しかしNew York Times紙2007年11月23日付けの記事、「Japanese Shift Cash Out of U.S. Investments(日本人が投資先を米国からシフト)」によれば、日本の投資家は、徐々にサブプライム問題から離れ始めている。世界的にドルの価値がさがり、サブプライム問題の全容が明らかになるにつれ、円の買い戻しや新規の投資先の開拓による「米国離れ」戦略を推し進めているという。
記事はさらに、「大和ファンド・コンサルティングによれば、10月だけで日本の個人投資家は、北米の株と債権中心の投資信託から339億円引き上げ、同じ月には、1752億円(16億ドル)を新興国の株式や債券に投資している」としている。この一連の動きは、日本人投資家の抜け目ない一面を表している。
計り知れないサブプライム問題の全容
サブプライム問題は、金銭的に信用ができるはずだった借り手にまで飛び火しており、その影響がどこまで広がるかは未だ想定出来ていない。毎週、どこかの金融機関がサブプライム問題の影響により、資産価値の評価減や、業績の下方修正を発表しているように見える。
結局のところ、米国人の住宅ローン支払いと結びついた投資を、多くの人が行っていたことが問題だった。人々は「米国の住宅市場の勢いは止まらない」と信じ込んでいた。確かに64%で安定していた米国民の持ち家率は、1990年代後半、急速に69%まで伸びた。それに加え、2002年から2005年の間、米国の経済成長の13%は住宅関連投資によるものであった。しかし、この住宅関連投資の繁栄は、長くは続かない。銀行や住宅金融専門会社が、住宅購入者向けの融資をどんどんと増やしていき、その中からローンを払えなくなる人が出てきた。
これからどうなるか?
さらに、これは日本が経験したのと同じ「土地バブル崩壊」の序章にすぎないかもしれない。米国民が負う住宅ローンは、この6年間で5兆ドルから10兆ドルへと2倍になっている。住宅の価値は上がり続けてきたが、価格がいよいよ下落を始めた。住宅価格は前年比で4%下がり、今後ピーク時から25%ほど下がると見られている。
連邦準備制度理事会によれば、人々は住宅の半分を所有して、もう半分をローンでまかなっている計算になるという。もし米国全体の住宅価格が25%も下がれば、一世帯の負債資本比率は著しく低下する。多くのアメリカ人は、ローンの利子が高くなり、住宅の価値は落ちていく現状に、もはや住宅を維持できなくなってきている。
この混乱は、それぞれの住宅や投資がどのくらいの価値があるのかを計算し、サブプライム問題による損失を全て把握できるようになるまで、続く事は間違いない。しかし、非流動的なアメリカの住宅市場では、人々が損失を避けて住宅を売りに出さないため、どれぐらいの損失を抱えているか見積もる事は難しい。結局の所、日本で土地価格が下落するのを防げなかったように、アメリカが陥ろうとする罠から救う術は無い。
日本を含む世界中の投資家は、米国の異常に膨らみきった住宅市場から距離を保とうと戦略を練っていくだろう。世界中に魅力的な投資先が数多くある中で、アメリカへの投資の魅力が戻るまで、これからも日本人投資家の”アメリカ離れ”は進むだろう。(英語対訳:棚原潤)