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大切なのは「顧客とのコミュニケーション」と「データ活用」!サブスクビジネス成功の秘訣とは?

投稿日:2020/07/14

本記事は、G1中国・四国2019「急拡大するサブスクの未来」の内容を書き起こしたものです。(全2回 後編)

サブスクビジネスは儲かるのか?

治山正史氏(以下、敬称略)では、皆さんに○×で質問です。今の心情として、「このサブスク事業、覚悟を持ってはじめたけれども、思った以上に儲からない」

児玉=×、天沼=○、石川=○

治山:おお!では儲かっているところから。

児玉昇司氏(以下、敬称略):日本のP/Lに照らし合わせると儲けはすべて消えますが、EBITDAではぜんぜん黒字なんです。どんどんお金が入ってくるのでキャッシュフローもめちゃくちゃ回ります。「このビジネスモデル、いいな」と思ったところがあとから価格を下げて参入してくるのが一番しんどいし、実際、それをやって「市場を壊して退場」みたいな会社は結構多いと思うんですね。ただ、おそらく現在の状態にまでなると、それをやってくるところもないと思います。それをやるぐらいなら我々に投資をしたほうがいいと思うので。

治山:石川さんはいかがですか?

石川康晴氏(以下、敬称略)人の習慣を変えるのがこれほど難しいものなのか、と。リセットできないんですよ。会員になれば絶対トクなんです。うちのビジネスモデルはすごく面白くて、月額5800円でいくらでも服を借りることができる。それで1ヶ月に最大24点借りた人もいます。24点のコートを5800円で借りることができるのに、今はほとんどの人が毎日同じコートで出勤しているわけですよ。絶対トクなのに、それがトクだとなかなか判断できないのです。

治山:それが習慣ということですか?

石川:習慣です。うちは新品をお貸ししています。レンタルは中古品を使っているという固定観念があるんですけれども、うちはつくっている会社だから新品を送っています。お客さまは驚いていますよ。「え!?札が付いている」って。それで札が付いていない状態で返却されたものを、僕たちは中古で売っている、と。商品代金の2割ぐらいをサブスクの月額でいただいて、返ってきたら今度はセカンダリーマーケットで5割回収していく。AさんとBさんで20%と50%をシェアしていただいて、私たちは70%を回収できているわけです。アパレルの平均値引率は4割だから、店舗で売るより2人のお客さんにシェアしていただいたほうが儲かります。だから、私たちにとってもお客さんにとってもいいことなんです。なんですが、人件費やインフラの費用が結構かかりますから、一定のところまではいかないと儲からない。その点で、会員数の伸びるスピードが想定よりは悪いということで「×」です。

治山:天沼さんはいかがですか?

天沼聰氏(以下、敬称略):私も同じです。文化を変えるというのは思った以上に難しい。実際に計算したり対面で説明を受けたりすると、「あ、いいね」となって使ってくださいます。でも、間接的に聞くだけだとなかなか。「最後の1歩が踏み出せない」という声は、私たちも座談会等で集まっていただいてお話をするなかでよく聞きます。今までの生活習慣にまったくなかったものだから、最後のひと押しが難しい。あと、もう1つは石川さんからもありました通り、メンテナンスを含めてコストがかかる点ですね。

ただ、私たちのビジネスは大きくなればなるほど「クローゼットが大きくなる」という概念なので、お客さまからするとシェアすればバリエーションは広がるし、価値は高まっていきます。サブスクが面白いなと思うのは、利用者が増えれば増えるほど利用者にとっての価値も高まり、皆のメリットが共存しやすくなる点でもあると思っています。

サブスクビジネスで気をつけるべき点とは?

治山:分かりました。では、私からは最後の質問です。これから起業したり自社のビジネスモデルを変えていこうとしたりしている方々に、御三方から「ここに気をつけるように」といったアドバイスが何かあれば。

児玉:「目的と手段が反対になっているエラーを見つける」というのが私の考え方です。たとえばブランドバッグというのは「所有しなければ意味がない」と、皆が言っていました。でも、冷静に考えたらラグジュアリーブランドのバッグは使うことが目的なんです。買うのは手段。だから、その手段を増やせばだいたいにおいて良いことが起きる、と。そんな風に、目的と手段が逆になっている常識を崩しにいく。アインシュタインは「常識とは18歳までに集めた偏見のコレクションである」と言いました。誰かが「常識だ」と言い出したら、そこを積極的に崩しにいくと、だいたいにおいて良いことが起きるのではないかなと思っています。目的と手段が反対になっている人は多いですから。

