貸借対照表(B/S)の流動資産に「貯蔵品」があります。「たな卸資産と在庫って違うの?」で説明したように、貯蔵品はたな卸資産に含まれます。貯蔵品というと、緊急時のために備蓄しているモノのように聞こえるかも知れませんが、実際には、使用するために購入したモノの内、未使用部分のことです。具体的には、本社支店などでは、切手、収入印紙、高速券や商品券などの有価物、文房具などの事務用消耗品、見本品や広告宣伝物(ポスターやチラシ)、工場では消耗工具、燃料や灯油、梱包資材などの内、決算日時点で使用されずに残っているモノを想像していただけばよいと思います。
貯蔵品の中には、広い意味で原材料といえるモノもありますが、質的、金額的な面から原材料として管理するほどの重要性が認められない場合に貯蔵品として取り扱われます。たな卸資産は、会社が将来的に販売を目的として保有する資産ですが、貯蔵品には販売を目的にするというよりは会社の事業や営業で使用するための資産も多く含まれます。
事務用消耗品を例にとり、貯蔵品の一般的な会計処理を説明します。
【購入日】
事務用消耗品を1,000円分購入した。
借方)事務用消耗品費(P/L) 1,000 貸方)現金(B/S) 1,000
【決算日】
購入した事務用消耗品1,000円の内、500円分が未使用であった。
借方)貯蔵品(B/S) 500 貸方)事務用消耗品費(P/L) 500
通常、貯蔵品に該当する資産は、購入時に全額費用として処理されます。しかし、会計ルールの原則的な考え方として、費用は使用した時点で認識します(これを「発生主義」と言います)。したがって、購入したとしても未使用分は費用として処理するには時期尚早というわけです。そこで、決算処理として決算日時点で未使用分を実地棚卸して、貯蔵品に振り替えて資産に戻します。その結果、実際に使用された500円分のみが費用となります。
原則的にはこのように未使用分は貯蔵品に振り替えますが、金額的に僅少なものまで対象にすると事務処理が煩雑となるため、全ての資産を貯蔵品として期末に資産に戻すかというと実務上はばらつきがあると思います。しかし、収入印紙などの換金性の高い有価物など、不正使用のリスクが高いと指摘される資産については使用実績を確認する意味でも決算日の未使用分を確認し、貯蔵品として処理することが望ましいでしょう。