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唯一最強の武器は「本質を見抜く力」 【世界で勝つ戦略思考術】

投稿日:2016/05/26更新日:2022/11/12

シンガポールに駐在して早2年。現地の日本人駐在員からは、海外拠点というグローバル環境の前線に出てきたからこその悩みやジレンマをよく聞く。

「現地スタッフのチームをうまくリードするにはどうしたらよいのか」「やらなければいけないことが多くて何から手をつけたら良いかわからない」「本社からはローカライズせよと言われるが、ローカライズさせ、しかも強い組織を海外拠点でつくるにはどうしたら良いのか」「短い駐在期間で成果を出すにはどうしたらいいのか」など駐在員の悩みとプレッシャーは尽きない。私自身も、いち日本企業の海外駐在員として、海外市場での事業展開の特殊性とダイバシティな環境での組織マネジメントの難しさを肌で感じている。

しかし、この2年の様々な経験の中で、たった一つのスキルを鍛えることで、これらの悩み・プレッシャーに立ち向かえることに気付いた。それが、must to do とnice to do を見極める力だ。これは、言い換えるならば、「本質を見抜く力」とも言えよう。

この世の中には、「できたらいいな」ということは無限にある。しかしグローバル環境で全てを行うことは難しい。だからこそ、グローバルという環境で戦うには、「できたらいいな(nice to do)」ではなく、日本国内とは違う環境において「戦略的にやらねばならぬこと(must to do)」を自分の頭で戦略的に考え、このmust to do だけにフォーカスすること、その決断をすることが重要になる。

このスキルは国内事業担当者にも重要なスキルの1つであるが、海外事業を担当する際には、must to do とnice to doの違いを認識・見極めることを難しくする「特有の環境要因」があるため、より一層高いレベルでこのスキルの習得が求められる。

海外ビジネスを難しくする4つの環境要因

ここで、グローバル環境下で直面する「海外ビジネスに特有の環境要因」を挙げてみたい。


■事業ステージの違い
地域・国が違えば経済発展度合いも違い、市場規模、成長性と成長速度も異なる。そのため、似たような事業を興しても、事業ステージが異なる。事業ステージが異なれば、その段階での事業目標やフォーカスポイント、必要なリソースなども違ってくる。ゆえに、その事業の意思決定に関わる判断軸のも力も変わってくるはずである。しかし、日本本社からは、海外事業にも国内事業の常識を適用しようとする動きがみられることも珍しくない。だからこそ海外事業を率いる駐在員は、この環境下において何がmust to doなのかを自分の頭で考え抜き、実行する力強さが必要になる。

■ビジネス領域(業務範囲)のギャップ
日本本社を離れると、組織の人数規模が極端に小さくなる。事業を立ち上げながら、採用も行い、労務管理や財務まで担当しなければいけないなど他分野にわたった業務を行わなければならず、比較的スタッフも揃っている国内事業での経験とは比較にならないほどの業務量を抱えることになる。こういう時こそ、今の環境下で「戦略的に必ずやらねばならないこと(must to do)」と「できたらいいけど、できなくてもそれほど戦略に影響しないこと(nice to do)」を見分け、自分のリソースをまずはmust to doに集中させることが必要になる。

■組織役割のギャップ
多くの日系企業では、海外法人に赴任すると、1~2段階上の役職が与えられることが多い。スタッフの数が限られるため、1スタッフの業務から、責任者の役割まで、1人何役もこなさなければならず、組織の中で期待される役割も広くなる。だからこそ、国内にいたときと同じ一担当者の目線での「やらねばならぬこと」を行うのではなく、海外拠点で任命された一段上の役職に応じた「やらねばらなぬこと」を自分で考え抜く力が必要になる。

■文化のギャップ
文化背景・言語の違いなどが人の働き方、仕事に対する姿勢、そして判断軸に与える影響は大きい。異文化の中では、自身の「当たり前」が、他の人の「当たり前」と違うことに数多く遭遇する。例えば、仕事の進め方。自分が当たり前だと考える「普通はこうやるでしょ(must to do)」ということと、他の人の考える「must to do」が違うということを理解することが、異文化の中で仕事を進める秘訣である。自分の「当たり前」を押し付けるのではなく、この環境下にとって何がmust to doなのかを考え、それをチームメンバーに明確に伝える力が求められる。

海外事業に携わるときには、上記のような「環境要因」がそのビジネスの難易度を上げる。だからこそ、「経営の原理原則を理解し、グローバル環境下で求められる本質(must to do)を見極める力」がより一層必要となる。

この力を鍛え身につけることこそ、グローバル化のカギになると言えるだろう。

そこでこのコラムでは、海外展開をする際にそこで活躍する人材が必要なスキルについて考えていきたいと思う。must to do とnice to do を見極めるのに必要な「本質を見抜く力」「本質を見抜くまで考え抜く力」とはどういうスキルなのか、どのように活用できるのか、そしてそれはどのように開発できるのかについて私なりの考えを示していきたい。

【参考リンク】
グロービス アジアパシフィック/グロービス タイランド
アジアで活躍する企業・ビジネスパーソンの支援をすべく、日本語・英語に対応した「グローバル研修」をご提供するとともに、日本で8万人以上の方に受講いただいている「グロービス・マネジメント・スクール」をシンガポールとバンコクで開講しています。

アジアでビジネスを創る―シンガポール通信(連載コラム)

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