ニュースにも頻繁に登場するようになった「ROE」。ビジネスパーソンなら一度は耳にしたことはあると思います。ただ、意味はよく理解していないという方のために、これから数回にわたりROEの基本的な意味から会社における実際のROE向上のための取り組みに至るまで解説していきます。この機会にぜひROEについての理解を深めてください。
さて、第1回目はROEの基本的な意味についてです。ROEとはreturn on equity(株主資本利益率)の略で、以下の計算式で表します。
ROE(株主資本利益率)=当期純利益÷株主資本
分子の利益は、株主の出資に対する成果に該当する「当期純利益」です。「Equity」は株主資本という意味なので、ROEは株主が自分の出資に対して1年間で出資先の会社がいくら儲けてくれたのか、を表す財務指標と言えます。簡単な例で説明します。あなたがある会社の株式を10,000円で1株購入したとします。この会社が1年後に1株当たり1,000円の利益を計上したとすると、あなたの持ち分は11,000円になります。つまり、10,000円の元手に対して1,000円の儲けなので利回りは10%となり、この利回りがROE(株主資本利益率)ということになります。
投資家は、自身のお金を銀行預金、国債、社債、株式、不動産投資信託などの様々な金融商品の中からどれに投資するのが望ましいかを考えます。その際の1つの重要な判断材料は投資利回りです。銀行預金であれば預金の金利、国債であれば利回り、株式であればROEがこれに当たります。2015年3月期の東証1部上場会社の平均ROEは8%超となり、3社に1社が10%を超えました(それでも20%超が珍しくない欧米諸国の水準と比較すると、まだ低いと言わざるを得ませんが)。この背景には、外国人投資家、国内の機関投資家や個人投資家の投資活動が活発化する中、株主総会などで投資家が経営者に対して投資に対するリターン向上を要求することも一般的になり、株主重視の経営、つまり経営者が株主の声を尊重するようになったことがあります。
もちろん、リターン(利回り)は高いほど望ましいのですが、リターンの裏側には常にリスクが存在します。国債のように価値の変動が小さいと考えられる投資はローリスクローリターン、業績の変動によって価値の変動が大きい会社の株式はハイリスクハイリターン、リスクに見合ったROEかどうかが問われるところです。