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米国よりヒドい? 欧州経済の先行きは

投稿日:2009/05/19更新日:2019/04/09

EU(欧州連合)の加盟国は現在27カ国、そして通貨ユーロを使っているいわゆるユーロ圏は16カ国となっている(2009年1月にスロバキアが加わった)。人口はEUが約5億、ユーロ圏が約3億2500万に達するから、どちらを取っても米国よりも大きい。その経済がどう動くかが、米経済の回復と同様に世界経済へ大きな影響を与える。日本の存在感が薄れているのとは対照的に、欧州は存在感を年ごとに強めている。

罪人より善人の方がうまくやっている

世界経済に若干薄日が差しているという感触が強まっていることはここでも以前に書いたが、それがどこまで本物かはまだ見極めがつかない。しかし、先週15日にEUROSTATというEUの統計機関が発表したGDP成長率は、楽観論者に冷水を浴びせるような数字だった。

これによると、ユーロ圏もEU27カ国全体でも2009年第1四半期は前期比マイナス2.5%(年率換算でマイナス9.6%)という予想をはるかに上回る大幅なマイナスになったからである。日本はもっと悪いが、今回の世界同時不況の震源地である米国はマイナス1.6%、それに欧州でも住宅バブルに踊った英国やスペインはそれぞれマイナス1.9%とマイナス1.8%だ。ラトビアやリトアニア、スロバキアがふた桁前後のマイナスとなっているが、それよりも大きなショックを与えたのが欧州最大の経済規模をもつドイツである。前期はマイナス3.8%。年率換算でマイナス14.4%という衝撃的な数字だ。

ドイツの落ち込みが主要国の中で最も大きいのは、輸出激減を国内需要で賄い切れないというどこかの国と同じ構造になっているからである。しかも日本もドイツも今回はバブルの外側にいた。英エコノミスト誌が面白い表現をしている。「少なくともGDPでみれば、欧州では一部の罪人のほうが善人よりもうまくやっている」

同誌によれば、欧州大陸諸国の危機感は、米国や英国と比べてそれほどでもないという。「欧州の硬直的な労働市場は、好況時には労働者の増加を妨げてきたが、不況時には急激にレイオフが進むのをやはり妨げている」というのである。例えばドイツでは失業率はそれほど変わっていない。

そうなると、明るい兆しも見えているとはいえ、そう簡単に景気はよくならない、と同誌は警告している。「企業活動の指数は記録的な低さからやや持ち上がりつつある。しかしそれはGDPの落ち込みが緩やかになるということであって、反転するということではない。目に見えて回復するのは当分先の話だ。企業は人員を抱えたまま損失を出し続けることはできない。ということはドイツなどで失業率はこれから上昇し、それは2010年まで続くだろう。欧州中央銀行(ECB)は長い景気後退が続くことを覚悟し、金融機関に対して最大1年間、1%で無制限に融資する準備を整えた。そしてその期限は延長される可能性もある」

欧州が恐れているのはデフレ

だいたいエコノミスト誌は慎重派なのだが、この世界不況に関しては「過度に楽観的になるべきではない」と警告している。

それに対して、以前にここで紹介したSTRATFORという地政学のシンクタンクでは、同じEUROSTATがユーロ圏の4月のインフレ率が3月と同じ0.6%だったことを受けて、「これは明るいニュース」と分析している(ちなみにEU全体のインフレ率は1.2%と3月より0.1ポイント下がった)。

現在、欧州を始め、世界各国が最も警戒しているのはデフレである。日本がデフレに落ち込んで「失われた10年」を体験したのと同じ過ちを繰り返したくない。デフレになるとそこから脱却するのは非常に難しい。

消費者は明日安くなることが予想できれば、物を買わない。企業は同じ量の製品を売っても物価が下がっていれば売り上げは減る。売り上げが減っても、人件費などのコストは簡単には減らないから利益が減る。もし借金を抱えていればその負担は重くなる(だから日本の企業は懸命に借金を減らし、それがカネ余りをもたらした)。

しかしまだデフレになる可能性は残っていると思う。先進国の購買力がそう簡単には戻らないとなれば、企業は在庫減らしのために製品を安くても売ろうとする。そこに失業率が高くなってくれば購買力はますます減るという負のスパイラルに落ち込みかねないからである。

さらに前門の虎後門の狼ではないが、その先にはインフレが待ち受けていると警告する向きもいる。世界各国が金利を引き下げ、カネをじゃぶじゃぶ注ぎ込んでいるからである。そのカネがハイパーインフレを引き起こさないという保証はどこにもないのである。

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