リクルートキャリアの「内定辞退率」予測から考える、プロファイリングの近未来

プロファイリング

先日、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、サイト内の行動履歴から割り出した就活生の「内定辞退率」予測データを採用側の企業に販売していたというニュースが話題となりました。報道や同社のリリースによれば、当該企業の前年度の応募学生のリクナビ上の行動ログなどを解析し、それと今年度の応募学生の行動とを照らし合わせて「採用選考のプロセスが途絶えてしまう可能性」を予測して企業に提示していたとのことです。

法的な問題点は後述するとして、ネットの閲覧履歴やアンケートへの回答内容、さらにリアルな行動履歴のデータなどを組み合わせ、個人の能力や傾向を推察することは、既にかなりの精度で実用化されています。この「行動データから人物像を割り出すこと」を「プロファイリング」と言います。

典型的な例は、ネットショップでのレコメンデーション(おすすめ)機能や、SNSでまだつながっていない「友達」の候補を表示する機能です。データベースに蓄積された膨大なデータとその個人特有の情報とを照らし合わせ、ネットに直接入力したことのない情報についても、「こういう傾向の人は、こういう商品を好む」「こういう人と知り合いの可能性が高い」といった具合に予測できてしまうのです。

近年では、行動データや質問への回答をもとに個人や企業の信用度を点数化(スコアリング)するサービスも続々と生まれています。中でも中国でアリババグループが展開する「芝麻信用」は有名で、個人向け融資を受けられる判断をはじめ、シェアサイクルなど本来デポジットが必要なサービスをデポジット免除で受けられるなど、生活のさまざまな場面で使えるスコアを提供しています。日本でも、ヤフー、LINE、NTTドコモなどがスコアリングサービスを始めました。

点数化に当たっては、どんなデータがどのように点につながるのかという評価のアルゴリズムが必要ですが、ここに人工知能(AI)を用いて精度を高めていることから、こうした動きは「AIスコアリング」とも呼ばれます。潜在的には、金融サービスや特典ポイントの付与に留まらず、入試などの適性診断や相性診断など多くのシーンでビジネスチャンスがあるでしょう。

プロファイリングやAIスコアリングの問題点とは?

さて、こうしたサービスが今後急速に拡大するかというと、現状では多岐にわたる問題があります。例えば、プロファイリング材料としての個人データ取得はどこまで、またどのような手続きなら許されるかという点。上記リクナビの事例でも、データの活用に関する同意の不備が論点となりました。昨年EUで施行された「一般データ保護規則(GDPR)」は、同意の取得条件が厳格で、かつ個人からの同意の撤回やデータ削除の請求権を認めるなど、データを取られる側の個人の保護を強く打ち出しています。

また、たとえしかるべき手続きを踏んでデータを取得したとしても、プロファイルした結果をどこまで決定的な判断として使ってよいかという問題もあります。「過去1年以内に接触事故を起こした経験があることから、次の1年間の自動車保険の保険料は高くなる」という判断は仕方ないと受け入れられても、たとえば「過去1ヵ月以内に別業種の説明会ページの閲覧時間が長いことなどから、当社が内定を出しても最終的には入社しない可能性が高い」(注:これは今回のリクナビのアルゴリズムを指すものではなく、あくまでも例示です)となると納得しがたい人も出てくるでしょう。

特にAIによる判定が進化すると、インプットされたデータとアウトプットされた判定結果との理由付けが人間には分かりにくくなります。先の例で、「他業種情報の閲覧時間が長いと当社への忠誠度は低い」くらいならば理由付けの見当はつけられますが、仮に「エントリーのエッセイの中で外来語の使用率が高いと忠誠度が低い」といった判定をAIが出してきたらどうするか、もし就活生から判定理由の開示要求が来たとき説明できるのかという問題も出てきます。

このように個人情報保護の観点から一定の線引きは必要ですが、プロファイリングやAIスコアリングの潜在的な活用場面はまだまだ大きいでしょう。「どこまでならセーフか」を試すような新サービスが、当面は続々と現れることが見込まれます。

 

【参考図書】
『テクノベートMBA 基本キーワード70』
グロービス、嶋田 毅 (著)、PHP研究所
1620円

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