10年後の交通・移動手段はどうなっている?「MaaS」による変革のインパクト

 

トヨタが新しくつくる実証実験用の「街」

先日、トヨタ自動車が新たな「街」を作ると発表しました。同社リリースによれば、この街は「Woven City」と名付けられ、初期にはトヨタの従業員やプロジェクトの関係者など2000名程度の住民が実際に暮らすという環境のもと、「自動運転、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能(AI)技術などを導入・検証できる実証都市」とのこと。静岡県裾野市の工場跡地に、2021年から着工予定だそうです。

参考:トヨタ、「コネクティッド・シティ」プロジェクトをCESで発表|TOYOTAニュースリリース

新たなテクノロジーが続々と実用化される将来を見据えた、スケールの大きな投資の話題に大いに関心が集まっています。

MaaSで可能になる「トータルとしての交通サービス」

本コラムでは、上記リリースにも出てきた「モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)」についてもう少し掘り下げてみましょう。

MaaSとは、移動したいときに取り得るさまざまな交通手段をひっくるめて「トータルとしての交通サービス」として利用者に提供することを指します。

たとえば、東京都内に住む人が北海道のニセコにスキーに行きたいと考えたとき、自宅からスキー場まで、クルマ、電車、飛行機、バス…という具合に複数の交通手段を選択します。

従来は各移動手段が別々にサービス提供されてきたわけですが、これらを全体としていかに便利に、効率的に利用できるようにするか競う動きが起こってきました。

たとえば、幾つかの観光地では、エリア内の交通手段について一元的に検索、予約、料金支払いができるアプリが既にリリースされています。フィンランドのヘルシンキで導入されているWhimというサービスはさらに進んで、上記のようなワンストップで検索から決済までできる機能のアプリに加え、定額制で複数の交通手段を無制限で乗れたりという仕組みも実装されています。

SaaSのSoftwareをMaasのMobilityに置き換えてイメージする

これに加えて、MaaSという言葉はSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)を念頭に置いて生まれたことを考えると、SaaSから類推して、より広範なサービス構想も視野に入ってきます。

SaaSとは、ユーザーがインターネット経由で使いたいソフトウェアを利用するサービスで、マイクロソフトの「Office365」やグーグルの「Gmail」などが代表例です。それまではユーザーがソフトウェアを利用したいときは、パッケージを買い自らのパソコンにインストールして使っていましたが、SaaSになることで、インターネットにアクセスできる環境であればパソコンでもスマホでも利用でき、複数人でデータを共有したり編集したりできるようにもなったのです。

このSaaSのSoftwareのところを、Mobility(移動手段)に置き換えてみると、移動手段を個人が所有して利用するよりも、利用したいときにしたい分だけサービスとして使えるというようにイメージが広がります。

実際、Uberに代表されるタクシー配車サービス、タイムズなどのカーシェアリング、akippaなどの駐車場シェアリングなども、MaaS関連サービスとして注目されています。

ソフトウェアをCD-ROMの形で買ってパソコンにインストールしていた昔のことを今となっては想像できないように、この先MaaSが普及していくと、自家用車やバイクを買って自宅の傍の車庫に停めておくという習慣はガラッと変わってしまうかもしれません。自動車の需要に大きな影響を与えるのは間違いなく、トヨタをはじめとするメーカーが死活問題ととらえて戦略的投資を行うのもうなずける話です。

自動車メーカーだけではありません。鉄道会社やバス会社といった公共交通の事業者、地域のデベロッパー、電気・ガス・通信といったインフラ運営企業も、MaaSのプラットフォームを担うという大きなビジネスチャンスを目の前にしています。今後のMaaSの動向から目が離せませんね。

【参考図書】
テクノベートMBA 基本キーワード70
グロービス、嶋田 毅 (著)、PHP研究所
1650円 

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