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思考の「型」が、ビジネスの質を決定付ける ──『グロービスMBAキーワード フレームワークBEST100』

投稿日:2026/03/24更新日:2026/03/24

グロービスの教員・研究員がおすすめの本を紹介するコーナー。今回は、仕事の再現性と生産性を高める100のフレームワークを解説した『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワークBEST100』を取り上げます。

アウトプットの「差」はどこから生まれるのか

複雑な課題に対して短時間で的確に論点を整理し、周囲が納得する解決策を提示し実行する、いわゆる「仕事のデキる」人がいます。一方で、課題にどこから取り組んでいいか見当がつかない、論点もあちこちに飛び、何とか解決策を考え出しても周囲からツッコミの嵐、当然なかなか前に進まない…。こうした状況は往々にして起こりがちですね。
この差を目の当たりにしたとき、私たちはつい個人の資質や経験の差だと考えがちです。しかし、果たして本当にそうでしょうか。

日本最大のビジネススクールを運営するグロービスで教壇に立ち、『グロービスMBAシリーズ』で多数の執筆歴を持つ著者・嶋田毅は、本書の序文において、ビジネスの定石であり先人の知恵とも言える「フレームワーク(思考の枠組み)」を適切に使いこなすことで、一般のビジネスパーソンの生産性は何倍にも上がると述べています。つまり、個人の資質や経験の差も、フレームワークの習得と活用によって埋めてなおお釣りが来る可能性は十分あるのです。

本書は、2015年の発売以来、多くのビジネスパーソンに親しまれてきた『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』を大幅に拡充した一冊です。項目数が100へと倍増した本書は、ビジネスの諸問題を解き明かし、キャリアのステージを一段引き上げようとする人々にとっての必須のガイドブックと言えます。

フレームワーク習得の「4つの効用」

本書において著者は、一般のビジネスパーソンがフレームワークを用いることの効用として、以下の4点を提示しています。

まず第一の効用は、「複雑な現象が分析しやすくなる」。例えば自社の組織課題を分析する際、漫然と自社の様子を観察するのではなく、「7S」という型を用いることで、戦略と組織文化の乖離や、人材と評価制度の不一致といった急所が、モレなくダブりなく(MECE)浮かび上がってきます。

第二に、「意思決定の方向性を示してくれる」。「アンゾフの事業拡大マトリクス」のように、こういう状況ならばこういう選択肢があるということを可視化してくれるツールは、不確実な状況下で少しでも筋の良い見当をつける際の強力なヒントになります。

第三に、「意見が明確に伝わる」。フレームワークがマネジメント層の間で一種の「共通言語」となっていると、個人の主観に頼らず、建設的な対話が可能になります。組織の意思決定のスピードと質を向上させる、インフラとなるのです。

そして第四が、冒頭に挙げたように、これらが相乗効果を生むことで「作業が効率的に進み、実行も効果的になる」という点です。フレームワークを持たない状態は、著者曰く「行き当たりばったり」。この100の定石を習得し使いこなすことで、確実に仕事の再現性を高められ、結果として生産性が上がるというのが、本書の核心的なメッセージです。

 時代の要請に応える、「テクノベート」など最新知見の追加

かつて私は、本書の前身である『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』の書評において、同書を「経営を俯瞰で見た全体観を持てるようになる」と評しました。当時は50の型を知るだけでも、混沌とした状況を整理する上で十分な手応えを感じられたものです。しかし、それから約10年。デジタル変革(DX)やサステナビリティ経営の浸透などにより、過去のビジネス常識が通用しなくなる場面も多い時代となりました。

今回の「BEST100」で特筆すべきは、現代の経営環境を反映した「テクノロジー(テクノベート)編」と「創造と変革編」の大幅な拡充です。これは、単なる知識の追加ではなく、ビジネスパーソンが持つべき「思考のOS」を最新の状態にアップデートする試みと言えるでしょう。

現代の経営において、テクノロジーを無視した戦略はもはや成り立ちません。本書で紹介される「レイヤー構造とエコシステム」「DXフレームワーク」「コトラーのマーケティング5.0」といった概念は、まさにこうした競争環境を読み解き、自社の実務へ落とし込むための基礎となります。

また、「創造と変革」が独立した章として設けられた点も重要です。VUCAの時代においては、ゼロから新しい価値を構想したり既存の大企業を変革したりといった営みが、大きなインパクトを持つためです。「ビジネスモデルキャンバス」「エフェクチュエーション」「V-SPRO-L」といった枠組みが、強力な羅針盤となります。

仕事に使える「汎用的ガイドブック」

本書の構成は、100個のフレームワークごとに4ページ。まず「用いる場面」を提示し、本文で「考え方」、次いで「事例で確認」、最後に「コツ・留意点」を紹介するという形で統一されています。最初から全部通読しないといけないものではありません。自分が直面している課題に合わせて、必要なページからめくれば良いのです。MBAで扱う膨大な概念の中から、特に汎用性の高いフレームワークが、ヒト・モノ・カネなど各分野に満遍なく網羅されています。

もしあなたが、資料の構成に迷ったとき、会議で議論についていけずに歯痒い思いをしたとき、あるいは自社の長期的な展望を描く必要に迫られたとき。本書のページをめくってみると、先人たちが長い時間をかけて磨き上げてきた「知恵の結晶」が、あなたの思考を助けてくれることでしょう。


 『グロービスMBAキーワード フレームワークBEST100
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2026/3/25 価格:2,200円 発行元:ダイヤモンド社

  • 大島 一樹

    株式会社グロービス ブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部 書籍・GLOBIS学び放題×知見録編集部 マネジャー

    東京大学法学部卒業後、金融機関を経てグロービスへ入社し、思考系科目の教材開発、講師などに従事。現在はブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部にて、書籍・GLOBIS学び放題×知見録・グロービス経営大学院のオウンドメディアの企画、執筆、編集を担当する。共著書に『MBA定量分析と意思決定』、『改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング』、『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』(以上ダイヤモンド社)など。

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