Amazon、アリババが参入してきても打ち勝てる!サブスクビジネス最前線

本記事は、G1中国・四国2019「急拡大するサブスクの未来」の内容を書き起こしたものです。(全2回 前編)

治山正史氏(以下、敬称略):今日は本音でビシバシ質問していこうと思います。今、サブスクというのは流行語大賞にもノミネートされたりして連日メディアを賑わしていますが、そのなかでも先日、「衣料品サブスク、3ヶ月は月39円」という、ぶっ飛んだ新聞記事が出ました。ストライプインターナショナルさんが大変思い切った企画をスタートさせたわけですが、まずはこちらの意図のような部分から伺いたいと思っています。

サブスク「魔の3ヶ月」

石川康晴氏(以下、敬称略):サブスクというのは1ヶ月目で50%の離反者が出ます。1ヶ月だけ無料会員になって、すぐ飽きてしまうんですね。2ヶ月目になるとそれが7割にまで増えます。そして3ヶ月目にまた2割離れて、最終的には9割離反します。せっかく獲得したお客さまが3ヶ月間で9割いなくなってしまう。魔の3ヶ月です。でも、4ヶ月目に入った方は離反しなくなります。3ヶ月の習熟度が付くと、本当に良いサービスだから続けてくれるということです。

児玉昇司氏(以下、敬称略):コアバリューを理解してくれるということですよね。

石川:そういうことです。ただ、たとえば返却でヤマト運輸を呼ぶとか、いろいろとやらなくてはいけないこともあって、どこかで離反してしまう。でも3ヶ月使った人は離反しません。ですから、とにかく3ヶ月使ってもらうために、「サ(3)ブスク(9)」で、かつアプリを100万ダウンロードしていただいて「サンキュー(39)」ということで39円に。「サブスクリプション」を短縮した「サブスク」で流行語大賞を獲りたくて、3年前から「サブスク」と言い続けていたんです。「ファッションもサブスクへ」と言ったりして。でも、最初はぜんぜんウケなかった(会場笑)。それで、「そろそろサブスクという言葉を使うのは止めようかな」と思っていたら、今年流行語大賞にノミネートされました。

治山:なるほど。もう1つ、先日は「ワールド、サブスク新興を43億円で買収」というニュースもありました。

児玉:本件についてはエグジットと言われていますが、エグジットではないんです。私はまだ40%弱の株を持っていますので。今までの株主の方々の持ち分をワールドさんが買い取ってくれたという形です。いずれにせよ、ポイントとしては100億円を調達したというところにフォーカスしていただきたいと思っています。

まず、PVが最終的にはコンバージョンになりますよね。で、コンバージョン×LTV(ライフタイムバリュー)が、CPA(Cost Per Action)で見て広告費を上回っていれば勝ち。あとはワールドさんがユーザーを抱えていらしたので。で、「CPAが広告費を上回れば」と言いましたが、私はCPAをゼロにしたかったので、誘客していただきたかったんです。CPAがゼロになれば利益が最大化するので、それで来年から海外にどんどん展開していこう、と。

治山:なるほど。一方で、天沼さんのところも最近はアトレやエイブル等、いろいろなところと組んでスタイリングを体験してもらうような取り組みをしています。また、botを使ったスタイリングにも取り組んでいると聞きましたが?

天沼聰氏(以下、敬称略):スタイリングは基本的にほぼ人間が行っていますが、botと戦わせてはいます。社内でアルゴリズムをつくっていますので。ただ、サブスクリプションによって最終的にどのような価値をお客さまに提供していくのかと考えると、「やはりスタイリング品質の高いほうを選んだほうがいい」と。その点では、まだ人間が勝つんですね。サイズについても、スタイリストさんが合わせていくほうがまだまだ勝ちます。ですから今はスタイリストさんが選定しやすいようシステムでサポートするということを全力でやっていますが、完全にbotというのは1回も出していません。

治山:分かりました。今はサブスクというものの定義がすごく曖昧で、言葉が先行しているような部分もあると感じます。そこで、まずは実業でサブスクをやっていらっしゃる皆さまに「サブスクとは何ぞや」という話から伺ってみたいと思います。

