男性育休取得のきっかけ~第一子妊娠出産で実感した妻の大変さ

未だに「男性育休」の取得率は低いが、20~30代の男性のなかには、「できれば育休を取得したい」と考える人が8割に上るなど希望者は増えつつある。けれども組織で前例がなかったり、キャリアへの影響に不安を抱える人も多い。そもそも男性育休取得者はどんな人たちなのだろうか。グロービス経営大学院の卒業生で、自ら人事部に働きかけて制度をつくり、育休を取得した宮崎洋さんに話を聞いた。(全2回、前編)

男性育休取得のために奔走

齋藤:本日はどうぞよろしくお願いいたします。まずは、今のお仕事から教えてください。

宮崎:外資系の医療機器メーカーでデジタル化を推進する部署に所属しています。

齋藤:育休をとられた期間は?

宮崎:2020年2月1日から3月末日までの2ヵ月間で、第二子が生まれる1週間前から生後2ヵ月まで取得しました。本当は第一子が誕生した時に取得したいと奔走したのですが、力及ばず取れなかった経験があります。

齋藤:初めてのお子さんのときには育休が取得できなかった、その理由を教えていただけますか。

宮崎:4年前、妻の妊娠がわかった時点で育休を取りたいと思いましたが、実現できなかった。理由はいくつかありますが、まずはタイミングです。

当時はマーケティング部にいたのですが、人事部を巻き込んで制度を作って、いざ取得しようか、というときに業務が変わり、引継ぎ含めて休みが取りにくくなりました。イベントの担当など、頭数が必要な業務も担当していたことから、抜けづらさがありました。

また、妊娠が発覚した時点で妻は退職して専業主婦となったのですが、「専業主婦なら男は育休なんて取らなくていいのでは?」という雰囲気がありました。一人が取ったら全員に取らせなければいけないのでは、など、諸々議論もありました。たった4年前ではありますが、今のように男性の育休自体がなかなか理解を得られない社会環境もあったと思います。

齋藤:2016年当時は、男性の育休取得率3.16%と、最近の普及率(2019年で7.48%)よりもさらに低かったですね。当事者の方でさえ、パートナ―の方が専業主婦(夫)だと育休は取得できない、と思い込んでいる方もいます。

宮崎:育児経験がない中で「大変さ」を主軸として必要性を説く力が足りなかったです。「男親は子どもを叱るときに出ていくくらいで良いのでは」と子どものいる方から言われたりすると「なんとなく違う」と思いながらも反論する筋立てや時間がありませんでした。誰が悪い、というわけではなく、歩み寄るための材料や時間を準備することができませんでした。

そんな経験もあり、第二子の妊娠がわかったときには、今度こそは取りたい、いや、取らなければいけない、という気持ちでした。社長にも直談判しましたし、直属の上司にも応援してもらって取得に至りました。

齋藤:そこまで強い決意が生まれたのはなぜでしょうか。

宮崎:第一子の妊娠出産から産後にかけた妻の体調変化を間近で見て、「産後は交通事故にあったくらいのダメージ」という話が大げさではないと感じたからです。そんな状態で「育児」を一人で行うなんてハード過ぎます。

実際に育児をして産後うつや虐待などの辛いニュースも「自分とは無関係」とは思えないような気持ちになったこともあります。幸いそういった状況にはなりませんでしたが、それくらい負荷がかかるのが子育てだ、と実感しました。

この経験があったので社内でも働きかけができました。準備し、人事を巻き込んで制度を整え、社内で男性育休第一号として取得できました。

サバイバルゲームのように助け合う日々

齋藤:実際の育休期間はどんなふうに過ごされていましたか?

宮崎:育休期間は、主に長男の相手がメインでした。やんちゃなタイプなので、朝食を食べて公園に出かけ、お昼はピクニックしながらとり、帰ってきてから夕飯、そしてお風呂に入り、夜9時頃には一緒に就寝。自分の時間は、朝4時の起床後です。

齋藤:家事や育児の役割分担やルールなどはありましたか?

宮崎:ざっくりと役割分担は決めていましたが、お互いの様子を見てやっていました。遊び、ごはんを食べさせる、お風呂入れ、寝かしつけ、おむつ替えなどを私が担当することが多いです。当時も復職した現在もマンツーマンディフェンスの体制を取ることが多いです。私は長男の相手、妻が赤ちゃんのお世話のような体制です。

現実は……サバイバルゲームのような感覚です。お互いの身を守りながら、日々のミッションを乗り越えていく。そして、次の問題が勃発し、それに立ち向かう。こんな日々です。

齋藤:お互いサポートしつつ柔軟に対応されているんですね。お子さんの成長段階や状況によって日々の変化が大きいので、ルールをかっちり決めるよりもリズムを作って対応した方が柔軟性がありそうですね。

宮崎:試行錯誤しながら作り上げていった感じです。妻に「この体制はとてもありがたい」と言ってもらったり、自分自身も子どもと関わる時間を取れているので、人生の満足度は高まりましたし、家族の絆も深まった、と思います。

後編に続く

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