6月は3月決算会社の株主総会の季節です。株主総会と会計、一見それほど関係ないと思われるかもしれません。会計を英語では「アカウンティング」と言いますが、実はアカウンティングの語源である「アカウンタビリティ」とは“説明する”という意味です。つまり、ビジネスにおいては、会社の出資者である株主に対して、経営者が委託されたおカネをどのように活用してどのような成果を上げたかを説明するとことを意味します。株主総会はまさに経営者が株主に対する「アカウンタビリティ」を果たすステージなのです。そして、経営者の説明に納得した株主が経営者によって作成された決算書に承認を与えるという手続きになります(※)。
会社法等の規定により、株式会社は決算日後3か月以内に株主総会を開催する必要があります。そのため、従来6月の後半は株主総会が集中しやすい傾向がありました。しかし、株主総会が同日に集中すると多くの株主が株主総会に出席できないことが従来問題視され、最近は株主重視の経営として経営者が株主との対話を重視する潮流から、株主総会の開催日の分散化が進んでいます。今年度は、上場会社の32.2%(759社)が6月29日に株主総会を開催する予定ですが、集中度合いは前年から9.1%低下して過去最低とのことです。
今年はコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が導入されてから最初の3月決算会社の株主総会ということもあり、会社のコポーレートガバナンスへの取り組みの進捗状況に対する株主からの質問や提案が多くなっています。
主なトピックスとしては、
・株主への還元(増配、自社株買)
・持ち合い株式の解消
・ROEの改善
・社外取締役の人数と独立性
などが挙げられます。いずれも、CGコードの目玉として取り上げられる事項です。要するに、経営者はおカネを効率的に事業に活用して成果を上げるべき、社内の経営陣だけでそれができないのであれば社外のリソース(役員)を活用するべき、事業への投資ができないのであれば株主へおカネを還元するべき、ということでしょう。ROEが低迷している会社の役員の再選議案には反対を投じる投資家も増えています。一方、不祥事を起こした会社に対してはコンプライアンスに対する取り組みなどを問う声も挙がっています。
今後も継続的な企業価値の向上を目的とした株主、経営者による双方向の議論の活性化が期待されます。
※決算書に会計監査人による監査証明が付与されている場合は、株主総会での株主による承認は不要とされ、「報告」事項として取り扱うことが認められます