サブスクとは「いつでも使える権利」

児玉:基本的に、サブスクライブというのは何かをするための権利を得ることだと思っています。日本では月額制といった言葉で表現されていますが、たとえば「10万円が高過ぎるから月々1万円で10ヶ月払う形にする」ということをサブスクライブと呼ぶのは、少し違うのかなと思っています。結局は、「いつでも使えます」という状態にあるけれども、「(使っても)使わなくてもいいよ」という意味なんですよね。

石川:いつでも使える権利というのが基本的な考えですよね。多くのお客さまはそれが月額課金制であると思い込んでいますけれども、好きなモノやサービスをいつでも使える権利というのが、おそらく一番正しい整理なのかなと思います。ただ、そこにシェアリングもあればそうでないものもあるから、すべてシェアリングであると、くるっとまとめるのも少し違う。児玉さんがおっしゃる通りで、分割的な発想でまとめるのも大雑把過ぎると感じます。

天沼:お二人がおっしゃる通りで、課金していただく対象がすごく大事になると思っています。あと、私としてはモノに対する直接的な課金からサービスに対する課金へ変わることがサブスク化の概念だと考えています。ですから、利用してもらう中身も時代によって変わるというのがサブスクリプションの特徴の1つなのかなと感じます。たとえば我々が機能を追加するのも、本質的には届ける価値をアップデートすること。今までのモノ販売であれば販売後にモノ自体がアップデートされることはなかなかなかったと思いますし、その意味でも何に課金するかが大事なのだと考えています。単純な課金体系の変更という話だと、単に先払いしているだけになってしまうし、それはサブスクリプションとは言わないのかな、と。ただし、サブスクリプションがルールとして良いとか悪いとかいう話でもないので。

児玉:サブスクリプションを手掛けるうえで大事なのは、利用の継続が消極的なものなのか、あるいは積極的なものなのかを分けていくことだと思っています。たとえば「近所のスーパーやコンビニによく行っていたけれども、もっと自宅近くに新しいコンビニができたからそちらへ行くようになった」というのは、おそらく消極的なサブスクライバーだったんですよね。そうでなく、積極的に利用し続けてもらわないといけない。そうでないと、特にシェアリングするモノが一緒ならどんどんコンペティターが出てくるので。ですから、積極的なサブスクライバーをどれほど増やすかが今後は大事になると思っています。

治山:さまざまなビジネスモデルのなかで皆さまがサブスクの分野に打って出て行かれたのはなぜですか?「こういうことがやりたい」と考えたからこそ、誰もやっていないゾーンに入っていったと思うのですが。

なぜサブスク分野に進出したのか?

天沼:我々はすごくシンプルです。私は仲間2人と起業して5年と少し経ちましたが、創業当時、「何をやろうか」と考えていた段階で「ライフスタイルを豊かにするということがしたいね」と、3人で話をしていました。ただ、それって曖昧じゃないですか。当初は何がライフスタイルを豊かにするのか、まったく分からなかった。それで考えてみた結果、「そのサービスを使うことでお客さま1人ひとりが、何かワクワクする体験を自分たちの生活に取り込むことができたら、きっとライフスタイル自体がベースアップするのではないか」と。そんな考えが出発点になって、「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」というビジョンでサービスをスタートさせようと考えました。

ただ、我々は3人ともファッションの世界に携わってきた人間ではありません。私もITコンサルから楽天というキャリアの人間ですし。ただ、「ワクワクする体験が生活のなかで日常的に起きることって、なんだろう」と考えてみると、ファッションに疎い我々3人ですら新しい服を着るとワクワクするわけですね。ガラスの前で映っている自分を見て、ちょっとニヤッとするかもしれない。ファッションであれば、そんな瞬間ごとのワクワクを伝えることができるのではないかと思い、新しいお洋服との出会いを日常につくっていこうと考えたのが現在の事業の出発点です。

ですから、サブスクリプション、シェアリング、レンタルといったものはすべて手段だと思っています。ワクワクする体験を日常にずっとつくっていきたいというのが我々の目的で、そう思ったとき、月額制が最もフィットすると考えました。とにかく、私たちがつくり、提供していきたい価値は何かというのがスタートでしたね。

