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板挟みなリーダーに贈る “小さな工夫”で始めるウェルビーイング――『職場を上手にモチベートする科学的方法』

投稿日:2025/09/01更新日:2025/09/01

グロービスの教員・研究員がおすすめの本を紹介するコーナー。今回はチームのウェルビーイングを高め成果につなげる実践法を解説した『職場を上手にモチベートする科学的方法』を取り上げます。

変化の時代に必要な「ウェルビーイング視点」

いま、ビジネスの現場では「複雑さへの対応力」が問われています。市場の変化は速く、過去の成功パターンはすぐに陳腐化してしまう時代。当然仕事の難易度も上がっています。

そうした中で成果を上げ続けるには、単なる個人の頑張りに頼るのではなく、チーム全体が前向きに仕事に取り組める土台が欠かせません。それこそが本書が取り上げる「ウェルビーイング」です。

リーダーが取り組むべき3つのアプローチ

ウェルビーイングと聞くと、理念的な話に終始しやすく、現実的に成果とのバランスを取りながら実践する方法には、迷う方も多いかもしれません。しかし本書では、単なる理念の提示ではなく、現場レベルですぐに使える工夫が数多く紹介されているのが特徴です。忙しい現場のリーダーがチームのパフォーマンスを高めるために、すぐ実行可能な「小さな工夫」や「実践的なアクション」が体系的にまとまっているのです。

構成は「はじめに」と4つの章、「おわりに」から成り立っています。第1章では、なぜチームのウェルビーイングを高めることが重要なのか、その基本概念やパフォーマンスとの関係が解説されます。続く第2章から第4章では、リーダーが具体的に取り組むべきアプローチが提示されます。

そのアプローチは次の3つです。 

  1. レンズを変える ― 自分や仕事の捉え方を変え、意味や意義を見出す工夫をする。
  2. 環境を変える ― チームの働く環境や仕組みを整え、心理的安全性や裁量を高める。
  3. 人を変える ― メンバー一人ひとりが心身ともに健康で前向きに働けるよう支援する。

各章では、コールセンターのスタッフやプールの監視員まで、具体的な現場事例も取り上げられ、「自分のチームにも応用できそうだ」と思わせるリアルな描写が豊富です。雑談の場を設ける、感謝を言葉にする、1on1を工夫する、睡眠や自然との触れ合いを推奨するなど、どれもリーダーが「明日から実行できる工夫」であることが大きな魅力です。 

意味づけが生むモチベーション 

中でも特に印象的だったのは、P.51で紹介されている「仕事の意味に気づいてもらう3つのステップ」というフレームワークです。チームのパフォーマンスを高めるためにリーダーは様々工夫するが、そもそもメンバーは代わり映えのしない仕事に飽きてしまっている……本書ではそんなメンバーに対しても、わずかな工夫でモチベーションを取り戻させる方法が示されています。

ポイントは、「自分の仕事が誰かの役に立っている」と実感できるかどうか。人は、自分の行為が意味を持ち、他者の役に立っていると感じたときに、自然とやる気を取り戻します。本書では「具体的なエピソードを集めて共有する」というシンプルかつ効果的な方法が紹介されており、それによってワーク・エンゲージメントが高まり、結果としてチーム全体の一体感も強まると説かれています。

私自身、学習サービスの運営に携わる中で、この考え方の重要性を実感してきました。受講者が学びを通じて自己実現を果たしたという声を社内で共有すると、メンバーは「自分たちの仕事が誰かの人生を変えている」と誇りを持ちます。逆に、そのような声が届かないと、仕事は単なる作業になり、やりがいを失いやすくなります。「成果をどう出すか」だけでなく「意味をどう感じてもらうか」に目を向けることは、リーダーにとって欠かせない役割であると改めて感じます。 

板挟みになりがちなリーダーに実践してほしい、少しの工夫

繰り返しますが、本書が提示するのは壮大な理論ではなく、こうした日常の工夫です。小さなアクションが積み重なることで、メンバーが前向きに働き、チーム全体のパフォーマンスが持続的に高まるという実感を持たせてくれます。
著者が想定する読者層は、まさに「現場で奮闘し、上からの要求とメンバーの間で板挟みになりがちなチームリーダー」。そうした立場にある人にとって、自分やメンバーを責めるのではなく、環境や関わり方を少し変えるだけでチームが前向きになるということは、心強いことではないでしょうか。

また、本書は「考え方を理解する」だけで終わりません。紹介されているアクションは、1on1の場やチームミーティングなど、日々のマネジメントに直結しています。読み進めていけば、自分自身の経験と照らし合わせながら「メンバーのやる気をどう引き出すか」「成果と意味をどう結びつけるか」を具体的に考えることができるでしょう。特に「仕事の意味に気づかせる3つのステップ」は、即効性のある実践知として、多くの現場で威力を発揮するはずです。 

まとめ

リーダーに求められるのは、単に成果を出すことではなく、メンバーが仕事の意味を実感しながら力を発揮できる環境をつくること。本書はそのための「レンズを変える・環境を変える・人を変える」という3つのアプローチを通じて、リーダーが実際に取れるアクションを豊富に紹介しています。 

ウェルビーイングというと抽象的に聞こえるかもしれませんが、本書を通じてそれが「小さな実践の積み重ね」で実現できることがわかります。これから組織を率いる立場に立つ方にとって、強力な伴走者となる一冊です。


職場を上手にモチベートする科学的方法 無理なくやる気を引き出せる26のスキル
著者:グロービス経営大学院 執筆:若杉忠弘、浜屋祐子、米良克美、太田昂志 発行日:2025/8/27 価格:1,980円 発行元:BOW&PARTNERS 発売元:ダイヤモンド社

  • 下道 陽平

    グロービス講師

    日系一部上場企業においてマーケティングに従事した後、MBAを取得。米系コンサルティングファームにて経営コンサルタントとして活動した後、グロービス代表室(社長室)に参画。社長直轄特命案件のプロジェクトマネジャーとして複数プロジェクトを牽引。現在はグロービス新規事業部門にて「グロービス学び放題」BtoC事業責任者・マーケティング責任者、「DIGITAL
    GLOBIS(eMBA2.0)」事業責任者を務めつつ、MBA・ビジネススクール・企業研修の場で経営戦略・マーケティング領域の講師として年間80回登壇。
    筑波大学比較文化学類卒業、グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了。

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