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ファームノートやルートレック・ネットワークスに見る農業のテクノロジー化が実現する未来

投稿日:2017/05/01更新日:2019/04/09

テクノロジー化の波は第1次産業にも及んでいる。特に農業分野にはここ数年で、テクノロジーを理解した人材が多く流入してきた。

ファームノート(北海道帯広市)の小林晋也社長(37)は高等専門学校を卒業後、機械商社勤務を経て2004年に創業したソフトウエア企業で1千社以上への販売実績を達成し、14年にファームノートを立ち上げた。「『生きる』を、つなぐ。」というビジョンを掲げ、酪農・畜産に特化し、牛の最適管理が実現できるウエアラブルデバイス「ファームノート・カラー」を提供している。

契約頭数は16万頭に上り、日本の牛の飼養頭数の4.1%に相当する。従来農家が管理している生産データにとどまらず、搾乳機械や牛の生体データなどを自動で収集する仕組みを構築し、人工知能(AI)を用いて牛の授精タイミングを予測することで農家の収益力向上に貢献している。

「農業の『グーグル』をつくりたい」。小林社長はこう話す。「農業にはもともと大量のデータがあるのに営農(収益力向上)に活用されていなかった。まず農家が一円でも多く所得を増やすことが理想だ」。理想の営農は何かを考え、クラウドに生産データを集約して農家が簡単に利用できる仕組みを考え出した。

機械工学を学んだ小林社長が「ビジョンを掲げ仮説に基づいて農家にも分かりやすい試作品を作り、『アンバサダー』と呼ぶ熱烈なファンとなった農家に聞き取りを重ねて製品化した」。この過程で「技術・ビジョン・コミュニケーション、どれ一つ欠けても素晴らしい製品を作ることはできない」という。

ルートレック・ネットワークス(川崎市)の佐々木伸一社長(59)は1980年から一貫してIT(情報技術)業界に従事してきた。2005年にルートレック社を設立。M2M(機械間通信)製品を自社開発する技術力を有し、10年に総務省の委託事業で「農業の見える化」を進めるなかで農家との対話から、作物の成長に合わせて培養液を自動供給する「ゼロアグリ」を着想した。

ゼロアグリは明治大学との産学連携事業で、土壌センサーと日射センサーからの情報を基に作物の成長に必要な水分量と施肥量をクラウド上で予測し、自律的にかん水・施肥を実行できる土壌の環境制御装置。13年に第1号製品を出荷して以来、国内8県、海外3カ国で12品目の野菜に対し50カ所に導入している。

深く根差す農業のイノベーション

「『農業に休日を!』。この言葉に全ての思いを込めている。かん水・施肥の自動化で生産性向上、品質安定、収量増加が可能になり、もうかる農業を実現できる」と佐々木社長。「最も経験と勘が必要な作業を自動化したことで栽培規模の拡大が可能となり、新規就農者も熟練農家並みに収穫できれば担い手不足の解決につながる」と話す。

さらに「アジアに目を向けると人口増加による食料不足、水の枯渇、肥料による環境破壊など様々な問題を抱えている。作物の栽培に必要なだけの水と肥料を与えるゼロアグリは節水と減肥効果が非常に高い灌漑(かんがい)システムでもある」と強調する。

従来の農業従事者が生産技術やノウハウの暗黙知的な蓄積にたけているのはいうまでもない。他方、テクノロジーを手にした異業種からの参入者だからこそ分かる事業課題もある。両者が対話を重ね切磋琢磨(せっさたくま)して初めて、業界に深く根差したイノベーションが起きる。

(2017年2月2日付日経産業新聞の記事「VB経営AtoZ」を再掲載したものです)

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