石川:私たちはアパレルを30ブランドほどやっていますが、年代を超えてさまざまな人たちと定期的に座談会を設けて、人任せにせず私たち自身でいろいろと話を聞いています。最近、そこでいくつか見えてきた課題がありました。まず、いつも部活のユニフォームや制服を着ている高校3年生の子たちは、大学へ進むとき、「あんなオシャレな学校に通うのは不安。服のセンスがないし」なんて思うんです。そういうとき、サブスクで丸ごと借りることができたら課題解決になると思ったのがまず1つ。

それともう1つ。教員免許や看護師の国家資格取得を目指している子は、たとえば大学3年生で実習がはじまります。彼らはそれまで、1~2年生の頃はバイトをしまくって月10万、実家からも月10万円をもらって、服を買いまくっていた。ところが3年生になった瞬間、研修・実習という名の下でタダ働きのフェーズに入り、半年間、お給料がゼロになってしまう。それで「服が好きなのに、こんなに我慢しなきゃいけないなんて、本当に悲しいです」なんていう声もありました。だから、「じゃあ、お母さんにもらっている月10万円のなかで、いくらぐらいなら借り放題のサービスに出せる?」と聞いたら、「5000~6000円ぐらいです」と。それが1番大きなきっかけになりました。

そこで、次は少しレイヤーを変えて30代前半ぐらいの、それこそ小さいお子さんのいるヤングファミリーの座談会に参加させてもらいました。すると、こちらは「結婚するまではユナイテッドアローズもビームスも結構買っていたけど今は旦那さんの所得が…」と。で、「マンションも車も買っちゃったし、子どもの習い事にもいろいろお金がかかるし」ということで、GUやユニクロばかりになったというフェーズの人もいるわけです。そういう方々に、「ルミネやパルコにあるような商品をサブスクで着ることができるとしたらどうですか?」と聞いてみたら、「それで自分の感性がキープできるなら月額制を利用したいです」という声もありました。

そんな風に、とにかくいろいろなフェーズにそれぞれ課題がある。地方局のアナウンサーは毎日違う服で出演しないといけませんが、お給料、安いんですよ。もっと言うと、美容室等でまだシャンプーしかやらせてもらえない新人の方だって、オシャレはしていかなければいけないじゃないですか。そこで、月額5000~6000円前後で毎日違うスカートやワンピースを着ることができるサービスを提供したら、彼女たちの不満を解決できる。いろいろなレイヤーにあるそうした不満をまとめて、サブスクリプションモデルのファッション、つまりファッションレンタルにしたら喜んでもらえるなと思ってスタートしたというのが経緯になります。

児玉:サブスクに向いているかどうかというのは、習慣化に向いているかどうかだと思っています。そう考えるとファッションは習慣に向いています。では、向いていないのは何か。たとえば引っ越し。まあまあ、やらないじゃないですか。ですから、やる以上は習慣化させることを考えないといけないし、「これは絶対習慣にならないよね」というのはサブスクリプションモデルとして成立しない、と。自宅の電球交換ですとか。でも、本会場のようにたくさんの電球があるところなら、なりますよね。どれかが切れるから、一括で契約してしまえば。

サブスクは各分野で上位1〜2社しか残らない?

治山:では、ここで少し趣向を変えて、御三方には○×のパネルを渡したうえで質問をしてみたいと思います。まずは、「サブスクは、バッグならバッグの分野、時計なら時計の分野という風に、各分野で上位1社か2社しか残らない」。

天沼=×、石川=×、児玉=×

治山:え!?そうなんですか、意外ですね。

天沼:分野の絞りかたにもよると思いますが、先ほどお話しした通り、サブスクリプションというのは結局のところ体験価値だと思うんです。何かを利用する権利を得ること。ですから、たとえばファッションも壇上だけで3社ありますが、お客さまが3社に求める価値はそれぞれまったく違うと思いますし、そのぶん各社が提供する価値の本質も少しずつ違ってくると思うんですね。ラグジュアリーブランド自体が1~2社しか残っていないかというと、そうではないですし、それと同じような話なのかなと、個人的には考えています。

