2022年4月から「男性育休」の周知が義務化された。また、20~30代を中心に育休取得希望者は増えている。そもそも男性育休取得者はどんな人たちなのだろうか。グロービス経営大学院の卒業生で、自ら人事部に働きかけて制度をつくり、社内で初めて育休を取得した宮崎洋さんにインタビューした。前編では、育休取得のきっかけを聞いたが、後編では宮崎さんの価値観を聞いた。(全2回、後編)前編はこちら。
人生を楽しみ尽くしたい
齋藤:4年前の第一子の時にも育休を検討されていますが、以前から育児への興味関心が高かったのでしょうか?
宮崎:両親とも仕事をしていて父親が家事をメインで行っていた家庭に育ちました。そのせいか、「育児・家事が女性の仕事」という感覚は全くありません。第一子妊娠後に妻が専業主婦になった後でもこの感覚は変わりません。女性が家事をして当たり前という家庭観には違和感があります。
グロービス経営大学院在学中は「志」を考える授業などを通じて、内省の時間を多くとりました。私の根本には「人生を楽しみ尽くしたい」という考えがあるのだと思います。
仕事はもちろん大事ですが、人生はそれだけではありません。人には、父親として、夫として、いろんな側面があります。親になれたことは本当に幸せなことですし、子育ては人生における大きな喜びだと思います。
元々子どもの成長や発育のプロセスにも興味がありますし、子どもに関わる時間を確保して、将来振り返ったときに「子育ても仕事も学びもやりきった、味わい尽くした」と思いたいんです。興味関心への執着、好奇心が強い、という性格もあるのかもしれません。
副業で社会人をサポート
齋藤:これからの時代、「好奇心が大事」とよく言われますが、大事にしたいと思ってもなかなか優先順位を上げられなかったり、育休含めて実現させている人は少ない印象です。
宮崎:好奇心を持続させたり、やりたいことを実現させることは難しいですよね。私は実は副業社内第一号でもあるのですが、副業では社会人が自分の好奇心を育て実現させるサポートをしたいと思っています。コーチングを学び、今後は社内コーチとしても活動していきたいな、と考えています。
そんな風に考えられたのは、グロービス経営大学院が影響しています。学んだビジネススキルはもちろんですが、講師や出会った人、クラスメイトたちと語り合った内容や時間が常に自分を奮い立たせてくれました。枠に捕われない考え方をする人たちが多かったので、副業や育休取得の背中を押してくれたと思います。
齋藤:最後に、育休を取得されてからの変化、ご自身、そして所属する組織におけるメリットはどんなものかお聞かせいただけますか?
宮崎:個人として育休は本当に幸せな時間でした。これまでより「働く時間と場所」の自由度を求めるようになりました。それにより、人生の満足度が上がることを体感しましたから。
社内でのポジションは変わりませんが、キャラの浸透になりました。副業や育休含め、「面白いことやってくれるだろう」という印象をつくれたのではないかと思います。
組織としてのメリットを客観的に話すのは難しいですが、多様性の一つを形成できたかもしれません。コロナ禍でより強く表出しましたが、企業や組織の「態度」を株主も従業員も就職活動中の学生もセンシティブに感じ取りジャッジします。今後の採用や育成の観点からも、育休取得は組織に良い影響をもたらしたのではないでしょうか。
古い価値観に従属するのではなく、個の力を最大限に発揮する組織を作っていきたいと思います。特別な人間だけが取れるご褒美的な「育休」ではなく、希望者が当たり前に取れるような制度や事例をつくれたのではないかと個人的には考えています。
齋藤:育休だけではなく副業や社内コーチなど、新しい働き方を体現されている卒業生がいることは、グロービスにとっても嬉しいです。今日はどうもありがとうございました。