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【日経コラム】「ダボスの興奮」から始まった「あすか会議」

投稿日:2017/07/20更新日:2019/04/09

7月1日と2日、福岡市に1100人の若きリーダーが集まった。グロービス経営大学院の在校生、卒業生、教員らが集う1泊2日のカンファレンス「あすか会議」であった。

福岡市の高島宗一郎市長やJR九州の唐池恒二会長、博多ラーメン店「一風堂」で有名な力の源ホールディングスの河原成美会長が参加する冒頭の全体会セッションは好評で、カンファレンス全体でも大盛況だった。

メインテーマの1つが「テクノベート」。テクノロジーによる社会の変革だ。最後のセッションでは「未来の社会、経営がどう変わるか、そのために今からどう準備すべきか」をメルカリの小泉文明社長や筑波大学助教の落合陽一さん、ヤフーの安宅和人氏らと語った。「これからの経営にはテクノロジーの理解が不可欠だ。経営者はテクノロジストにならないといけない」と落合さんが述べていたのが印象的だった。

このあすか会議は2005年に始まり、今年で13回目を迎えた。アイデアが生まれたのは高野山のお風呂の中だ。05年2月、僕は、密教哲学を基に事業を興したネミック・ラムダの創業者とともに、グロービス大学院生と学びの旅に出た。高野山の冬の冷え込みは寒いを通り越して痛いほどだった。体を温めるため一晩に2~3回お風呂に入った。湯船につかりながら、直前に参加したダボス会議のことを興奮気味に大学院生に説明していた。すると大学院生から「その興奮を僕らも体感したい」と要望が出た。そこで「ダボス会議を日本で開催しよう」ということになった。

僕がネーミングを大切にすることは以前のコラムでも紹介した。ダボス会議の成功理由の1つは、簡潔で響きがよく、インパクトがある「ダボス」という名前だと思った。それに匹敵する日本の都市名はないかと、考えを巡らせた。軽井沢や那須などの案を経て最終的に「あすか」に決めた。響きがよいのと、日本の原点ともいえる地名だからだ。こうして「あすか会議」のコンセプトができあがった。

05年4月に奈良市の飛鳥荘で開催された第1回あすか会議の参加者はたった80人だった。キャンパスが東京と大阪から、名古屋、仙台、福岡と広がり、英語のMBAプログラムや日英のオンラインコースが誕生し、水戸の特設キャンパスなどが設立するなか、2桁だった参加者数は4桁に拡大した。開催地も八ケ岳山麓の山梨県北杜市、浜松市、京都市、仙台市と各地を巡り、今年初めて九州に上陸した。違うキャンパスの大学院生が出会い、卒業生と在校生が交流し、オンライン生は初めてリアルの場で会うなど、多くの出会いを創出した。

「あすか会議」では、グロービスの教育理念である能力開発と人的ネットワーク構築、そして志の醸成を体現している。会議の幹となるセッションでは、リーダーとしての幅を広げるため、政治、経済、外交、文化に加え、テクノロジー、リーダーシップ、歴史、キャリア、ベンチャーなどテーマが多岐にわたる。合間には卒業生表彰や懇親会、ナイトセッション、パワーモーニングが開催され、会議の前後には前夜祭や「ポストあすか」のイベントを有志が企画するなど盛りだくさんの内容である。

第一線で活躍しているリーダーの志や知性・視座の高さに触れる機会を大学院生に提供し、彼我の差を認識し、埋めるべく能力向上に努めるきっかけになれば幸いだと思っている。それらはまさに、十数年前に僕がダボス会議の場で味わった興奮であった。

ダボス会議には3000~4000人が集っている。そう考えると、まだまだあすか会議は大きくできると思う。規模が大きくなればさらに多くの出会いが生まれ、刺激が得られ、多くの人の意識を覚醒させ、能力を向上させるきっかけとなるだろう。

 

※この記事は日経産業新聞で2017年7月14日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

 

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