治山:イタリア料理でもフランス料理でもいろいろなお店があるという感じですかね。

石川:ちなみに、今会場でレンタルファッションの服を着ている方はいらっしゃいますか?(会場挙手なし)私は今「メチャカリ」のコートを着ています。私たちが目指しているのはシェア1%の市場なんです。7兆円におよぶアパレルのなかで700億のレンタルファッション市場があって、そのなかで私たちは200億を取りにいこうと考えています。とにかく、100人に1人が借りたものを着ている社会をつくろうと思っているんですね。

ただ、1%というのは結構大変な数字ですよ。キャッシュレスですら100億ばらまいてやっと1%になるぐらいなわけで、習慣を変えるのは大変。でも、私たちは人類の習慣を変えようとしているんです。実際、今も会場に借りたものを着ている方はいないわけですよね。そんななかで習慣を変えるということであれば、1社2社に絞っていてはダメ。いろいろなアパレル企業がサブスクをやればいいのだと思います。世の中でサブスクが普通になれば、もっとスケールすると思いますし。今はまだまだ。0.1%ですよ。

児玉:今はどんどん新しいものが出てきています。お店に行かなくてもスーツを買えたりするようになっていますから、むしろネットでスタートして、そのあと実店舗を展開するという逆転現象もある。ただ、それをたとえばスーツの老舗の方々ができるかというと、できるけれども社内で戦略的に矛盾が起きてしまう。

だから、新規事業としてやらせようとしても、たぶんそこにエースは行かせない。事業部長も出さないと思うんですね。大手の新規事業が失敗することが多いのはそのせいだと考えています。そういうことがあるのでなかなか難しいというか、(既存のところは)転換期に負けてしまう。ただ、今までは10年に1回ぐらいの頻度で起きていたそうした転換サイクルも、これからは2年に1回とか、どんどん短くなっていくと思います。

Amazon、アリババなどが参入してきても打ち勝てるのか?

治山:では次の質問。今はAmazonやアリババ、国内であればメルカリやヤフーといったITのプレイヤーがいろいろな分野に侵食して、すべて食っていくような動きもあると思っています。これに対して、「彼らが自分たちの分野に参入してきても、自社は勝てる」。

天沼=○、石川=○、児玉=○

治山:おお!さすがです(会場拍手)。

石川:私たちは約25年間モノをつくってきましたから。モノづくりのバックグラウンドを持っていて、数十ブランド持っている会社は、原価構造が違います。粗利の観点で、IT企業のいわゆる手数料ビジネスと私たちのビジネスでは利幅が大きく違うので、長期戦になれば必ず勝てると思っています。

治山:モノをつくるノウハウを持っているから勝てる、と。

石川:少し話は変わるかもしれませんが、サブスクで勝てる秘訣は2つだと思っています。1つは耐久性があるもの。その意味では服も向いていない。自転車も耐久性があるかと思ったら意外となかったので、今は自転車のサブスクも崩れかけていますよね。ただ、(児玉氏を指して)こちらは耐久性があるんです。ルイ・ヴィトンのかばん、長もちしますよ。

児玉:しかも1回使ったらフルメンテナンスします。1回使ったらフルメンテナンスするというものの使い方をしているのは、人類史上私たちだけです(会場笑)。

石川:だから耐久性が1つのキーワード。で、もう1つは私たちの話になりますが、自分たちでつくること。粗利が大きいということです。このどちらかですから、(天沼氏を見て)そのどちらでもないプラットフォームで「ウチも勝てる」という説明はお願いします。

天沼:たしかに原価と耐久性は圧倒的に重要だと思っています。で、それ以外に我々がどこに力を入れているかというと、先ほどお話ししたスタイリング(品質)のところと、あとは倉庫とメンテナンスの部分ですね。倉庫会社さんやクリーニング事業者さんと業務提携をしていますし、私もよくクリーニング工場に行ってストップウォッチ片手に生産性を測ったりしています。しみ抜き機の取り扱いはだいぶうまくなりました(笑)。実際に見に行けばデータが出てくる現場を知ることができますので。Amazonさんやヤフーさんがそこまで細かくやっていくのはなかなか難しいのではないかなと思います。一言で表現すると、面倒くさいので。

治山:すごく面白いです。石川さんのところは自分たちが一番強いものづくりのところで勝っていこう、と。一方、天沼さんのところは、それ以外で大手がなかなか面倒くさがってやらないことや、サービス品質のところで勝っていこうということですね。(後編に続く)

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