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あなたの資料は「構造化」で変わる――『わかる、伝わる、人を動かすシンプル資料作成術』

投稿日:2025/01/14

著者の仲川さんとは以前同じ部門で働いていたが、彼が作る資料はどれもお手本のようなものばかりだった。

会議で一緒になるたびに、「今日はどんな資料が出てくるのだろうか」とひそかにワクワクしていたのを、今でもよく覚えている。

その資料作成メソッドは「GLOBIS 学び放題」で動画コンテンツ*1として公開されているが、今回書籍としても出版されたことに、かつての戦友として嬉しく思う。

新人はもちろん、資料作成に自信が持てない中堅社員や、感覚的に資料を作り続けてきたベテラン社員にとっても、多くの学びが得られる一冊である。

「人を動かす」資料作成の4つのステップとは

本書が一貫して強調するのは、「どう見せるか」ではなく「どう伝えるか」という点である。また、資料作成を扱う類似書と特に異なるのは、「人を動かす」ことを最終的な目的に据えているところだ。これは資料作成に限らず、あらゆるコミュニケーションにおいても重要な考え方と言える。

では、「人を動かす」資料を作成するには、何をどのように取り組めば良いのだろうか。本書では、そのための4つのステップを提案している。

●   ステップ① 

 ゴールを設定する:目的を定め、聴き手を分析する

●   ステップ② 

 伝えることを整理する:メッセージを作り、ストーリーにする

●   ステップ③

 スライドごとに形にする:ボディの内容を練り、図に落とす

●   ステップ④ 

 整える:デザインを整える

このステップは順番に取り組むことが重要だ。新人の方にありがちだが、決してステップ③にあるような、スライドから作り始めてはならない。

本来、資料作成を含むすべてのコミュニケーションは何かしら目的があり、その目的達成に向けて相手に動いてもらうよう働きかけるものである。にもかかわらず、何をどのように伝えるかも明らかでないまま、やみくもにスライド作成に取りかかっても、成果にはつながりにくい。

単に「見た目の良い資料」ではなく、「相手を動かす資料」を作るには、時にはステップを行ったり来たりすることもあろうが、あくまでも基本は順番にステップを踏んでいくことが肝要なのだ。

資料作成の要は「情報の構造化」にある

各ステップについて詳細に見ていく中で特に目から鱗だったのが、ステップ③だ。このステップでは、「情報の構造化」が資料作成の要であると説かれている。この「構造化」という考え方は、意外と見落とされがちなポイントではないだろうか。

本書では、「情報の構造化」を「情報の構成×情報の関係性」と定義し、次の2つの観点が重要だと述べている。

「情報の構成」

●   相手を動かすために、どのような情報が必要なのか?

●   情報に階層は存在するか?存在する場合、何階層に分かれるのか?

●   各階層にどれだけの情報が含まれているのか?

●   情報の次元数はどの程度か?

「情報の関係性」

●   階層同士は、どんな関係性か?(例:相関関係、循環関係など)

●   同じ階層内の情報同士は、どんな関係性か?(例:相関関係、循環関係など)

こうした「情報の構造化」が不十分なままだと、いくらビジュアルが美しくても相手を動かすことは難しい。なぜなら、情報が過剰または不足していたり、単に羅列されたままで整理されていない状態であったりすれば、受け手はこちらの意図通りに情報を受け取ってくれないからだ。それどころか、誤解や混乱を招き、逆効果になることさえある。

私も過去、「情報の構造化」が十分でない状態で大事な商談に臨み、失敗したことがある。当時、顧客の懸念を払拭しようと、サービス導入に必要な情報を詰め込んだ資料を作成し、それをもとに提案に臨んだ。しかし結果として、ライバル会社の提案が採用されてしまった。

事後ヒアリングで明らかになったのは、重要なポイントが相手に伝わっていなかったことだった。「いろいろと考えてくれたことはわかったが、何が重要なのかわからない提案だった」というフィードバックを顧客から受け、初めて問題の本質に気が付いた。

真剣勝負の場では、あれもこれもと情報を詰め込みたくなるのが人間の心理だ。しかし、たとえ情報が網羅されていても、構造化されていなければ、相手に伝えるべきポイントがぼやけてしまう

だからこそ、この「情報の構造化」は相手を動かす上で欠かせない要素だと実感している。

AI時代に資料作成スキルは必要か

資料作成スキルは、あらゆるビジネスシーンで欠かせない――これを前提に、ここまで本書を評してきた。

しかし最近では、生成AIの登場により、資料作成の多くが自動化されつつある。進化を続けるツールを使えば、簡単な操作で完成度の高い資料も手軽に自動生成できる時代だ。

こうした中で、本書を手に取り、資料作成スキルを学ぶ意義はどこにあるのだろうか。

著者の仲川さんも、いずれ資料作成の多くをAIが担う時代が訪れると予測している。それでもなお、資料作成スキルを磨く価値は変わらないと強調する。その理由は、資料作成が単なる「作業」ではなく、人間の「思考力」を鍛えるプロセスでもあるからだという。

資料作成を通じて養われる思考力は、ビジネスにおいて欠かせない武器となる。仲川さん自身も、資料作成を通じてその能力を磨き上げ、現在では事業責任者やビジネススクール講師として活躍している。その実績こそが、本書で説かれるスキルの有効性を物語っている。

こうして見ると、本書は実践的な資料作成の指南書であると同時に、ビジネスの基礎となるスキルの磨き方や姿勢について深く考えさせられる一冊とも言える。今の仕事に悩んだり、自分の成長に迷いを感じたりしているすべての人にとって、本書は心強い味方となるはずである。


わかる、伝わる、人を動かすシンプル資料作成術

著:仲川 顕太 発行日:2025/1/9 価格:2530円 発行元:フォレスト出版


*1 超実践!「わかる」を「できる」に ~伝わる資料の作り方・インプット編~|GLOBIS学び放題

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