希望で不安を上書き、打席に立つ数を減らさない

先行き不透明なコロナ禍の中、テクノベート時代の新たな価値創造に取り組んでいるビジネス・リーダーへのインタビュー。エン・ジャパンの社外取締役に就任し、グロービス経営大学院の卒業生である村上佳代氏に、コロナ禍での変化や、これからのキャリアのつくり方を聞いた。(全2回、後編)前編はこちら(文=竹内秀太郎)

人との繋がりはすべて資産

竹内:これまでキャリアを歩む中でご自身なりに重視してきたことはありますか。

村上:私は人間関係はすべて資産だと思っているので、お互いに良い資産になるような付き合い方を心がけています。全て出来ているか出来ていないかは別ですが、一度会ったらまた会いたいとか、また一緒に仕事をしたいと思ってもらえるように自分の価値提供の仕方を意識しています。

竹内:ネットワークの維持のために何かされていることは。

村上:コミュニケーションはなるべくまめに取るようにしています。年賀状を出したりはしないのですが、SNSを通したやり取りや発信など、自分なりのアルゴリズムでやっています。

ゴールに向かう途中はセレンディピティ

竹内:これまでのキャリアを振り返って総じて言うと、なりたい自分になれてきたという風にお考えですか。

村上:10年ほど前に『Webマーケッター瞳の挑戦』という本を書いた時、将来的に上場会社でCMOになりたいと漠然と考えました。規模感とか知名度とか、いろいろな意味でわかりやすいゴールだと思ったので。今上場会社の役員として、投資判断、事業を始めるor止めるなど、意思決定に対して意見や考えを述べることができる、というのは、思い描いていたことができる域に来れた、という到達感はあります。

竹内:計画通りに進んでこれた、と。

村上:計画通りかといわれると、少しニュアンスが違うかもしれません。遠くにゴールは決めますが、途中のプロセスはセレンディピティだと思っています。私が好きなのは、“コネクティング・ドッツ”という考え方。その時々の機会の流れに乗ったことが、後から振り返れば意味があったと思える。スタンフォード大学でのスティーブ・ジョブズのスピーチを聞いた時、「あっ、これだ」と思いました。計画的偶発性理論にも近いと思います。

より本質的な価値が求められる時代に

竹内:コロナ禍に直面してどんな変化を感じていらっしゃいますか。

村上:コロナを契機に、より本質的なところに価値を求めることが当たり前になってきているような気がします。リモートワークが前提になると、通勤することの意味って何だったのかとか、会社ってなくてもいいんじゃないかなど、仕事の本質が問われている。マーケティングのやり方もより本質に向いてきている。リアル店舗をもって商品を売っている会社さんの多くは、去年ぐらいまでは、Eコマースで一定の売上があっても、やっぱりリアル店舗が大事、流通に対する配慮も必要だからEコマースは「ついで」ぐらいにしか見ていなかった。でもコロナでお店では売ることができなくなって、改めてEコマースをちゃんとやっておけばよかったと考え直しています。

竹内:村上さんの出番が増えていきそうですね。

村上:今のはやり言葉を使うと、コロナによってDXは本当に確実に進んでいる。ECサイトもDXのひとつだし、リモート化に対応していくこともBPR的なDXだと思うんですけど、コロナによって、デジタル化は急速に進むことになりました。コロナ前はクライアントさんに対し「早くデジタル化を進めた方がいいですよ」と言っても、私がデジタルマーケのコンサルだからそう言うんでしょ、みたいに受け取られてしまうこともありました。ですが、コロナを契機に、デジタルを本質的な意味でビジネスに活用していくことについて、みなさんとちゃんと議論ができる土俵が整ったように感じています。

先々の不安を希望で上書きする

竹内:今後については、どんな風にお考えですか。

村上:これまでに得た知識や培ってきた経験を活かす時期が来たと考えています。こうすればよかった、もっとこうしたいと思うことがまだまだ沢山あるので、それを自信をもって活かしていこうというスイッチが入った感じです。

竹内:人生100年時代と聞いて、どんなことをお考えになりますか。

村上:不安がないわけではありません。正直にいえば、不安と希望が半々。でも不安を希望で上書きするというのが私の考えです。生活のこととかお金のこととか、ちゃんと備えておかないといけないことを考えるのは当たり前。それはやりつつ、いかに打席に立つ数を減らさないかが大事。打席に立たないと経験も知識も活かせない。前向きに生きていく上では、打席に立てる自分を意図して作っていきたいと思っています。

竹内:ずっと働き続けるイメージをお持ちですか。

村上:これまで働いていなかったことが一度もないので、働いていない自分は想像できない。今のコンサルの仕事の延長線上じゃなくても、何らかの形で働き続ける道筋を見つけていきたい。もしかするとワインや食べものなど、今まで取りたかった資格をとって、お店を持つみたいなこともあり得るかもしれないですね。65歳ぐらいまではできることをやっていき、その先の自分の価値の提供の仕方を考えることも今の課題かなと思っています。

竹内:人生の残り時間を意識することはありますか。

村上:私の母は58歳で亡くなったので、自分もそれぐらいなのかもと意識してしまうことはあります。でも、そこを越えると楽になる、という話も聞きます。想定より長く生きる可能性もあると思うので、そこは不安を希望で上書きして、どうせ生きていくんだったら、価値も提供したいし、楽しくやっていきたいと思っています。

竹内:先の見えないこのコロナ禍の中で、自身のキャリアについて悩んでいるビジネスパーソンに何かアドバイスをいただけますか。

村上:アドバイスというか、私自身が最近よく考えているのが、5年後の自分が今の自分を見てどう思うか、10年後の自分に感謝される今でありたいということ。今やっていること、考えていることに対して、未来の自分が、そういう風にしておいてくれてありがとう、と言ってくれる自分であろうと心がけています。

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