天沼:サブスク化の話に寄せてお答えすると、サブスクリプションが単に課金モデルの変更になってしまわないようにすることが一番大切だと思っています。特にサブスクリプションの本質的価値、提供したい価値は何なのかを考えたうえで、たとえばライフスタイルに関する話であれば、「どうすれば人の習慣や行動は変わるのか」といったことも常に考えていく。これは面白いと思うんですが、サブスクリプションのビジネスモデルは良い意味で十字架を背負うんですよね。「提供サービスを改善し続けます」という契約を結ぶのがサブスクリプションだと考えているので。ですから、単純な課金モデルの変更でなく、サービス改善をし続ける組織をつくっていくことも同時に考えていく必要があるのだと思っています。組織にはどうしても「癖」がついてしまうので。

これはウォルト・ディズニーの言葉ですが、彼は「ディズニーランドは永遠に完成しない。世界に想像力がある限り、成長し続けるだろう」と言っているんですね。世の中は移り変わります。習慣も変わります。スマホのような新しいテクノロジーが出てきたりして。そんな風にして習慣が変わるなかで、「自分たちの本質的価値は何か」と考えて、そのうえで送り届けるものをどう変えていくのかも考えていく。そんな風にして変わり続ける習慣を組織として持っておくことも大事だと思っています。

治山:では会場からも質問をいただきたいと思います。

Q1)サブスクによってファッション等の価格は下がっていると思いますが、マクロ的には消費者が浮いたお金を別のものに使うと物価が下がりません。今そこで実際に何が起きているのでしょうか?

児玉:我々もいろいろと調査をしていますが、我々のサービスを使うお客さまは余ったお金をほかのものに使っていらっしゃることが分かっています。貯金には廻っていません。また、我々のサービスが広がることによってブランドバッグを使う人も増えるので、我々に卸す量も間違いなく増えます。ですからお金が廻る量は増えていきます。

天沼:我々も座談会でお客さまにお話を聞いていますが、「ファッションにかけていたお金はどうなりましたか?」という質問には、8割以上の方がトータルでファッションに使う金額が増えたとおっしゃっていますね。私としては、今後はお客さまと情報との接点を増やすことが大事になると思っています。消費者の方々に細かい情報との接点を持っていただくと、それが「使ってみたい」「消費したい」という欲に広がっていくので。新しい情報との接点をつくることが大事だし、そこにサブスクリプションがつながるのだと考えています。

石川:私はファッションのインフレが起きる可能性があると思っています。オムニチャネルによって。今はECとリテールをつなげてオムニチャネルにしていますが、実はサブスクとリテールをつなげているオムニチャネルは世界的にもまだ事例がありません。でも、リアルの店舗と(ECやサブスクの)プラットフォームの両方を行き来するお客さまをつくると、エンゲージメント、いわゆる“ロイヤルカスタマー度”はすごく高まるんですね。客単価は、どちらかだけで買っている人の3倍にまで上がるというデータも出ています。実店舗とEC、あるいは実店舗とサブスクの両方を行き来する人の購入金額は、実店舗だけで買う人の3倍。我々はそこにオポチュニティがあると考えていますし、これからECとリアル、サブスクとリアルをつなげることで、ファッション業界をインフレのフェーズに持っていけるのではないかと思っています。

Q2)今注目している既存のサブスクとは?

天沼:個別に注目しているサブスクというと難しいですが、基本的にはB2CよりB2Bだと思っています。SaaS型のほうがリテンションは圧倒的に高い傾向にあるので。消費者の方々が判断するハードルは高いですし、やはり法人のアプリなのかなと思います。で、B2Cに限ると、おそらくどこも大きく変わらなのではないかと思います。たとえばスポーツジムは我々と単価が近いのでいろいろウォッチしていますが、世界で最もリテンションが高くて94~96%ぐらいで推移しています。ただ、それはSaaS型なら「もっと上にいかなければ」と言われる値だと思いますので。それほどB2BとB2Cでは差があるのだと思います。

石川:(サブスクになりやすいものとしては)ホームセンターに置いてあるものであれば、ほぼ。習慣化していますから。芳香剤もシャンプーもボディソープも減ったら買いますよね。また、その辺は減るペースもある程度決まっていて、3ヶ月から4ヶ月の過去データから平均値を出せますから。シャンプーは突然減らないですし。いきなり野球部に入って風呂に入る回数が増えたとかいったら別ですが(会場笑)。ですからホームセンターみたいなところはサブスクがあると私は思っています。

