貸借対照表(B/S)の純資産に計上される「新株予約権」も、意味が分かりにくい会計用語の一つではないでしょうか?新株予約権は、会社が発行する株式を一定の期間内にあらかじめ決められた価格で取得できる権利ということです。新株予約権は2001年の商法改正(2002年施行)で導入され、転換社債権、新株引受権、ストックオプションなどが含まれます。
新株引受権は、主に以下の目的で活用されています。
1. 従業員等に対するインセンティブ報酬(ストックオプション)
2. 資金調達手段(新株予約権付社債、転換社債など)
3. 買収防衛策(ポイズンピルなど)
この内、会計処理として新株予約権が発生するのは1の従業員等へのストックオプションの場合が多いと思われます。2の内、転換社債の場合は新株予約権部分を別把握しない簡便的な会計処理(一括法)が認められており、この場合新株予約権は発生しません。また、買収防衛策など対価性が明らかに無いと考えられる場合も新株予約権は発生しません。
会社が従業員等に対してストックオプションを付与する目的は様々ですが、自分の頑張りによって株価が上がれば従業員等も会社もうれしいというような、会社と従業員等のベクトルを合わせることではないかと思います。また、従業員にとっては通常よりも安く自社の株式を買う権利が付与され、株価が右肩上がりに上昇することで将来売却益が期待できることがインセンティブとしては重要です。
会計ルールでは、ストックオプションの権利付与時から権利確定前(会社のストックオプション制度で規定)では、ストックオプションの価値を合理的な方法(※)により算定して次のように会計処理をします。
※ 行使価格、行使期限までの期間、算定時の株価、株価変動制などを考慮して算定します
仮にストックオプションの価値を1,000とすると、以下のようになります。
(借方)株式報酬費用 1,000 /(貸方)新株予約権 1,000
ここでB/Sの純資産に新株予約権が登場します。同時に株式報酬費用、従業員等に対する給与(株式報酬費用)が発生します。これは、その時点でストックオプションに価値が認められる場合、その価値は会社の株式を通常よりも安く買って市場で売却することによって得られる利益(キャピタルゲイン)の当該時点までの発生分であり、まさに従業員等に対するインセンティブ(報酬)という意味合いです。
その後、権利確定後権利行使期間に新株予約権が行使されると新株予約権は資本金に振り替えられて消滅します。また、行使期間を経過して権利喪失する場合も消滅します。