのお子さんにも、「この処理力と編集力の使い分けが必要なんだよね」ということを伝えるために、何かに例えてもらいたいわけです。

ビジネスマンに必要な能力はいろいろありますが、その1つが「例え話」。メタファーです。何か難しいことや抽象的なことを、すごく具体的なことに落とし込んで、その比較で語ることができる能力。例え話がうまい人は、マネジメントがうまい人です。

これはすごく大事なので、ちょっとここで練習してもらいたい。情報処理力のことを僕はよく著書のなかで「ジグソーパズル型学力」と言ってます。なぜか。ジグソーパズルは買った時点ですでに正解があるじゃないですか。それが200ピースだろうと2,000ピースだろうと、一旦ばらばらにして再び正解にしていく。たとえばミッキーとミニーに、あるいは綺麗なお城や川や森の写真に組み立てていく。正解主義型のゲームですよね。

同様に、情報処理力というのはひとりで考えて正解を出す力なので、これは「ジグソーパズル型の学力」と言っていいと思うんです。では、ジグソーパズルの例えが子どもに通用するのなら情報編集力のほうはどうか。ジグソーパズルと対比してなんの遊びで例えたら、子どもは一番分かりやすいでしょうか。それを考えてもらいたいんですよ。

これを考えるためには「ジグソーパズル大好き少年にも不得意なことがあるよね」という考え方もしてもらいたい。何が不得意なのか。パズルを組み立てていけば、なんとなくミッキーとミニーちゃんの姿が見えてくる。ただ、そこで「もう飽きちゃったからこのなかにドラえもんを入れたい」って言っても入らないですよね、ジグソーパズルというゲームには。途中変更が効かない。修正主義のゲームじゃないんです

さらに言うと、ジグソーパズルは世界観そのものが人から与えられたものです。ジグソーパズルのメーカーが決めちゃってる。だから世界観を自己決定できるという強みがないんです。ここまで言えば皆さんもよく分かると思うけど、日本の戦後教育は情報処理型または正解主義偏重で、ジグソーパズルを速く正確に完成させることのできる少年少女を大増産してました。皆さんもその一翼を担っていたわけです。

ただ、そういう人たちは、設定された目標は無我夢中で達成しようするんだけど、目標や問題そのものを設定・仮定したり、世界観そのものを生み出すのが下手なのね。だからグロービスに通ってるんでしょ? 別に宣伝したいわけじゃないけど(会場笑)、そういうことだと思いますよ。グロービスは情報編集力側にシフトしてるんだ、と。では、情報編集力をジグソーパズルに対比して何で説明すれば、子どもは分かるのか。それを今から1分ほど議論してもらいます。いいですか? 3、2、1、はいどうぞ。

~ブレスト~ 

はい、そこまで。これ、もちろん一から創造するという意味では「砂場遊び」でもいいし、「白いキャンバスに絵を描くこと」でも「積み木」でもいい。ただ、収まり方として「レゴ型学力」というのは分かりやすいですよね。ジグソーパズル型学力とレゴ型学力。レゴは部品の種類は少ないけど、組み合わせによって宇宙船をつくることもできれば、家でも街全体でもつくりだせます。「レゴランド®」ができたぐらいなので。

小学校と中学校ではジグソーパズル型学力偏重でいいと思います。学力はやっぱり付けるべき。基礎学力は大事です。ただ、高校ぐらいから大学にかけては情報編集側にぐっとシフトしていかないと。そうでないと今みたいな議論で発想が出てこない人になっちゃう。これからの時代、それだと人生でなかなか付加価値を出せなくなる。後半の人生は50年もあるのに、そこを豊かなものにできなくなっちゃったりする。そんなわけで、このジグソーパズル型とレゴ型というのを覚えておいてもらえればと思います。

まとめると、成長社会から成熟社会へと変化している今の日本では、「みんな一緒」という感覚から「それぞれ一人一人」っていう感覚になっていきます。そうすると情報処理力よりも情報編集力が大事になっていく。また、情報処理力はAIやロボットがすごく得意な分野だから、そちらの仕事はどんどん奪われるでしょうね、という話です。だからこそ人間の情報編集力を高めないといけない。

これから日本の教育制度はどう変わるか?

