前回、リース取引の会計処理の概要について説明しました。リース取引では、借り手は一見毎月のリース料の支払いをしているだけであっても、会計処理は必ずしもリース料の支払処理のみとはなりません。会計ルールでは、固定資産の購入、リースという取引の法的な形式ではなく、取引の経済的な実態から会計処理を決定します。したがって、リース取引の中でも、購入したのと経済的に同然とみなされる場合(ファイナンス・リース取引)は、購入した場合とほぼ同様の会計処理が必要となります。
以前はリース取引では購入する場合に比べて固定資産管理などの事務処理が簡素化される、あるいは固定資産をB/Sに載せない(オフバランス化)ことによりROA、効率性、財務安全性などの財務比率が改善するといった会計面のメリットがありましたが、これらのメリットはファイナンス・リース取引のオンバランス化(ルール改正)により薄れました(中小会社や1件3百万円以下のリース取引は依然としてオフバランスが可能です)。
財務比率への好影響や管理業務負担の軽減を理由に購入ではなくリースを選択する会社にとっては残念なことかもしれません。では、リースを選択するメリットは何でしょうか?リース取引には会計面のメリット以外にも財務面を中心とした多くのメリットがあります。代表的なメリットをいくつか例示します。
・キャッシュ・フローの平準化
固定資産を購入する場合には購入時に一時的に多額の資金の支払いが生じますが、リース取引ではこれを毎月のリース料支払いに分散することにより、キャッシュ・フローの平準化を図ることができます。
・実質的な借入枠の拡大
固定資産を購入に際して金融機関から購入資金の融資の必要がある場合、借入枠に余裕がないと融資が受けられないリスクがあります。リース取引では実際には融資枠を使うことなく実質的に資金融通を受けたのと同様の効果をもたらします。実質的な借入枠の拡大効果により、資金調達力に余裕が生まれます。
・固定資産の保有リスクの低減
購入の場合、経済的価値の陳腐化の激しい設備は耐用年数を経過する前に陳腐化して稼働率が低下すると、減損損失が発生するリスクがあります。リース期間を対象資産の実質的な使用期間に適正に設定することにより、減損損失のリスクを抑えることにつながります。
・金利変動リスクの低減
リース料は契約時に取り決めるため、変動金利による借入(による固定資産の購入)のようにその後の金利変動リスクの影響を受けません。