パナソニックに続いてトヨタもカンパニー制の導入を発表しました。カンパニー制は、会社の中に「カンパニー」と呼ばれる複数の擬似的な会社を設定してカンパニーごとに事業投資の意思決定や業績評価をする仕組みです。
多くの会社に見られる事業部制では、各事業部をプロフィットセンターとして損益責任を持たせます。事業部長は一定期間に売上高、そして利益をいくら上げるかが主たる目標となります。
一方、カンパニー制では損益責任に加えて貸借対照表(B/S)に対する責任も持たせます。具体的には、各カンパニーが営む事業に必要な棚卸資産や固定資産などの資産とその調達資金をカンパニーごとに設定するなど、あたかも1つの独立した会社のようにみなします。調達資金は擬似的に(社内)資本金や(社内)借入金に区分します。なお、社内のカンパニーに留まらず、実際に法人格まで持たしてしまうのが「分社化」です。
カンパニー制の目的は、本社機能の全社的・戦略的な事項への集中やカンパニー長に経営経験を積ませる等様々ですが、会計的な観点からは資本の効率的運用の促進と言えるでしょう。例えば、パナソニックでは、カンパニーに対する資本の有効活用や資本コストの意識づけ等を、カンパニー制導入の目的としています。
株主からの要求もあり、最近では多くの上場会社が主要な経営目標指標として「ROE」を掲げています。
ROE=当期純利益÷株主資本
ROEはP/Lの利益とB/Sの株主資本で計算されるため、利益だけにフォーカスした経営では不十分となります。わが国では、従来、売上高や利益といったP/L重視の経営が中心でしたが、今後はいかに少ない資金で効率よく利益を挙げるか、おカネの効率的な運用の意識がより求められる経営環境となり、このような意識を今後の経営を担うカンパニーの責任者に持たせようという意図もあると考えます。
ところで、カンパニー制は日本では94年にソニーが導入して以来、日本における導入実績は少なくありません。中には導入目的を果たせずに、残念ながらカンパニー制を廃止した例もあります。原因は様々でしょうが、カンパニーの責任者や従業員が制度の趣旨や目的を十分理解しないまま形式だけの導入に終始した、という例もあると思います。
トヨタの社長は、カンパニー制の導入について、「ソリューション」でなく、「オポチュニティ」として位置づけています。カンパニー制はあくまで仕組みであり、運用によって将来の正解にも間違いにもなり得るとして運用の重要性を強調しています。パナソニック、トヨタがカンパニー制をどう運用して経営目標を達成するのか、今後も注目していきたいところです。