その流れを受けて2020年に入試改革が行われます。お子さんのいらっしゃる方が大勢いるので言いますが、現在の中学3年生、つまり来年の高校1年生から大学入試が、がらっと変わります。

まず、情報処理力は高校のうちに測っておきましょう、と。アメリカのSAT(Scholastic Assessment Test)と同じような感じです。高校1~2年生ぐらいで学ぶことを、教科書に出るぐらいのことを確かめるわけです。今まで小学校にも中学校にもそうした学力調査はあったのに高校にはなかったので、「それを高校でやりましょう」と。そのスコアを大学へ提出するようにする。これが情報処理力のほうです。

一方、センター入試はどうなるかというと、「大学入学希望者うんちゃら(注:共通テストという名が有力)」っていうテストになります。これで、それまで情報処理側ばかりだった日本の受験が少し真ん中あたりに寄ってきます。たとえば、80~120字と言われてましたが、ツイッター程度の長さの作文を書かせたりする。それが2~3題出るといったことが言われてます。「思考力」「判断力」「表現力」といったものは、「ア」「イ」「ウ」から選ぶというやり方では問えないので。

ただ、その採点についてえらい騒ぎになりました。当初は志望大学がすべて採点したらどうかという案が文科省にあったんですが、大学の先生方から「ダメー!」と言われて「えぇ…」となって。結局は業者が採点するってことになったみたいです。

それで、とにかく「大学の2次試験はもう情報編集力側に寄ってね」と。ということで、皆さんが企業の入社試験で経験したような面接やグループディスカッション、あるいは「高校ではどういうことをやってきましたか?」といったことを問われるような、そういうAO(アドミッション・オフィス)型のものが増えるでしょう。

すでに国立大学、東大・京大でも100名の枠でAO型入試はスタートしていますが、たぶんその枠が広がると思います。ということで、我が子のことも含めてその辺をきっちり掴んでおきたい人は、僕の著書『10年後、君に仕事はあるのか?』の105~110ページに分かりやすく書いてありますので。これは文科省でも教科書として使われるぐらいの感じです。105~110ページまでの立ち読みでも結構なので(会場笑)、読んでおいたほうがいいと思います。

 

※[3]「自分を100万分の1のレアカード化させよ――藤原和博氏が語るAI時代にも価値を創出する働き方」は、18日に公開予定

≫「なくなりにくい仕事の共通点とは――藤原和博氏が語るAI時代にも価値を創出する働き方」[1]

 

 

1955年東京生まれ。1978年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、1993年よりヨーロッパ駐在、1996年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年〜11年橋下大阪府知事の特別顧問。16年4月より奈良市立一条高校校長として生徒所有のスマホを100%活用し世界初の「スーパー・スマート・スクール(SSS)」を目指す。著書は『リクルートという奇跡』『つなげる力』(ともに文春文庫)、『藤原先生、これからの働き方を教えてください。』(ディスカヴァー)など累積133万部で講演回数も1200回を超える。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。日本の技術と職人芸の結晶であるブランドを超えた腕時計「japan」(文字盤漆塗り)や「arita」(文字盤白磁)を諏訪の時計師とファクトリーアウトレット方式でオリジナル開発し、第7弾まで完売。高校時代はバスケット部だったが、弱くてもっぱら強い女子バスケ部の相手をさせられた。いまは女子テニス部の練習に参加。3児の父で3人の出産に立ち会い、うち末娘を自分でとり上げた貴重な経験を持つ。詳しくは「よのなかnet」http://www.yononaka.net に。

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