天沼:サブスクリプションの概念として、とにかく顧客との接点の量が大事になると思っています。コミュニケーションの量ですね。あとはデータ。「サブスクリプション=データ」と言ってもおかしくないほどなので。お客さまとの接点が増えれば増えるほどデータも増えるので、どのようにアジャストするかという部分でデータがマッチする領域がいいのかなと思います。

児玉:あと、我々はモノがどう使われたかを見ています。Amazonの本には昔も今も読まれていないものが10%あります。でも、本だから「どこまで読まれたか」というのが見えていない。一方、YouTubeはどこまで観られたかが分かっているので、10年前に見られなかった部分も今は最後まで完走するんですよね。同じように、我々はどのかばんがいつまで、どう使われたかを知っています。たとえば、貸し出される回数は多いけれどもすぐ返ってくるかばんというのは、期待値に対する実感が低い。一方、たまにしか貸し出されないけれどもなかなか返ってこないかばんは、期待値よりも実感が高い。そういうことが分かりますので。

Q3)サブスクだと「期日通り返せるのか」といったことが不安になるが、返すことが習慣化するような仕組みを考えているか?

児玉:ラクサスは返却期限がありません。ただ、返さないと次のものを借りることもできません。ですから魅力的なかばんが出てくると返したくなる、と。

石川:うちは60日借り続けるともらえる形にしています。返さなくていいんです。

天沼:うちも返却期限はなく、いつ返してもいいという形です。ただ、月額制なので持っていれば持っているほどお客さまにとっては損になります。ですから、今まで月額制サービスというと「寝る子は起こさない」というのが当たり前だったと思いますが、我々が本質的価値と捉えているのは「新しいものに出会ってもらうこと」。ですから、我々はどんどん起こしにいくということで、返却がなければどんどん連絡をさせていただいています。「返してください」と言いにいきますので、ご安心ください(笑)。

治山:では、最後のまとめということで一言ずつ何かコメントをいただければと思います。

児玉:ラクサスをはじめて5年目に入りましたが、今は本当に大きな手応えを感じています。これからも日本および世界でもっと拡大していきたいので、ぜひ応援してください。あと、今はとにかく人が足りません。全方向で人材が足りません。というわけで、すべてオープンにしていますので、ぜひ転職を促していただけたら、と(会場笑)。

石川:私はファッションのサブスクを自動車産業と同じようなエコシステムにしたいと思っています。新車のディーラーがあって、中古のディーラーがあって、さらにはレンタルもリースもあって、メンテナンスもあるというエコシステムに。メンテナンスはクリーニングに置き換えられますね。そこでお客さまの使用状況をアーカイブしていきたい。また、今アパレルの中古市場は2%台しかありませんが、欧米ではすでに6%に達しています。ですからまだ伸びるということで、そちらもやっていきたい。また、さらに言えば20年変わっていない「新品を売る」ということも、市場はシュリンクしていきますがやっていきたいと思っています。とにかく、すべてのサービスを、それぞれのユーザーが多様性を持って使いはじめる時代が来るので、それらに対応するビジネスモデルをストライプインターナショナルとしてすべてつくって持っておきたいというのが、私たちの考え方になります。

天沼:データの可能性を私は強く感じています。利用状況のデータも共有したりしながら、お客さまにとってより良いものをつくっていくことがサブスクの本質だと思っているので。ですから、「いかにしてデータを活用するか」ということと、そうしたデータ活用を考えるうえで「本質的な目的は何なのか」ということを、コアとして考え続けていきたいと思っています。

データの活用は人類にとっての革命の1つであると、個人的には信じています。第一次産業革命以降は人の移動時間が圧倒的に短縮され、移動時間の概念が変わりました。第二次産業革命以降は電気によって生産時間が、第三次産業革命では集計時間が、圧倒的に短縮されました。では、次は何の時間が変わるかと言えば、データによって人がモノを検索したり探したりする時間が圧倒的に短縮されるのではないかなと考えています。そこで、事業者として皆でデータを共有しながら習慣化できるような文化をつくっていきたい。それで私はサブスクリプションに大きな未来を感じています。

治山:今日は皆さまに普段言えないような本音を語っていただきました。今回のお話を通して会場の皆さまがそれぞれ何かお土産を持ち帰ることができていたら本セッションは大成功だと思います。本日はありがとうございました(会場拍手)。

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